天槍のユニカ



蝶の羽ばたき(12)

 アヒムの娘であるユニカなら、ノートがティアナにとって大切なものであることは分かるだろう。そしてきっと、近いうちに返しに来てくれる。フラレイが、気を利かせて王太子を見舞うようユニカに薦めてくれなくても、ティアナが主の傍にべったり張りついていれば、彼女は主の前に現れることになるはず。
 皆まで言わなかったが、主の望みはそれだ。ユニカに負傷した自分の姿を見せ、貸しがあることを印象づけておきたいのだ。
 細工はこんなものだろう。ちょろいったらない。
 廊下の角を曲がりハンカチをしまうと、ティアナは今日以降の主の予定を調整することに思考を切り替えた。






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