天槍のユニカ



みんなのおもわく(15)

「殿下には、この繋がりは大変心強い支えとなります。殿下はウゼロ公国のお生まれゆえ、シヴィロ王国に後ろ盾となる外戚をお持ちではありませんから」
 エルツェ家の門葉である伯爵家の当主は、そう言ってやわらかく微笑む。それを見て、ユニカはゆっくりと目を瞠った。
 ユニカがいた方がいい、という、自分達の想い意外の事情において、初めて聞いた言葉だった。



 レオノーレがユニカの部屋を訪ねてこないと思ったら、彼女は先にヘルミーネのお城≠フ軒先に出されたテーブルで誰かと楽しげにおしゃべりしていた。
 ほかにも数人の婦人がお城≠フ中のテーブルについて小鳥がさえずるように話をしている。彼女達に軽く挨拶をしながら、ユニカはレオノーレの許へ向かった。
 ユニカがやって来たことに先に気づいたのは、レオノーレの隣に座っていた貴婦人だ。彼女が振り向く時、シトリンのイヤリングが涼やかに光った。それにも負けないほど輝かしい笑顔で彼女は立ち上がる。
「まぁ、ユニカ様。お久しぶりですわ。冬にお会いした時よりもっと可愛らしく、いいえ、お綺麗になられて」
 レオノーレと仲良く話せるなんて(決して公女殿下を珍獣のようだと言いたいわけではない)、どんな人だろう? 
 そんな疑問はすぐに消えた。レオノーレと話していた貴婦人はユニカの中でかなり印象深い相手だったからだ。
「ようこそ、クレマー伯爵夫人」
 いつぞや、レオノーレと三人で真夜中の街へ出かけ、あまり健全ではない芝居を一緒に見た人だ。道理でレオノーレが親しげにしているわけだ。彼女の握手に応じていると、レオノーレも座ったまま背もたれに腕をかけて振り返った。
「また≠ィ芝居を見に行こうかって話していたところよ。ユニカも行く?」
「……明るいうちに、怒られない内容のお芝居ならね」
「それがいいわね。今のユニカは誘拐する価値大ありだから、治安のことも気にしないと」
「やめてくださいまし、公女殿下。そんな恐ろしいお話」

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