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「さ、どうぞ」


運ばれてきたアイスティーとケーキを差し出すと一言お礼を言ってからがっつきだす。その姿をぼうっと見つめる。…この自由奔放さは父親似だな、うん。


「そういえば承太郎さん居ないんすか?」

「本人がいる所で昔話を聞きたいなんて中々いい性格してるね」

「いやいや!そうじゃなくって!…ほら、承太郎さんと茉莉香さんっていっつも一緒に居るイメージだったんで」

「…まあ、そうだね」


ブラコンの自分でも流石にうんざりする位張りつかれているのだ。周りからもそう見えるだろう。


「今頃ヒトデでも見てるんじゃない?」

「ヒトデ…っすか?」


なんでヒトデ…と呟いている仗助を眺めつつコーヒーを口に運ぶ。冷たいそれにそっと息を吐いた。


「さ、何を聞きたいのかな」

「あ、じゃあまず―」



あれやこれやと聞いてくる仗助に承太郎の逆鱗に触れない範囲で応えておく。仗助の様にモテていたけれど素っ気なかった事や、エジプトの旅の事。目をキラキラと輝かせる仗助は寝物語に心躍らせる子供の様だ。


「…仗助は本当に承太郎が好きなんだねえ」

「す!…好きって言うか憧れですよ!」


変な言い方しないでくださいよ!と焦る仗助を宥める様に手を動かす。


「憧れ、ね」

「はい!承太郎さんっていっつも冷静でこれぞ大人の男!って感じじゃあないっすか!おれもあんな風になりてえなって!」


そう言って笑う仗助に目を細める。そんな私に気付かずに仗助はつらつらと承太郎への憧れを口にする。なんだか犬の様だな、なんて失礼なことを考えたり。
ある程度すると仗助は大きく欠伸を一つした。


「眠い?」

「あー…そうっすね、実は今日までテストだったんで」

「ああ、そういえばそんな季節だものね」


だからこんな真昼間に堂々と歩いていたのか。サボりかと思ってたよお姉さんは。
続けて欠伸する仗助にふと思いついた事を言ってみる。


「少し寝て行ったら?」

「え、悪いですよ!」

「いや、そうしてくれると助かるんだ」

「助かる?」

「うん。…承太郎にちゃんとホテルに居たって証言して欲しくて」

「…茉莉香さんって承太郎さんに軟禁でもされてるんすか?」


その言葉に小さく肩をすくめる。違うともそうだとも言えないのが辛い所か。


「ま、そう言う事だからさ、助けてくれない叔父さん?」

「…可愛い姪っ子の頼みっすからねー叶えてあげましょう!」


そこまで言ってお互い目を合わせると、耐えきれない様に笑いあったのだった。