天槍のユニカ



『娘』の真偽(27)

 本能的に嫌なものを感じとり、ディルクは思わず問い返した。
「よっぽどのことがあれば、許しは得られるでしょう?」
「だから、何をするつもりだ」
 エイルリヒはただ肩を竦めて「内緒」と笑っただけだった。
「大丈夫。ある程度°ュ行になんて遠慮は僕にはありませんから。必ずユニカを表に引きずり出してみせます」
「……お前の場合は少し遠慮して欲しい」
 まだ大きな躓きを経験していない――彼の場合は一生躓くことはないかも知れないが――エイルリヒは恐れ知らずで、大胆で、子供らしく残酷だ。
 生まれたときから公国の頂きに立つことを教え込まれてきた彼はディルクよりも人の動かし方を心得ているし、人を使うことに対して迷いがなかった。エイルリヒが大公になれば、ディルクは一生、第一の家臣に踊らされる玉座の主になるだろう。
「あれ、なんで僕とティアナで言うことが違うんです?」
「お前、誰と誰に迷惑がかかるとか、考えてないだろう」
「そんなことありませんよ。きっと最小限になるようにします」
 ディルクはその最小限≠フ中に自分が含まれていることをひしひしと感じた。しかし、
「だったら任せよう、エイルリヒ」
「御意に。……って言えばいいのかな、王太子殿下」
 それでも、あの娘が欲しい。






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