天槍のユニカ



公国騎士の参上(23)

「それ、説明になってねーんだけど。つーか、剣返せ」
 戻ってこないのでは、といよいよ心配になったらしい。ルウェルはディルクの左手に手を伸ばしたが、剣は反対の手にひょいと持っていかれ奪還できない。
「お前には、トカゲを捕まえてもらう」
 前を向いたままの主から告げられた言葉に、剣を取られた騎士は少しだけ目を瞠る。が、すぐににたりと下卑た笑みを浮かべた。
「なんか面白そうなことやってるんだな?」
「ああ」
「ふーん。いいぜ、付き合ってやる」
 剣を取り返そうとするルウェルの手を避けながら、ディルクは見舞った近衛騎士の中にいたトカゲの尾≠思い出し、口の端を吊り上げた。

     * * *

 一言でいうと、様子がおかしい。昨日の正午、少し前くらいから。
「ユニカ様?」
 エリュゼが声を掛けると、寝台の上で毛布を被り座っていたユニカがびくりと跳ね上がって振り向いた。それと一緒に何かを枕の下に隠す。
「な、なに」
 いつもの仏頂面だが、ものすごく狼狽している。エリュゼの後ろから様子を覗いていたフラレイ、テリエナ、リータは、うろたえるユニカの姿を見てとても新鮮な気分だった。
「ご昼食の用意が整いました。こちらのお部屋へおいでくださいまし」
「分かったわ」
「……はい」
 エリュゼはユニカが寝台から降りてくるのを待ったが、彼女は一向に動こうとしない。なぜかこちらを睨み付けてくるばかりだ。
「あの……?」
「今行くから、一度扉を閉めて」
「はぁ」
 命令通り、侍女たちは一歩引き下がって扉を閉めた。顔を見合わせているとすぐにユニカが出てくる。

- 168 -


[しおりをはさむ]