私がいかに彼を好きかという話
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私の婚約者は、完璧だと思う。

恐らく、女性が理想とする要素をすべて持っているのではないだろうか。

容姿端麗。
才色兼備。
ついでに経済力や社会的地位。
更には人望まである。
ポケモンの育成能力やバトルのセンスだって高い。

"天は二物を与えず"なんて言うけれど、彼はその枠から外されたのかもしれない。








そんな完璧な彼に、私は疑問を抱いている。

ダイゴさんは、なぜこんな、少し裕福なだけの娘と婚約を続けているのだろう。

婚約を続けるか破棄するかは、権力も財力も上であるツワブキ家に決定権がある。

私はダイゴさんのことが好きだ。
だけど彼が無理をして、私との婚約を続けているとしたら。

…そうだとしたら、私は彼に、とても申し訳ないことをさせている。

こんな完璧な人なんだ。
私じゃなくても、ほかに良い人がすぐに見つかるだろう。

……私じゃ、なくても。




「エリシア」

ダイゴさんに名を呼ばれ、自分の世界に落ちていた意識を浮上させる。
彼を見れば、珍しく眉間に皺を寄せて、少し怒ったような表情で私を見ていた。

「なんでしょう、ダイゴさん」

2人でいるのに、碌に彼の話も聞かずに考え事をしていたことを怒られるのだろうか。

「いま、エリシアにとって良くないことを考えていたね」

疑問形ではなく、断定的に尋ねてきた彼に、どうしてわかったのだろうと驚きで目を見開く。
私の表情を見て、やはりかとダイゴさんは苦笑した。

「なんでもいいから、話してみてくれないかな」

エリシアの不安を取り除きたいのだと言われ、泣きそうになる。

私の疑問をぶつけて、彼が"無理をして婚約を続けている"と答えたら。
…私は、この人を手放さなければいけないのか。
こんなにも好きな、彼のことを。

「…っ、」

「えっ、ちょ、エリシア!?」

考えただけで涙が溢れた私を、ダイゴさんは慌てて私を抱きしめ、背中をさすったり頭を撫でてくれる。

「いったい、何を考えてたんだい?」

エリシアが泣くなんて初めて見たよ。と困ったように言葉を紡ぐ彼に、先程考えていた疑問をぶつけた。

「実は……、」

時々言葉が詰まりながらも、私が先程考えていたことを正直に話す。
話が終わる頃には、ダイゴさんは笑っていた。

「たしかに、親から婚約の話を聞かされたときは嫌だったよ」

「やっぱり…」

やはり私はダイゴさんを手放さなければ…と再び瞳に涙が溜まり始めた私を見て、ダイゴさんは慌てて否定し、ハンカチで優しく涙を拭ってくれた。

「でも、それはエリシアと会うまで。エリシアと出会ってからは、この婚約に感謝さえ覚えるようになったよ」

その言葉は、私にとっては予想していなかったもので。

「感謝、ですか…?」

なぜ勝手に決められた婚約に、感謝することがあるのか。
…いやでも、たしかに私もこの婚約に感謝はしているかも。

二度三度、パチパチと瞬きを繰り返していると、ダイゴさんは優しく微笑んで私の頭を撫でる。

「こんなに素敵な女性を、小さい頃から独り占めできるんだ。当時の僕は、これ以上ないほど舞い上がっていたよ」

思わず、顔合わせの場だというのに、石について1時間程度語ってしまう程にね。


苦笑しながらも言葉を紡ぐ彼を見て、思い出すのは初めて会った日のこと。
私が趣味を聞いたら、それまで愛想笑いだったのに、急に生き生きと石の話を始めたんだっけ。


昔を振り返り、懐かしいと小さく笑う。
私が笑ったのを見て、ダイゴさんも笑った。

「婚約に感謝しているのは今も、そしてこれからも変わらないよ。無理して続けているなんてとんでもない」

「…本当ですか?」

私のしつこい確認にも、彼は迷うことなく頷いた。

「ああ、もちろん」

僕はエリシアが好きだ。
それは昔も、今も、これからも変わらない。

裏なんて感じさせない堂々とした宣言に、ようやく私の中の不安が薄れて無くなった。

彼の言葉が嬉しくて嬉しくて、思わず顔が緩むのが自分でわかった。

「私も、ダイゴさんが大好きです」

私の告白に、ダイゴさんは嬉しそうに笑って、優しく抱きしめてくれる。

「こんなに素敵な婚約者がいてくれて、僕は幸せ者だね」

「ふふ、私もです」







私の婚約者は、完璧だと思う。

恐らく、女性が理想とする要素をすべて持っているのではないだろうか。

容姿端麗。
才色兼備。
ついでに経済力や社会的地位。
更には人望まである。
ポケモンの育成能力やバトルのセンスだって高い。

でも私は、ダイゴさんがダイゴさんだからこそ好きだ。

「好きです、ダイゴさん」

ずっと、貴方の隣にいさせてください。

 

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