僕がいかに彼女を好きかという話
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(婚約者時代)



僕の婚約者は、完璧だと思う。

恐らく、男性が理想とする要素をすべて持っているのではないか。


「ダイゴさん」

容姿も、

「ダイゴさん」

性格も、

「ダイゴさん」

器量の良さも。


彼女のすべてが、僕を惹きつけるのだ。


「ダイゴさん!!」

「…え、あ、あぁ。すまない」

どうやら何度も僕の名を呼んでいたらしい彼女は、心配そうな顔で僕を見る。
僕は再度謝罪し、咳払いをした。

「すまない。少し考え事をしていたんだ」

「本当ですか?体調が悪いなどあれば…」

「いや、大丈夫だよ。ありがとう」

エリシアのことを考えていたのだと素直に言えば、彼女は顔を真っ赤にさせ俯く。
そんな彼女を見ながら内心可愛いと思う自分は、どうしようもないくらいに彼女に溺れている。

そんな時、エリシアのポケナビが鳴り、彼女が出ようか迷っていたため、出た方がいいと促す。

「緊急だったらいけないだろう?」

「すみません…」

電話に応答した彼女は名前を見なかったらしく、不安そうな顔から相手がわかったのか、ぱあっと明るくなった。

「グリーン!!」

エリシアの口から彼の名前が出た瞬間、自分の指がピクリと動いたのがわかった。

たしかに彼女は男性の理想をかためたような女性だ。僕には勿体ないくらいの。
そんな彼女だからこそ、ずっと僕が気になっていることがある。

「…え、今度ホウエン地方に?レッド君も来るの?じゃあ案内するよ!!」

僕といる時にはしない砕けた口調、年相応に楽しんでいる表情、そして、


僕には絶対にしない名前の呼び捨て。


何故だ…!何故なんだエリシア…!!
僕が年上だからか…!それとも御曹司だから…!?

片手で顔を覆って俯いていれば、電話を終えたらしいエリシアが嬉しそうにお茶を飲んでいる姿を見て、思わず口を開いた。

「エリシア」

「? はい」

「グリーン君から電話がきて、随分と嬉しそうだね」

「えっ…」

ぎくりと頬を引きつらせる彼女に、胸の内にもやもやしたものが広がる。

やはり、彼女も歳が近い相手の方が良いのだろうか。

…いやいや、もし彼女がそう思っているのであれば、とっくの昔に僕は彼女に捨てられているのではないか。そうでないということは…。


頭の中で自問自答していれば、彼女は苦笑して理由を話してくれた。

それは、僕にとって考えもしなかったことで。


「実は、グリーンと会っている時、ダイゴさんのことを教えてくれるんですよ。呼び捨てなのも、彼が"呼ばれ慣れてないから"って、最初に無理矢理修正されて…」

だから彼は呼び捨てだし、会うときは楽しいんです。
私が知らないダイゴさんのことを知れますから。


嬉しそうに笑顔で話すエリシアに、僕は唖然として、次には恥ずかしくなって片手で顔を覆った。

そんな僕を不思議そうに見る彼女に、僕は素直に話す。


「……すまない。エリシアが随分グリーン君と親しげだったから、彼に嫉妬していたんだ」


理由を話せば、エリシアは数秒固まった後、先程の僕と同じように顔を赤くさせた。
けれどその表情は、とても嬉しそうで。


「…私、ダイゴさんの特別になれているんですね」


嬉しいです。と笑顔で言うエリシアに、もちろんだと頷く。


「僕は、エリシアが思っている以上に、エリシアのことが好きだよ」


僕の言葉に、蕩けるようにはにかむ彼女に、愛しさが溢れる。









僕の婚約者は、完璧だと思う。

恐らく、男性が理想とする要素をすべて持っているのではないか。

容姿も、

性格も、

器量の良さも。


「好きだよ、エリシア」


彼女のすべてが、僕を惹きつける。

僕はもう、彼女を手放すことはできない。

   

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