あの後荷物をまとめる必要がある虎杖君と先生と別れ、私達は先に東京に戻った。東京に戻ると呪術による本格的な治療を受け、ゆっくり休養を取るように言わた。寮の私の部屋に戻ると遠出だったのと気疲れで思っていた以上に疲労しておりベットに入るとすぐに眠りに入る。そして目を覚ました時は窓を見ると空は夕暮れに変わっていた。夕飯時までまだ時間がありスマホを弄って時間を潰そうとするとドアからノック音が響き渡る。
伏黒君が私の部屋を尋ねるとは珍しいと思いながらドアを開けると、立っていたのは伏黒君ではなく虎杖君だった。

「よっ!こっちも元気そうだな」
「よーっ!思ったよりも早い到着だね」
「そんな荷物もなかったから」
「…そっかー」

虎杖君の言葉は言い換えると今までの思い出は最低限しか此処には持ってこなかったという事になる。 でもそれは虎杖君だけではなく他の此処に居る人達の殆どが当てはまる事。

「ねえねえ、虎杖君の部屋は何処になったの?」
「俺は下の階。んで伏黒の隣」

恐らく五条先生の計らいだろう。伏黒君の迷惑そうな顔が眼に浮かぶ。

「先生からの伝言なんだけど、明日皆で四人目を迎えに行くって」
「りょうかーい。何処に、とか何時、とか先生言ってた?」
「言ってねぇな」
「やっぱりー」

肝心なところを言わないんだからー。

「食堂で先生と飯食う約束してたからその時聞いてみるか」
「だったら私も一緒に行く。食堂の場所分からないでしょー?」
「…聞いてねぇな」
「やっぱりー!」

肝心なところを言わないんだからー!

「私が食堂の場所教えてあげるー。まだご飯の時間には早いから今度は私が迎えに行くね。そしたら私も一緒にご飯食べても良い?」
「おう。だったら伏黒も誘おう。で明日何時に出るかも決めよ」
「おっけー」

伏黒君の迷惑そうな顔が眼に浮かぶが気にしない。久しぶりに大人数でご飯を食べるのが嬉しいのは私だけの秘密



次の日、私達は原宿駅前で五条先生を待っている。その間の話題は生徒の人数について

「二年生も私達と同じで四人なんだよー」
「へー。でも一学年で四人って少なすぎねぇ?」
「じゃあオマエ今まで呪いが見える奴なんて会った事あるか?」
「…ねぇな」
「それだけ少数派なんだよ。呪術師は」
「っていうか俺が四人目って言ってなかった?」
「入学は随分前に決まってたらしいぞ。こういう学校だしな何かしら事情あるんだろ」
「二人とも先生来たよー」
「おまたせー」

先生は到着するなり虎杖君が着ている呪術高専の制服は希望を言えばそれに答えてくれること、先生が勝手に虎杖君の制服をカスタムしたことを伝える。

「……ま、いいか気に入ってるし」
「気をつけろ五条先生こういうところあるぞ」
「先生には言いたいことははっきり言った方が良いよ。まあ言ってもダメなことが殆どだけど」

虎杖君良い人だから五条先生の今後の無茶振りにも「まあいいか」で済ましそうだから心配だな。そんな事を考えながら私達は四人目の子を待つが、せっかく原宿に来たのにただ待っているだではつまらないので少し散策をする。虎杖君は今後絶対使わないであろうサングラスを買うほどはしゃいでいる。

「せんせーい、クレープ買ってきていいー?」
「いいよー」
「俺も買う。伏黒は?」
「いらねぇ。さっさと買ってこい」

さっさと買ってこいと言われても観光客や学生で少し行列ができており待っている間、虎杖君と呪術師についての話をする。

「私達の学校って呪霊を払うのがメインだから学業は二の次なの。そこが今までの学校と大きな違いかな」
「勉強しないのはラッキーだな」
「正直者だねー。それで呪霊を払うのも仕事の位置付けだから私達にもお給料が貰えるの」
「マジで?」
「マジで。でも一年はそんな大きな仕事こないから金額には期待しないほうがいいよー」

話をしているとあっという間に順番が回ってきた。メニューを見て虎杖君が先に決める。

「私はストロベリーチーズケーキクリームとキャラメルバナナクリーム」
「二つ食うの?」
「違うよー。伏黒君の分。一人だけ買わないで仲間外れはかわいそうでしょ」
「伏黒が食わなかったら?」
「私が二つ食べるよー」
「やっぱ如月が食いたいだけじゃん」

クレープを両手に持ち伏黒君に食べるか聞くと「俺を口実に買うな」と言われた。二つのクレープを食べながら待っていると原宿によく居るスカウトマンに対し自分を売り込んでいる女の子が眼にとまる。どうやらあの子が四人目の呪術師らしい。

「俺達今からアレに話しかけんの?ちょっと恥ずかしいなぁ」
「オメェもだよ」
「スカウトマンってえっちなスカウトもあるんだってー。知ってた伏黒君?」
「如月、オマエは黙れ」
「はーい」

先生が女の子に声を掛け自己紹介が始まる。

「釘崎野薔薇。喜べ男子、女子よ」
「俺虎杖悠二。仙台から」
「伏黒恵」
「如月琴葉です。よろしくね」

釘崎さんは虎杖君と伏黒君の顔を見ると大きな溜息を吐いた。どうしたんだろう?これで皆が揃ったけどこのまま学校には戻らなそう。伏黒君もそう思ったのか何処に行くか尋ねると先生は「東京観光」と答えた。虎杖君と釘崎さんは喜んでいるが先生がそんな気の利いた事するとは思えない。行き先は六本木と言っていたが、向かった先は六本木とは程遠い呪いの気配が感じる廃ビル。あー二人とも凄くがっかりしてる。
先生は釘崎さんと虎杖君の実力を知りたいようで二人で廃ビルの呪いを祓うよう言った。なので私と伏黒君は先生と一緒に待機する。けど、

「やっぱ俺も行きますよ」
「私も行くー」
「無理しないの病み上がりなんだから」

虎杖君自身がちゃんと呪霊を祓うのは今回が初めてだから心配。でも先生曰くこれは虎杖君ではなく、釘崎さんの呪術師としてのイカれ具合を試すものらしい。しかし待っている側は中の様子も見れないので正直いうと暇である。スマホを触って時間を潰していると、廃ビルから呪霊が飛び出てきた。祓おうとする私達を先生は止める。直後呪霊が苦しみ出し、そして内部から何本も釘が飛び出し呪霊は祓われた。虎杖君にはこんな芸当はできないので釘崎さんの術式だ。

「いいね、ちゃんとイカれてた」

先生の声は心なしか嬉しそうだった。

あの後廃ビルの中に男の子が居たようで先生と伏黒君はその子を送り届けた。残りの私達は廃ビルの前で二人が戻るのを待っている。

「外から釘崎さんの術式見えけど凄かったねー!あんな遠距離でも戦えていいなー!」
「俺はどうだった?」
「虎杖君の戦いは見えなかったから何も言えないよ」
「ひでー」
「まあこれ位大した事ないわよ」
「釘崎さんかっこいい!」
「…野薔薇」
「んー?」
「二人しかいない女の同級生なんだから堅苦しい苗字じゃなくて名前で呼んで。私も名前で呼ぶから」

釘崎さんのううん、野薔薇ちゃんのその言葉に私は凄く嬉しくなり頬が緩んでいくのがわかる。

「分かったよ野薔薇ちゃん!」

丁度先生と伏黒君が戻って来て今度こそ皆んなでご飯を食べるみたいだ。虎杖君はビフテキ、野薔薇ちゃんはシースーと騒いでいる。私も何を食べたいが考えるが、頭の中では一年生が全員揃ったのが嬉しいという思いが強かった。



<< top >>
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -