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翌日からカイナシティを出発して旅を再開し、暇があればヒンバスに青ポロックを食べさせる。
ロコンとメタングにも他の色のポロックを食べさせつつ進んでいれば、草むらからキャモメが現れて、今後そらをとぶのにもいいかもしれないとモンスターボールでゲットした。
「よし、キャモメゲット」
この子は技構成どうしようか、なんて考えていたところに、慌てた様子の女の子に声をかけられ、ポケモンを交換してほしいとの申し出が。
とりあえず話しを……って、え、
「キャモメを?」
「そうなんです…!!」
どうやら彼女は、私がキャモメを捕まえるのを見ていたらしく、自分が持っているラルトスと交換してほしいとお願いしてきた。
なんでも、急いでそらをとんで他の街に行かないといけないが、見事に自分の手持ちには羽を持っているポケモンはいないこと、ポケモンをゲットするのが極端に下手なことを説明され、渋々頷く。
「まあ私も捕まえたばかりですし、いいですよ」
ごめんねキャモメ。もうお別れだって。
キャモメが入っているモンスターボールを一度撫で、彼女のラルトスと交換する。
キャモメをもらった彼女は本当に急いでいるらしく、私に何度も頭を下げながらカイナシティ方面へ走って行った。
まるで嵐が去ったみたいだとラルトスをボールから出して頭を撫でる。
「はじめまして、ラルトス。今日からよろしくね」
手始めにポロックをあげて仲良くなり、ちょうどいいと、次の街までラルトスのレベル上げを行いながら進むことにした。
意外にもラルトスはレベルが高かったようで、何度かバトルをすればキルリアに進化した。
「えええ感動があまり無い……」
「?」
ダンバルの時はあんなに嬉しかったのに、と悲しくなりながらもキルリアの頭を撫で、先日道端で拾ったやすらぎのすずを持たせた。
心地よい音色がなるそれは、ポケモンが私になつきやすくなるらしく、今のキルリアにぴったりだった。
キルリアも鈴を気に入ったらしく、揺らしたら音が鳴るそれを楽しそうに眺め、自分の腕につけた。
「よし、じゃあ次の街まで、バトル頑張ろっか」
「きるり…!」
キルリアが元気よく頷けば、あとはサクサクと進むだけ。
途中、サイクリングロードを見かけたため、次の街で自転車を購入するか検討しようと思う。
* * *
「ここがキンセツシティかー」
サイクリングロードの下道を抜けてしばらく歩けば、地元のカナズミシティよりも大きな街、キンセツシティに辿り着いた。
迷路のように同じ風景が続く道、街の四隅に階段があり、登った先でそれぞれ道が繋がっているらしく、これは迷子になりそうだと肩を落とす。
街の入り口に立っている看板でポケモンセンター、フレンドリィショップ、そしてポケモンジムの位置を確認し、まずはポケモンセンターで部屋をとることにした。
幸いにも部屋の空きがあったようで、部屋をとってポケモン達を回復させてから、次はフレンドリィショップで回復薬の補充を行おうと目的のお店へ行けば、
「……!すみません、エリシアさんですか!?」
ポケナビの時にもお世話になった、フレンドリィショップで待っている配達員さんから声をかけられた。
男性はお店に入った私と、手に持っていた写真とを何度も交互に見て、嬉しそうに声をかけてきたため、思わず頷く。
頷いた私を見て、男性は笑顔で小包みを私に差し出してきた。
「ダイゴという方からのお荷物です!」
差出人の名前を聞いて目を見開き、急いで荷物を受け取れば、たしかに伝票に書いてあった名前は婚約者の彼のものだった。しかも、デボン・コーポレーションから荷物出してる。
男性に、どうしてこのキンセツシティで待っていたのか尋ねれば、どうやらダイゴさんからの伝言で、"キンセツシティで待っていれば、そろそろ通ると思う"との内容を伝えられたらしい。
ダイゴさんは私の行動を見ているのか。
ちょっとカイナシティで時間とってたのに。
…と思ったが、その伝言をもらったのはどうやら4日前らしく、今日私が来なければ荷物を返送しようと思っていたらしい。
「いやー、フレンドリィショップに寄ってくれて助かりましたー。やっと本部へ帰れますよー」
「ご、ご迷惑おかけしました」
なるほど。私を見たときの嬉しそうな顔は、嫌になる程待ち続けた人がやっと来て、この荷物から解放されるからか。
スキップでもしそうな程嬉しそうな配達員さんを見送り、私も回復薬等を買い足せばお店を出て、広場のベンチに座って荷物を開封する。
あのダイゴさんから荷物が届くとは、全く予想していなかった。何を送ってくれたのだろうか。
ガサガサと音を立てて開けていれば、ロコンとメタングが自分からボールの外に出て私の様子を見守る。
やっと開封できたと中身を見て、私は驚きで固まった。
「……、これ…!」
震える手でダイゴさんが送ってきた物を手に取れば、その下にメッセージカードが入っていたようで、かさりと音を立てる。
そのメッセージカードには、綺麗な字で一言だけ書かれていた。
"はやく追いついておいで"
「……簡単に言ってくれちゃって」
私がどれだけ、毎日悩みながらロコン達を育てているか。
私がどれだけ、自分の成長のためにもがき、苦しんでいるか。
私がどれだけ、毎日ダイゴさんのことを考え、倒す日を夢見ているか。
ロコンとメタングが心配そうに私を見ているなか、目を閉じて何度か深呼吸を繰り返し、次に目を開ければロコンを見る。
「ロコン、進化したい?」
「…!きゅう!!」
"進化"という言葉に目を輝かせた彼は何度も縦に首を振り、ついには私の手からほのおの石を奪い取って、自ら石を使って進化を始めた。
私は彼の行動の速さに唖然とし、通行人の人はポケモンの進化に微笑ましそうに眺める。
進化の光がおさまれば、ロコンはキュウコンへと進化していた。
彼はゆっくりと立ち上がり、私の目の前まで来ると座り込み、私を見つめる。
その綺麗な姿に見惚れていたが、我に返れば苦笑して頭を撫でる。
「びっくりしたよ。いきなり石奪うんだもん」
「きゅう」
私の言葉にキュウコンは笑い、隣を見ればメタングも楽しそうに笑っていた。
その2人の様子に私も顔が緩み、ダイゴさんからのメッセージカードを大事に鞄にしまって、包みは広場に置いてあったゴミ箱に入れる。
「さて、ロコンもキュウコンに進化したことだし、ポケモンジムに挑戦しようか」
「メタっ」
「きゅう!」
キュウコンもメタングも"賛成だ"というように頷き、2人ともボールから出したままジムへと向かった。
…そういえば今回のジム、電気だけど大丈夫なのかな。
…今回もゴリ押しになっちゃうかも。
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