七月某日、梅雨明けはされたのだが私達は向かった時は雨が降っていた。場所は西東京市にある少年院の宿舎、此処で三時間前に呪胎が確認された。今なお五人の在院者が取り残されており彼等を救出するのが私達の任務。伊地知さん曰く呪胎は特級の呪霊になるらしい。“特級”の言葉によく分かってない虎杖君を除いた私達に緊張が走る。五条先生は出張でいない。普通ならこのレベルの内容は一級の呪術師担うの筈だ。しかし人手不足なので緊急で私達が派遣された。と伊地知さんはそう言っているが、何か腑に落ちない。

「ねえねえ伊地知さん、私達がこの任務をするの先生は知っているの?」
「五条さんには連絡を取ったらしいですが彼方も仕事中なので連絡が取れないようです」
「伊地知さんが連絡したんじゃないの?」
「私は皆さんを迅速に此処に送るよう言われました。ですので連絡は別の方がされてます」
「ねえねえ伊地知さん、私達はあくまで救助だけどこの呪霊を祓う呪術師の目星はついてるの?」
「まだ呪胎をされていないので一級以上の呪術師もまだ動けない状態のようです」
「決まってないの?特級になる確率が高いのに術師の誰とも連絡も取れないの?人手不足って言ってもこっちも凄く緊急なのにそれっておかしいよね?」

伊地知さんを困らせたい訳ではない。伊地知さんは現場に向かう私達を心配してくれているのだから。現に特級に出くわしたら逃げろと先ほども言ってくれた。私は伊地知さんではなくその上が今どんな対応をしているのかを知りたい。それによって頭の中で過ぎったこの任務の“意味”が見えてくる。

「如月、伊地知さんを困らせるな」

私の様子を見ていた伏黒君に待ったをかけられてしまった。まあ伊地知さんを見ると狼狽えて答えられないからやはり何も知らないのだろう。

「伊地知さん困らせる質問しちゃってごめんなさい。今言ったのは気にしないでー」

伊地知さんに謝罪をしたのと当時に女性が私達の方へ走って向かって来た。どうやら取り残された一人の母親らしい。心配し、涙を流している。
その姿に虎杖君は私達の名前を呼び

「助けるぞ」
「当然」

虎杖君の言葉に野薔薇ちゃんは瞬時に答える。それに対し私は少し間を置く。

「…そうだね」

生きてたら

心の中で呟く。伏黒君は黙っており恐らく私と同じ事を考えている筈。
扉の前に私達が立つと帳の詠唱が始まった。それと同時に伏黒君が周囲を探るために玉犬を出現させる。扉を開けると宿舎の中には複数の宿舎がある一目見ても異常だと分かる。呪力で領域を生み出しているのだ。こんな事ができるなると呪胎は変態している可能性が高い。

「扉は!?」

伏黒君の言葉で後ろを向くが私達が入った扉が無くなっていた。虎杖君と野薔薇ちゃんは動揺からか何故か踊っている。伏黒君が玉犬が出入り口の匂いを覚えてるから大丈夫と言うと二人は玉犬を撫でて褒め称えている。忙しいなあ

「わしゃしゃしゃしゃしゃしゃ」
「ジャーキーよ!ありったけのジャーキー持ってきて!」
「そんなの無いよー」


伏黒君が緊張感を持てと言っているがそんな彼に対し、虎杖君が「伏黒は頼りになる」と言っている。あれ私は?今は確かに活躍してないけど、前回の仙台での学校でも虎杖君の前では頼もしい所見せてなかったけど如月も頼りになるんだぞー。

「オマエのおかげで人が助かるし、俺も助けられる」

虎杖君は呪術師というのがどういうものなのかをまだ知らない。だから彼の前向きな言葉は残酷だ。現に数分後三人を見つけ出したことで現実を目の当たりにする。見つけ出した三人の内二人は骨も臓物も出した状態で肉団子になっていた。一人は下半身がないが呪霊に殺されたにしてはまだ綺麗な方、この上半身のみの人が先程の女性の子供らしい。

「この遺体持って帰る」

虎杖君は言ってくるのは何となく予想していた。でも虎杖君それはダメ、私達はあくまで生きている人の救助をしにきた。だから死体にまで構っている余裕はない。それに何時、特級が現れてもおかしくないこんな危険な状態で死体に足止めを食らっている余裕はないのだから。そんな彼に伏黒君は説き伏せるがその内容が虎杖君の逆鱗に触れ、一触触発な雰囲気になる。
緊急事態に喧嘩をしてどうする。私が呆れ、野薔薇ちゃんが怒りながら二人の間に入ろうとする。

「いい加減にしろ!」
「はーい。二人とも落ち着いて。どうどうー」

野薔薇ちゃんが二人の方へ向かおうをとしたがそれはできなかった。野薔薇ちゃんの足元が黒い水溜りのようなのがあり、足から落下しようとしている。

「っ、野薔薇ちゃん!」

術式を発動し数珠を野薔薇ちゃんへ向かって投げようとしたが私の足元にも黒い水溜りがあったようで私も下へと落ちていく

「くそっ…!」

黒い水溜りに向かって数珠を伸ばすが手応えがない。出入り口は閉ざされてしまった。落ちた場所は一面暗く何も見えない。

「野薔薇ちゃん!居たら返事して!」

野薔薇ちゃんからの返事はなく離れ離れにされてしまったと理解する。それと同時に多くの呪霊の気配を感じた。

「そっちはお呼びじゃないんだけどなー!」

伊地知さんの話では呪胎しかいないと聞いていたが、何かを嗅ぎ取ってこんなに多くの呪霊が引き寄せられてしまったのか?考えてもキリがないか。今は一刻も早く皆んなと合流しなくては

「まとめて御陀仏しちゃえ」





と、格好良く言ってみた複数の、しかも視界が暗く見えない中の呪霊相手はこちらの部が悪い。何体か倒していたら背後からガツンといかれてしまい頭から血が流れて視界が更に悪くなる。ていうかまた頭か。こんなに頭攻撃されて私の頭バカになったらどう責任取ってくれるの。しかしこのままだとバカになるどころか死んでしまう。視界が悪いし数もちゃんと把握できてないので嫌だったがあの技を出すしかないか。背に腹は変えられないものなぁ…
数珠を私の前に広げ数珠で大きな円をつくり、術式を組み上げていく。その時だった

扉を開ける音が響く。音の方を見ると真っ暗だった部屋に光が射し伏黒君と鵺、そして蝦蟇の口の中に入っている野薔薇ちゃんがいた。鵺が呪霊を倒している隙に伏黒君の式神、蝦蟇の中に野薔薇ちゃん同様に入れられる。

「助けてくれてありがとう。でもぬるぬるするよー」
「悪かったな!ったくオマエも釘崎も!」
これで三人揃ったので後は虎杖君と合流するのかと思えば、向かった先は官舎の出入り口だった。話を聞くと予想していた通り呪胎は特級呪霊になっており、虎杖君は私達が領域から抜け出したのを見計らって宿儺と変わりそれで特級を倒す。という算段らしい。

野薔薇ちゃんも先程の呪霊との戦いでダメージを負っており、動くこともままならない。私と野薔薇ちゃんは伊地知さんの運転で病院に向かう。では伏黒君は?

「残ります。もしもの時、俺にはアイツを始末する責任があります」

伏黒君は車には乗らずにそう言った。もしもの時とは虎杖君の意識が戻らずに宿儺に乗っ取られてしまった場合。伏黒君は虎杖君を生かしたのは自分がお願いしたから。だから自分に責任がある。そう思っているのだ。それだったら私も同じだ。

「私も残る」
「オマエあの時発動しようとした術式ができる限りの技で、もう呪力殆ど残ってないだろ」
「あらー」

バレちゃってるー。

「それに怪我を負って立っているのもままならないだろ。いても邪魔だ」

言葉はきついけで言っていることは正しいし、伏黒君が私を思っての言葉でもある。私がもっと強ければこうもならないのに

「一人で負わせちゃってごめんね。また後でね」
「ああ…」

死なないで、無茶しないでとは言えない。呪術師はそういうものなのだから。私達の話が終えるのを見て伊地知さんが車を出す。外はまだ雨が降っており今日はずっと雨なのかなぁ。どうでもいい事を考えながら車は病院へ向かう。


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