天槍のユニカ



蜜蜂の宴(9)

「ティアナはそういう家柄の娘だったの?」
「まぁー、イシュテン伯爵家は昔からシヴィロとウゼロに二股≠掛けていることで有名だし。伯爵本人も父様と知り合いだったし、公国側の親族も巧く根回ししたんでしょうよ。なんにせよ、婚約者と対面出来たエイルリヒが天に召されそうなほど浮かれて熱烈にティアナと結婚したがってるから、本人達の意向とも合っていて、いい縁談ではあるわよね」
 ティアナは秋にあるエイルリヒの立儲の礼にも参列し、公国でも二人の婚約のお披露目があるだろうとのこと。そう得意げに言って、レオノーレは何かひらめいたようだった。
「とりあえずこの女への対策だけど、まずは会ってみましょうよ」
「それは構わないけど」
 対策が必要かもまだ分からないし気は乗らないが、ユニカも頑として拒否するつもりはなかった。
 継母のヘルミーネから渡された心得書≠ノあったからである、『ご婦人同士の付き合いは女の仕事=xと。
 エリュゼの言われようではないが、ディルクの迷惑にならない程度には貴族の付き合いについてもう少し知っておかねばならないと思う。手始めに、大霊祭のために都へ集まったヘルミーネの友人達と引き合わされる予定だったが、別の付き合い≠味見しておくのも悪くはないだろう。
「レオも一緒に会ってくれる……?」
 彼女の言い草から期待してそう言うと、レオノーレは目を丸くしたのちに飛びついてきた。
「嬉しいっ! ユニカがあたしを頼ってくれるなんて!」
「え、ええ。だって、私は同じ年頃の女性との付き合い方なんて知らないし」
 長椅子の上に押し倒され、頬ずりされながらユニカが言うと、のしかかっていたレオノーレはちょっとだけ身体を起こしながら応えた。
「あら、言っておくけどあたしも女友達は少なくて、こういうことはよくわかんないわよ」
 手紙を読むなり何かを察知したのはどういうことだったのかと言いたくなるほど、レオノーレは自信満々である。
「まぁ、心配いらないわ。伯爵も一緒でしょうし、何かあれば強力な助っ人のあてがあるから」

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