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翌日、ポロックケースが貰えるかはわからないが行ってみる価値はあるとカイナシティのコンテスト会場に向かっていれば、会場の前にテレビのロケでもやっているのか、人の群れの中心にアイドルのような可愛い女の子が楽しそうに喋っていた。

なんだなんだと少し離れたところから様子を伺っていれば、不意にアイドルの子と目が合う。
その瞬間、彼女の目は輝き、一直線に私のもとまで走ってきた。流石に一歩引いた。

走ってきた彼女はその勢いのまま私の両手をがしりと掴み、コンテストに興味はあるか尋ねてきた。

「ねえ貴方!ポケモンコンテストに興味ない!?あ、もう出場してる側!?」

「いや、出場はまだ…」

そこまで考えて、あることを思いつく。
彼女にポロックケースを貰うことは出来ないだろうか。

「…実は、興味はあるんですけど、ポロックケースも無いし、ポケモンの魅力を上げてないままコンテストに出場なんてできなくて…」

「そうだったのね!」

良いことを思いついたもんだと彼女に伝えれば、それはもう嬉しそうに新しいポロックケースとコンテストパスを渡してくれた。
あ、いや、別にコンテストパスはいらない……あ、なんでもないです。

「ポロックケースくらいあげるわ!あ、あとこれ、コンテストパス!これが無いとコンテストに出場できないから!」

「は、はあ…。あの、何で私に?」

恐らく、彼女たちは新しくトレーナーをコンテストに出場させようとスカウトするロケに来ていたのであろう。
そして、実際にスカウトする人を探していた時に私と目が合ってそのまま…というところだろうか。

彼女に何故私なのか尋ねれば、「ビビッときた!」という、何とも気の抜けた答えが返ってきた。

「貴方なら絶対に、頑張れば上の方まで登り詰めることができるわ!」

「あ、ありがとうございます…」

「あ、私、ポケモンコーディネーター兼アイドルをやってるカトレアっていうの!よろしくね!」

終始人懐っこい笑顔で話す彼女に、私の肩の力も抜け、笑顔を返す。

「私はエリシアです。よろしくお願いします」

「敬語じゃなくていいのにー。……あ、忘れてた。えっと…エリシアちゃん、どこ出身?」

「カナズミシティです」

後ろのテレビ局のスタッフから指示されたのか、私の答えに頷いた彼女は、後ろで待機しているカメラに向かって話し出す。

「今日コンテストの道へ招待したのは、カナズミシティ出身のエリシアちゃんでした!彼女にはビビッときたので、ぜひコンテストで戦いたいですね!以上、コンテストへご招待!のコーナーでした!」

最後にばいばーい、とカメラに向かって手を振り、暫くしてスタッフの1人がOKの指示を出したことにより撮影は終わる。

彼女、もといカトレアちゃんは私に向き直ると、紙に書いた番号を渡してくれた。

「これ、私のポケナビの番号。何かコンテストで悩んだりしたら、いつでも連絡ちょうだい」

何かなくても連絡していいとの彼女の言葉に嬉しくなったが、同時に申し訳なくなる。

「ごめんなさい。私、ポケナビ持ってなくて…」

ていうかポケナビ発売されてたの?
やっぱりあれかな、ダイゴさんが旅に出てムクゲ社長が心配だったからポケナビ開発したのかな。

私の申し出にショックを受けたようだったが、無理矢理番号を受け取らされた。

「それなら、ポケナビ買ってからでいいから連絡ちょうだい。待ってるわ!」

じゃあね!と言うだけ言ってスタッフ達が乗ったロケバスに乗り込んだ彼女は、そのまま去っていった。

その後、一直線にポケモンセンターに行って備え付けのテレビを見ていれば、ニュースでデボン・コーポレーションが新しい通信機器、ポケナビを販売したとの情報が流れる。
一般の人向けに電話やメール、テレビ機能なとがついており、トレーナー向けにはそれにプラスしてポケモン図鑑の機能がついていた。

それを見てテレビの前からテレビ電話の椅子に移動し、カナズミシティの両親へと電話をかけた。

「あ、お父さん、久しぶり。実はお願いがあって…」

私のお願いに、二つ返事で頷いた父は、今から買いに行って送ってくれるらしい。
電話に出たの、娘に甘い父親で良かったー。



* * *



「エリシアさんだね。ご両親からのお荷物だよ」

「ありがとうございます!」

フレンドリィショップで配達員さんから荷物を受け取り、ポケモンセンターで借りている部屋へ戻る。

父親から、私のいる場所がわからなければ配達員さんも配達に行けないと言われたため、2〜3日カイナシティに留まり、ロコンたちのレベル上げを行なっていたのだ。
ついでにヒンバスのうつくしさを上げるためにオレンのみやカゴのみを採取したり土に埋めて育てたりしていた。

そして今日、フレンドリィショップに行けば配達員さんがいて、無事にポケナビを受け取ることができたというわけだ。

部屋で段ボールからポケナビを取り出し、両親のポケナビの番号はわからないからと、先日番号をもらったカトレアちゃんに連絡してみることに。

数コールしたところで電話がつながり、電話の向こうから彼女の声がする。

「カトレアです!」

「あの、先日カイナシティでコンテストに招待してもらった、カナズミシティ出身のエリシアです」

お久しぶりですと言葉を続ければ、彼女は嬉しそうに声を上げた。

「え、もうポケナビ手に入れたの!?早くない!?」

「両親に言って、送ってもらっちゃいました」

「金持ちか!!それで、手に入れたから電話してきてくれたのね」

ありがとう!と素直にお礼を言ってくれる彼女に顔が緩み、そうだと相談を持ちかける。

「私、あるポケモンを進化させたくて、青いポロックが大量に必要なの。何か効率良い方法ないかな」

その説明だけで彼女はポケモンに心当たりが出たらしく、ポケモンの名前を当てられた。

「もしかしてヒンバス?ゲットしたんだ!」

進化したら綺麗だよねー!と、104番道路で出会ったおじいさんとは違う反応に安心する。

「うん。104番道路の近くでポケモンたちにいじめられてて、一緒に連れて来たの。ヒンバスと一緒に戦いたいし、コンテストにも出してあげたいから」

「うんうん!良いと思う!青いポロックだよね。きのみブレンダーでオレンのみやカゴのみの、渋い味のきのみを多く入れたら、青いポロックが出来上がるよ!」

どうせだったら直接教えたいからと、カイナシティのコンテスト会場で彼女と待ち合わせの約束を交わした。

「きのみブレンダーは4人いた方がレベルの高いポロックも出来るから、私の知り合いのコーディネーター2人も連れて行くね!2人にも渋い味のきのみを大量に持ってくるよう言っておくから、その日は朝から夜まで、大量に青いポロック作ろう!」

「え、そこまでしてもらって、いいのかな…」

ここ数日テレビを見ていたが、カトレアちゃんはなかなかに人気らしく、どの番組にも出演している程だった。
そんな彼女に時間を割いてもらってもいいのか申し訳なく思っていれば、彼女の「早くエリシアとコンテストで戦いたいから!」の一言で納得した。

このアイドル、なかなかの戦闘狂のようだ。

彼女の申し出にありがたく頷き、3日後にカイナシティのコンテスト会場で待ち合わせが決定した。

部屋のお風呂に水を張り泳がせているヒンバスを撫でながら、先程の約束を報告し、楽しみだねと話しかける。

「はやくヒンバスとバトルやコンテストで戦いたいな」

「〜♪」

私もだと言うように手にすり寄ってくるヒンバスに顔が緩む。

カトレアちゃんには今度、お礼をしないと。

 

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