砂の城(21)
「ディルクのことが、好きだと言ってもいいの」
「――いいよ。でも、それはあとでたくさん聞かせて貰うことにしたい」
ユニカの頬から涙をぬぐうディルクの声はもう普段の余裕を取り戻していた。それが少し憎たらしくも思えたが、ユニカは頷きながら振り返るしかなかった。
嬉しい。自分の想いを、ディルクのことを受け容れてもいいということが、今はひたすら。
長椅子の背もたれに阻まれながらも抱きしめ合う。くっつき足りない分は長い口づけに応じることで補っても、まだ涙が止まらなかった。
「一緒に帰ろう」
同じ場所へ帰る人がいたのは、もうずっと前のこと。
炎の中で喪って以来、ずっと冷たく昏く虚ろだった場所が埋まるのを、ユニカははっきりと感じながら頷いた。
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