天槍のユニカ



繋いだ虚ろの手(23)

 本当に嫌がって怒ったと思ったのか、ディルクは手を引く。しかし、ユニカはきっとした眼差しでディルクを見あげ、今し方離れた彼の袖を掴んだ。
「お願いがあります。あの騎士≠ノ会わせて欲しいの」
「あの騎士=H」
 首を傾げながらも、ディルクの瞳は少しだけ剣呑に光った。とぼけているだけで気づいたはずだ。
「地下牢を出る時に、私を見ていた騎士よ。彼は誰? 私のことを恨んでいたわ」
「君が気にすることはない」
「いいえ。訊きたいことがあります」

 私は、あなたの誰を殺したのか、と。






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