再会(5)
代わりに、昨日のうちにエルツェ家を訪問して弟達と公爵夫人に挨拶し、大教会堂へもともに礼拝に行って、帰りには王城の中にある聖堂に供える花とお菓子を預かってきた。
その供えものを持って城内に建てられた小さな聖堂に行くと、帰省していない城仕えの人々が出入りしていた。
皆、騎士と侍女を従えてきたユニカのことを目を眇めて不思議そうに見てくる。
当たり前だ。大霊祭の主祭が行われる日に、貴族の子女がわざわざこんなに小さな聖堂へ来る必要はない。ここへ出入りするのは仕事で城を降りられなかった使用人や役人だけのはずなのだから。
ユニカは常駐している導師にぎこちない笑みを浮かべて供えものを渡し、朗々と読み上げられている祈祷の詞もろくに聞かずに聖堂から逃げ出てきた。
「ああよかった。ユニカ様が熱心にお祈りに参加なさるようならどうしようかと思いました。祝詞を聞きながらじっとしてるのはきついんですよね」
「あなた達はどこの聖堂にも行くつもりはないの?」
あとをついてくるのは、実家が隣国にあって帰省出来ない上に信心も篤そうではないラドクとフィン。それから、ディルクの侍女で、エリュゼやディディエンの代わりに今朝からユニカの世話をしてくれているエミ。
聖堂の張り詰めた空気から抜け出すやいなや、夏空に向けて大きくのびをしたラドクに尋ねると、彼は隣を歩いていたフィンの肩に腕を回して満面の笑みを浮かべた。
「我々が行くように見えますか?」
「自分は行きます。明日」
「なに? 行くのか?」
不信心仲間ではなかったフィンを突き放し、ラドクはふんと鼻を鳴らした。
「お前は昔から妙なところでいい子チャンだよな」
「外出の口実ですよ」
「なるほど、その手があったか」
騎士達のやりとりを横目にエミの方もちらりと見てみたが、目が合った彼女は黙って会釈をしてきただけだった。
彼女はほとんど口をきいてくれない。悪意は感じないが、侍女としての仕事以上のことをする気はないらしい。
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