ガラル地方へ 416/17
まぁこうなるとは思っていた。
「エリシア、この先にも道は続いているみたいだ。行ってみよう」
「はい、ダイゴさん」
目を輝かせるダイゴさんの言葉に頷きながらも、内心"やっぱりか"と苦笑する。
今日はガラル地方に来て4日目。
1日目と2日目は、空飛ぶタクシーを上手く使ってシュートシティに行ったりナックルシティに行ったりして観光を楽しんだ。
3日目は、ホウエン地方のチャンピオンが来ているという情報をどこからか聞きつけたのか、前チャンピオンが是非ダイゴさんに会いたいと言ってきたらしく、ホウエン地方のリーグ経由でダイゴさん本人に話がきた。
断るのも印象が悪いからと、その日は朝から出かけたきりで、帰ってきたのは夜だった。(まぁ、その間に気になってたワイルドエリアでキャンプ体験が出来たから私としては満足だった)
そして4日目の今日、朝早くに叩き起こされて半分寝ぼけながらダイゴさんに連れて来られた場所は、見渡す限り銀世界のカンムリ雪原。
なんでも、昨日会った前チャンピオンのダンデさんから、いくつか解明されていない伝説があるというこのカンムリ雪原のことを聞いて、我慢できずにやって来たらしい。
途中の電車の中で、どこで買ってきたのか防寒具一式を私に着せたダイゴさんは満足げに頷いていた。
そして、カンムリ雪原へと着いて駅から出て、足早に周辺を探索し終わったダイゴさんは、冒頭のように私に言葉をかけて先へと進む。
「この辺りはとても寒いね。暖かいエンジンシティが懐かしいよ」
「たしかに、気候の変動が激しいですよね。いやまぁ、ガラル地方は本島の中も激しかったですけど」
「そうだね。砂漠に近いラテラルタウンの反対側が、雪国のようなキルクスタウンだったのは驚いたよ」
「それを考えれば、近くにこんな雪原があっても不思議ではないですね」
「だね。…ん?」
「どうしました?」
急に立ち止まって前を注視し始めたダイゴさんの顔を見上げれば、彼はその端正な顔を驚きに歪ませた。
「あのポケモンは……!?」
「?」
ダイゴさんがここまで驚くのは珍しいなと首を傾げつつ私も前を見れば、驚きで目を見開く。
「だ、ダンバルが野生で……!?」
そう。
なんとカンムリ雪原では、ダンバルが自由気ままに道を浮遊していたのだ。
ホウエン地方ではダンバルが野生で出現しないだけに驚きも大きい。
「………野生、ですよね?」
誰かのポケモンの可能性を考えて口に出したが、それをダイゴさんは否定した。
「いや、あのダンバルは野生…だと思う。近くにトレーナーの気配がしないし、少し離れた奥の方でも別のダンバルが自由に浮いているからね」
そう言われて遠くの方へ目を凝らせば、たしかに私たちの近くにいるダンバルとは別のダンバルが、機嫌良さそうにふよふよと浮いていた。
その光景を見て、思わずダイゴさんと顔を見合わせる。
「………すごいですね、カンムリ雪原」
「すごいね。カンムリ雪原」
お互いに頷き合えばダイゴさんは再び近くのダンバルへと顔を戻し、真面目な声でこう言った。
「………僕、ここに住もうかな」
「とても魅力的ですが、私が寒さに耐えられないのでやめてください」
もう。と苦笑すれば彼も笑う。
「冗談だよ。とても魅力的だけど、僕が居るべき場所はホウエン地方であり、エリシアの隣だ」
先に進もうか。
優しい言葉とともに左手を差し出され、嬉しさににやけながらその手を握る。
「ダイゴさんが隣にいてくれるなら、どこに住んでも良い気がしてきました」
「それは嬉しいね。将来は洞窟に住むのも夢じゃないかな」
「え、洞窟かぁ……。う〜〜ん…」
「……ぷっ、っあはは!冗談だよ。短期間ならまだしも、流石の僕も洞窟に住むのは嫌かな」
「一生懸命考えたのに…!!もう!」
「ごめんごめん。エリシアが可愛くてつい」
「…っ!?」
「あ、顔真っ赤だ。可愛いね」
「〜〜…っ、恥ずかしいのでそれ以上は言わないでください!」
その後はカンムリ雪原内を歩き回り、伝説について調べ回った後はひらけた場所でキャンプをして楽しんだ。
「ガラル地方も良いね」
「このキャンプのためだけに、また来たくなりますね」
ポケモンたちが美味しそうにカレーをもぐもぐと食べているのを眺めながら、私とダイゴさんも手元のカレーを食べる。
うーーん。
ダイゴさんと協力して作った、リザードン級のカレー美味しいなぁ。満足。
ダイゴさんと、また来たいなぁ。
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