みんなのおもわく(2)
それを依頼した時、エリュゼはちょっとだけ顔をしかめた。ユニカの意図を察したからだ――マクダと話すために席を外して欲しいというお願いであると。
それでも彼女は頼みを聞いてくれ、騎士達も部屋の外で待機。クリスティアンだけは衝立(ついたて)の向こうにいるが、本当にいるのか疑わしいくらい気配を感じない。
マクダは採寸のために助手を連れてきたそうだが、エリュゼがいなくなると分かって自ら測ると言ってくれた。そこで書記係になったのがクリスタだ。彼女なら、必然的に話題になるであろうユニカの過去の話を聞いても動じなさそうだったので。
クリスタが気にしたのは身体のサイズを知られてもいいのか≠ニいうことだった。ユニカはそれのどこが気になるのか分からなかった。「構わない」と言えばクリスタは目を瞠ったが、なぜか「口外しませんわ」と約束してペンを握っている。
「王都へ来るまでは、ずっとビーレ領邦やジルダン領邦にいらしたんですか?」
「いやぁ、ビーレやジルダンが復興するまで、結構長いことレゼンテル領邦にいたよ。あすこはウゼロ公国からの品物もたくさん流れてくるでしょう。景気がよくて、布やビーズも珍しいのがあったからね。でも、いつか王都に行こうって思ってた」
「貴族のお客がたくさんいますものね」
「違うよ。ユニカがお城にいるって聞いたからだよ」
背後にいたマクダが前へ回り込んできたので、ユニカの驚いた顔はしっかりと彼女に目撃された。
「疫病のあと、一年くらいした頃に、ユニカらしき女の子が王妃様に連れて行かれちゃったって噂を聞いてさ。ビーレ領邦に戻った時に教会堂へ行ったらエリーに会えて、その噂は本当だって言うし。じゃあ、王都にお店を構えられて王妃様のお耳にも入るくらい繁盛させたら、あんたにも会えるかなって、ちょっと思っていたの。っていっても、さすがアマリアよね、競合が多くてそう上手くはいかないのよ。クリスタお嬢様と知り合えて、あんたとクリスタお嬢様が知り合いだったのは本当にありがたい偶然!」
偶然≠ニいう部分を強調したのは、さっきクリスタに疑われたせいだろうか。当のクリスタは笑っているだけだ。マクダはそれを確かめると、改めてユニカを正面からじっと見据えた。
「ユニカは? お城に来てからどうしてたの? 王妃様は優しくしてくれたの? いじめられたりしなかった?」
マクダの声音は、まるで近所の子どもに向けるように優しい。それがなぜか胸を締めつける。
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