やがてユニカ達のテーブルにもラビニエがやってきた。直前までにこやかだった彼女は、ユニカと目が合うなり、あからさまに表情を消した。
ユニカはぎくりとする。が、じっと睨むように見つめられるだけで、ラビニエが口を開く気配はない。
「クリスタさんがユニカ様や公女殿下ともお知り合いだったなんて、存じ上げませんでしたわ」
口火を切ったのはコルネリアだ。彼女はにこやかだったが、ラビニエも、コルネリアも、本来なら進んで頭を垂れねばならない相手であるレオノーレには目もくれなかった。
また、家柄だけでいえば公爵家の姫君であるユニカにも一歩引き下がって挨拶を求めなくてはならないはずだが、誰にも、そんな気配はない。
大公家へ嫁ぐことが決まっているティアナに対しても同様だ。きっと、大公妃という高い地位を約束されたティアナのことも、ラビニエは招待したくなかったのだろう。
「親しくお話させていただくようになったのはごく最近なのですよ。今日はラビニエ様のお茶会で皆さまにお会いできて、とても嬉しく思います」
「ええ、本当に。ユニカ様も、どうぞのちほど、わたくしたちのテーブルにおいでくださいね。お持ちいただいたお菓子、ラビニエ様は召し上がるのを楽しみにしていらっしゃいますわ」
「は、はい」
ラビニエの青灰色の瞳にじっと見られているのを感じつつ、ユニカはぎこちなく頷いた。
結局、話はそれだけだった。
ラビニエはあっさりと次のテーブルに足を運び、そこにいた娘達とは満面の笑みで挨拶を交わしている。
声がはっきりと聞こえるだけに、わざとだということが分かった。
「幼稚ね。でも見たでしょ。四対四よ。負けてないわよ、ユニカ。あたし、敵と同数の勝負には負けないって決めてるの」
「物騒ですわ、公女殿下。わたくしたちはお茶を飲みに来ただけで、戦をしに来たわけではないのですから」
鼻で嗤うレオノーレをティアナが嗜めてくれたが、そう言う彼女の笑みもどこか冷え冷えとしている。
そのティアナが注いでくれたお茶をすすりつつ、ユニカは肩を落とした。
なんとかなるかも知れないというささやかな自信は、ラビニエの無表情一つで簡単に砕けてしまっていた。
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