天槍のユニカ



蜜蜂の宴(11)

 四阿には、夏にふさわしく冷やしたお茶とお菓子が用意されていた。その席に座るのはユニカと客人のコルネリア、たまたま同じタイミングで訪ねてきたという設定のレオノーレとユニカの世話人であるエリュゼである。
 レオノーレ曰く「一対三だから有利」らしいが、そもそもまだ敵対してもいないはずのコルネリアは、そんな戦況に立たされているとは考えていないのだろう。一対三≠ナも実に堂々と構えていた。
 歳は一つ下の十八歳らしいが、よい意味でもっと年上に見える。
 レオノーレや、在りし日の王妃ともまた違う華やかさを備えた女性だな、とユニカは思った。力強い火や太陽を思わせる二人とは違い、コルネリアの華やかさはどこまでも女性的だった。髪の結い方もアクセサリーもドレスも、すべてが彼女の存在を引き立たせている。
 たぶん、これこそおしゃれ≠ェ功を奏している見本なのだろう。
 ユニカが半ば感心して年下の姫君を見つめているうちに全員のカップがお茶で満たされ、するとさっそくコルネリアは話し始めた。
「急にお伺いしたのはユニカ様に招待状をお届けするためでしたの。こちらをどうぞ」
 彼女は自分の召し使いから絹で包まれた封書を受け取り差し出した。
「大霊祭が済んだあとに、ジンケヴィッツ伯爵のご令嬢ラビニエ様が毎年お茶会を開いていらっしゃるのですよ。地方から集まった方々もたくさんお招きになって――ああでも、堅苦しい集まりではありませんの。わたくしたちのような年頃の娘ばかりの、気軽な宴です。今年はぜひユニカ様をお招きしようという話になって」
 エリュゼがさっと目を通してから渡してきた招待状は、なんの変哲もないものだった。コルネリアが言うように娘達の集まりであることはなんとなく想像できる、花の模様が散りばめられた可愛らしい意匠であるというだけで。
「私は構わないのですが……あいにくとこういう場には不慣れで」
「不慣れもなにもありませんわ! さっきも申し上げた通り気軽な集まりですもの。お茶とお菓子とおしゃべりを楽しみに来てくださればよいのですよ。ラビニエ様もすっかりユニカ様とお話し出来るつもりでいらっしゃいますの。わたくしたち、ユニカ様と仲良くしたいのです」
 コルネリアは甘えるように身を乗り出してこちらの表情を覗きこんでくる。お茶もお菓子もおしゃべりも興味がないな……と考えたユニカは返事が遅れた。

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