天槍のユニカ



再会(6)

 そんな彼女も昨日、一昨日は非番だったようでディルクのそばでも姿を見なかった。休みの間にもう礼拝へ行ったのかも知れないし、フィンのように城下での買い物や帰省に宛てたのだろう。
 ユニカが解せないのは、そんな特別な祝祭の合間にユニカを訪ねてくる者があることだった。それもユニカの客ではない、ディルクが招いた客だった。
 だというのに王太子殿下は不在。客人の目的はユニカだからよいらしい。
 だったらどういう用件なのかと聞いても、ディルクは会えば分かる、ちょっと驚かせたいから教えない、と言うだけだった。
 先日は、用件も言わないコルネリアと会うことに呆れていたくせに。
 ともあれ、形ばかりの礼拝を済ませたユニカはいつもより静かな気がする宮へ戻り、庭にあるぶどう棚の四阿で裁縫をしたり、ヘルミーネに勧められた本を読んで勉強したりしながら暇を潰した。
 客人がやって来たのは、エリュゼとディディエンが出仕して、昼食がてら彼女らがお土産に持ってきてくれた卵のケーキを一緒に食べ終えた直後。予定より早い時間だ。
 東の宮を訪ねてきたのは、またもや貴族の姫君だった。
 晴れの日のために白を基調とした衣裳を着ているせいか、先日のコルネリアに比べると清楚で光るようなかわいらしさのある娘だ。
「お久しぶりでございます、ユニカ様」
 そう言って深くお辞儀をされても、ユニカはすぐに彼女のことを思い出せなかった。
 言葉もなく戸惑っていると、相手はそれに気づいてしまった。
「以前に王太子殿下の侍女をしておりました、クリスタでございます」
 彼女は気を悪くした様子もなく名乗り、純粋にユニカとの再会を喜ぶ笑みを返してくれる。
 再会、と言っていいほどの仲だった覚えがないので、ユニカはしばらく目を瞬かせて驚くしかなかった。


     * * *


「申し訳ございません、大切な祝祭日に押しかけてしまって。すぐに外出の自由の利く日がなかったのです。今日は晩餐会までに屋敷へ戻ればよいだけですから、大聖堂へ参拝したあと、母や妹と別れてこちらへ参りましたの」

- 1224 -


[しおりをはさむ]