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「ストーカー宣言ですか」


いや、多分この場合守護霊的な意味なんだろうけど。思いっきり自分の秘密を見られてるんだ。こうも言いたくもなるだろう。シーザーは私の発言の頬を引きつらせながら手厳しいな、と呟く。


「…こういう存在だからかな。君が何を抱えているかなんとなくだが見えるんだ」

「見える?」

「ああ、魂の形とでも言うのかな。…君は随分と歪だ」


それはまあ、そうだろう。私はもともとこの世界には居る筈の無い存在だ。それが存在している時点で歪としか言いようがあるまい。


「でもまあ、こうして一度話してみたかったんだ」

「はあ」

「…君は何で過去や未来を知っているんだ?」


予言師かい?と尋ねる彼に思わず吹き出す。きょとんとした彼に、私は微笑んで。


「あなたが、物語に出てくるキャラクターだとしたら、どうします?」


ポカンとする彼に全てを、打ち明けた。元々この世界の人間ではない事、元の世界にはジョジョという物語があった事。そしてそこにはこの世界の過去も、未来も記されていて。その物語を私は本当に愛していて、そして死後何故かこの世界に生まれた事。全て、全て。
呆気に取られるシーザーに構うこと無く全てをぶち撒けて私は酷くすっきりした気分だった。今までずっと心に秘めていた事を吐き出したのである。思っていた以上に重荷だったそれを、半強制的にシーザーに押し付けたようなものだ。
流石に悪い事をしたかと思う。隣に座る彼は微動だにしない。…まあ、いきなり自分が漫画のキャラクターだと言われればショックを受けるのも仕方ないか。
…彼は私の知る限りでは死んだ人間だ。だから、私は全て偽ること無く真実を告げた。彼が誰かにそれを伝えられる筈もないから。全く、酷い事をしたなあ、なんて他人事のように考えていた。
だが、彼は予想に反して私の肩を掴んで抱き寄せたのだった。


「辛かっただろう…」

「へ?」


あまりにこの場にそぐわない発言なものだから、つい間抜けな声が出た。普通この場合嘘をつくな、と否定したり、良くても混乱したりとかするもんじゃないだろうか。なのに、彼は労わる様に私の頭を撫でる。


「あちらでも両親を亡くして、こっちじゃ祖父母まで…悲しかったろうに。君は強いな」

「…それでいいんですか?自分が架空の存在かもしれないって言うのに」

「…もちろん驚きはしたさ。でもな、オレが漫画の中の存在であろうとなかろうと、オレはオレの人生に悔いはない」


そう言うシーザーの目には一点の曇りもない。


「父の遺志を継ぎ、親友の為に命を賭けた。それはオレの誇りだ。そして、オレが自分で選んだ道だと信じている。…オレはオレなんだよ」


にこりと微笑む彼に強がりや虚勢の色は見えない。きっと本心なんだろう。


「…強いのはあなたの方だよ、シーザー」


泣きたいような気持ちになりながら呟けば、彼は初めて名前を呼んだな、と綺麗に笑うのだった。
その笑顔を見て、滲み始めた視界を彼の指が優しく拭う。


「女の子の涙はいざって時に取っとくもんだぜ?」


ウィンクしながら冗談を言う彼に思わず吹き出してしまう。


「やっと笑ったな」

「…お恥ずかしい所をお見せしました」

「構わないさ。女性の涙を拭うのは男として誉れ高い仕事だ」

「…流石スケコマシですね」

「スケコマシじゃあない。男として当然の事を言ったまでだ」


胸を張る彼にイタリアに居た頃を思い出す。…ああ、こういうタイプの人結構いるよね。恥ずかしげもなく気障ったらしいこと言う奴。