再会(2)
はばつ……と、現実味のない単語を口の中で呟き、ユニカはますますしゅんとなった。
思えば子どもの頃にも同世代と付き合ったことがない。皆と違いすぎるユニカはアヒムやキルルに手厚く庇護されていたし、子ども達から見てもユニカのいわれは恐ろしすぎて、いじめる対象にすらならなかったのかも知れない。
そして、王城に来てから仲良くしていたのは王妃とエリーアスくらい。そしてそして、今やっと、誰かと一対一で話せるようになってきたくらい。
気が重い。ディルクに迷惑を掛けないように頑張りたいとは言っても。
「あたしが行くにしても、まだいくつか問題があるわ。まずはユニカのドレス」
「ドレス?」
微妙に苦手分野の話が始まったことを感じてユニカは鼻白む。
今日だって、コルネリアに会うためにあまり好みではない派手めなドレスを着せられた。ゼートレーネの女達が作ってくれた着心地のよいドレスを愛しているユニカとしては、華美なだけの姫君衣装を出来れば着たくないというのに。
「ユニカが着るものに興味を持てないのを批難するつもりはないわ。でも、小娘の集まりに流行は必要不可欠な要素なのよ。王妃様のお形見もヘルミーネ様が見繕ってくださったドレスも確かにいいものだけど……悪く言えば無難なだけよね」
これが無難なのか……ユニカはエリュゼが選んでくれた今日のドレスを見下ろした。
夏らしく生成り色の地に鮮やかなの花の柄が織り込まれていて、それはまだよいものの、フリルは過剰な気がするし中に着ているスカートは花の色に合わせた濃い紅色だった。
「今日のはちょっと子どもっぽい。あんまり似合ってないわ」
エリュゼが選んだことを知らないレオノーレはきっぱりと言ってのけた。
「どういうのがいいの?」
エリュゼがむっとしたことを隠すように、ユニカは興味もないことを尋ねてみた。興味はないが、茶会に必要とあらば知っておかねばならないことだ。
「今のシヴィロの流行最先端は染め物よ。うんと派手な濃い色の花柄にするか、淡い色の縦縞模様(ストライプ)ね。ユニカは淡い色の方が似合いそうだけど、ほかの女と被りそうだし、出来れば柄物がいいわ」
とりあえず、今日ここにいる三人は誰もその流行を取り入れた服は着ていなかった。ユニカが着るものはエリュゼ任せ、そのエリュゼも流行には疎く、レオノーレは自分が好きなものか自分に似合うものしか着ないので。
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