拾弐

「狗巻先輩、喉の調子大丈夫?」
「しゃけ」
「でも無理しちゃだめだからねー。のど飴あげるー」
「明太マヨ」
「どういたしまして」


ある一室に私達生徒は呼び出された。こうやって全員と会うのは交流会の初日以来だ。久々に会った狗巻先輩は元気そうだけど念の為持っていたのど飴を渡す。室内を見渡すと全員が此処におり、その中で一番目につくのは加茂先輩。顔の半分を包帯で巻かれており見ていて痛々しい。それでも、全員が欠ける事なく此処にいる。

「真希先輩は大丈夫?どこか痛くない?」
「そんな柔にできてねぇ。ってかオマエが一番重症って聞いたのに元気じゃねぇか」
「一杯食べて沢山寝たからかなー?」
「んな訳ないだろ」
「なあ琴葉、俺の心配は?」
「パンダ先輩見るからに元気そうじゃん」

お喋りしながら待っていると五条先生が部屋に入ってきて私達に現状を伝える。
私達が特級呪霊と戦っている時、学校内で保管していた両面宿儺の指を含む特級呪物が呪霊側の手に渡り呪霊の攻撃により数人の人の命が失われた。私達がこうして此処に全員いるのは幸せな事なのだ。それに天元様がいるこの学校に呪霊が入り込み且つ、数多の結界術から呪霊側にお目当ての物を盗まれたのも大問題。こんな事ができるなんて高専側で呪霊と手を組んでいる人が居るとしか考えられない。

「どうする?続ける?交流会」

現状に誰もが押し黙ってしまう。この状況で交流会を続けるのは通常なら不謹慎だと思うだろう。現に何人かはどうしようと迷っている。最初に言う人の言葉で交流会がどうなるか決まると言ってもいいだろう。


「当然、続けるに決まっているだろう」

そのような中、第一声を放ったのはテーブルに足を乗っけて座っている東堂先輩だった。お行儀が悪いなあ。でも続けて言っている事は理に適っている。それにより東堂先輩の言葉で皆が続けると賛同の空気が広がっていく。
そうなると交流会の二日目は個人戦って確か前に先輩たちが言っていたよね。

「えっ。今年は個人戦やならいよ。僕ルーティーン嫌いなんだよね」

まさかの予定変更ときた。では一体何をするのか。五条先生が虎杖君に箱を渡しているので何が入っているのか気になり虎杖君の隣に行ってみる。

「ねえねえなんて書いてあるの?」
「野球だってさ」
「はー?や、」

「「や…やきゅー?」」

「うおっ!?いたの!?」
「びっくりしたー」

「野球?」と思いながら言い返そうとしたら突然現れた学園長二人が虎杖君が持っている紙を見て驚いている。二人の様子を見るに先生独断で決めたんだなあ。現に五条先生いなくなってるし。箱の中に他に何が書いてあるのか気になって見てみると全部の紙に野球と書いてある。出来レースか。
という訳で今日の天気は快晴で絶好の野球日和。交流会二日目が開催された。しかし野球の人数は九人なのに対し東京も京都もその人数を満たないときた。主催者の五条先生の計らいで外野の一人は術式を使って良いというルールが追加された。そしてその外野の役割になったのが私と伏黒君である。その為どちらの術式を使うか二人で話し合いをする。


「で、どっちが術式を使用するかだが」
「伏黒君が良いと思うー」

まあ正直な話京都校の人達がそんなにバンバン打ってくるとは考えにくい。気をつけるとしたら東堂先輩位。まあもしも打ってきたとしたら

「私の数珠で球捕まえるより、玉犬や蝦蟇とかの方が捕まえやすいし相手も錯乱させやすいと思う。ホームランになりそうなら鵺に乗って飛んで行くのも良さそう」
「空飛ぶとかせこくねぇか」
「術式使用可な時点でセコくも何もないよー。勝ったもん勝ちだよー」

と、このようなやりとりをして術式を使うのは伏黒君に決定した訳である。そして試合の幕が開ける。表は京都校の攻撃からで投手の真希先輩の速球で相手を翻弄する。打ったとしても京都校の先生が指示を出すもそれが上手く伝わらず上手く結果を残せない。それで先生が更に熱を持つ悪循環。野球ガチ勢こわー。
あっという間に一回裏になり映えある一番目は打者はと言うと

「東北のマー君とは私のことよ」

野薔薇ちゃんだ。気合い満々でバッターボックスに立つ野薔薇ちゃんに私達からエールを送るとしよう。

「東北のマー君はマー君だろ」
「マー君アメリカ行っちゃったよー」
「マー君投手だぞ」

そして京都校の投手はロボットことメカ丸先輩。ピッチングマシーンになってるけど


「どう見てもピッチングマシンマシーンだろーが!!」

それに対し早々と野薔薇ちゃんが怒り初っ端から乱闘へ発展する。皆が野薔薇ちゃんを宥める中ピッチングマシーンをマジマジと見るとメカ丸先輩の名前と顔を発見。確かパンダ先輩がメカ丸先輩の本体?を壊したのでこのような対応になったらしい。この乱闘の中球の速さを抑えたらいいじゃん。なんて好奇心が浮かびメカ丸先輩(仮)へ手を伸ばそうとする。

「他校による選手への介入は不正になると思わないか。如月」
「やだなー。メカ丸先輩に挨拶しようとしただけですよー。メカ丸先輩、私達も負けないからなー!」

ちゃかり加茂先輩に見られており作戦は失敗に終わる。残念。そしてなんやかんやで野薔薇ちゃんの乱闘も終わり試合が続行され、野薔薇ちゃんとパンダ先輩が塁に立つ。次の打者は真希先輩で大きなホームランが放たれる。

「きゃー!真希先輩かっこいー!琴葉を甲子園に連れてってー!!」
「行くのは東京か京都だろー」

隣の虎杖君からそのような小言が聞こえてくるがこれで三点入ったのは確実。なんて思っていたらまさかの事態が発生。箒にのって空を飛んでいた西宮先輩に球を取られてしまった。当然私達からブーイングが起きる。

「うわあぁああ!せっこ!!」
「おかか!」
「スポーツマンシップの風上にも置けないねっ!」
「さっきあんな事言った奴がよく言えるな。釘崎もどれー」

野薔薇ちゃん達が頑張ったけど私達の番は終わり二回表へと変わる。京都の打者は色んな意味で一番の危険人物の東堂先輩。まだ虎杖君をブラザーなんて呼び、ここでホームランを打ったら虎杖君を投手にさせるなんて言って、そして話が長い。話しまだ終わらないかなー。なんて思いながらぼーっと待っていたら真希先輩の豪速球が東堂先輩の顔面に直撃した。

「ぶっふーっ!」

突然のことだったので思わず吹き出してしまう。真希先輩ワザと東堂先輩の顔面に当てたんだろうな。流石の東堂先輩も不意打ちだった様で倒れてしまう。そんな光景を見て私は笑いが止まらないが真希先輩に「ナイッピー」と賞賛の言葉を送るとしよう。賞賛は東京と京都校の生徒からもありグランド中から「ナイッピー」と声が聞こえる。そして倒れた東堂先輩に駆け寄ったのも虎杖君一人だけで誰からも心配されるどろか喜ばれてる東堂先輩にに虎杖君は若干引き気味で、対して東堂先輩は頬が腫れて遠くを見ている目をしており…そんな状況に私は


「ぶっふふーっ!!」

まだ笑いが止まらなかった。


過程はアレだけど東堂先輩も抑える事ができた。二回裏の東京校の攻撃へ切り替わり、私と狗巻先輩は何とか塁にたち一回目の攻撃の時と同じ状況になる。そして次の打者は虎杖君。虎杖君はホームランを打ってくれるだろう。しかし大きく打ったところで空を飛んでいる西宮先輩が待ち構える。だけど私は信じている。虎杖君ならやってくれるって。


バットの打撃音が響き渡り野球ボールは大きく飛んで空へと向かう。
ほらねやっぱり思った通り。


交流会二日目の異例の野球大会は3対0で私達東京校が勝利した。



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