天槍のユニカ



再会(1)

第2話 再会


「幼稚な嫌がらせを企んでいるに決まっていますわ。王太子殿下にご相談申し上げましょう」
 コルネリアを見送ったあと、ユニカとエリュゼ、レオノーレは早速テーブルに戻って第一回目の作戦会議を開いた。
 のけ者にされたエリュゼは見るからにご立腹だったが、少し離れたところにいるクリスティアンとアロイスに声が届かないよう、自らを抑えつけるように言った。
「でも、まだ何もされていないのに……殿下に言ってもどうしようもないんじゃないかしら」
 ユニカの記憶では、コルネリアは遠回しな嫌味を言ったくらいだ。それが十分な効果を発揮したのはユニカの側にも原因があるからに過ぎず、危害を加えられたわけでもないのに、ディルクになんと言えばいいのやら。
 いや――ジンケヴィッツ伯爵なる人の名前を出されたか……。
 あれはユニカに対する脅迫だろう。王太子殿下の評判を落としたくないのなら、出てこいというつもりで。
 しかし、そんなことでディルクを煩わせたくはなかった。確かな家門に生まれた姫君達のやっかみを買っているのはユニカだ。それも、ユニカはディルクに無理やり召し上げられたのではない、自分の意思で彼の宮に住み始めた。
 彼女らの妬みくらい、自分で受け止めねばならない。
「確かに、ディルクに相談するのはちょっと考えた方がいいわね。まだ何もされてないっていうのもそうだけど、ディルクは今、ユニカと暮らし始めたところで頭の中が幸せでいっぱいじゃない? その大事なユニカへ喧嘩を売ってくる小娘に冷静に対処できるか、微妙なところよ」
 ディルクが聞いていれば「お前と一緒にするな」と眉間にしわを寄せて言いそうな見解を述べ、レオノーレは腕を組んで唸る。
「ですが、何かされたあとでは遅いではありませんか。ユニカ様に悪意が向けられていると分かっていて黙っておくことなど出来ません」
「何もされないためにあたしが一緒に行くのよ。伯爵の同行を断ってきたのはだいぶ強気だけど、さすがに公女相手だと話は違うみたいだし。それに、うまくやり過ごせたらそれはそれで好機(チャンス)よ。ユニカと付き合って、間接的にでもディルクの覚えをめでたくしておきたいっていう打算を働かせる連中はいるはずだわ。そういう連中を絡め取るのよ。派閥構築の第一歩ね」

- 1219 -


[しおりをはさむ]