結局携帯を取り戻すことができず、更にファー帽子の男のあの態度にこの野郎っ!なんて思ったが何も起こさずに部屋を後にした。
しかしイライラを鎮めることが出来ず、ずどんずどんと足に力を入れて歩いいるとペンギンさんが表れた。
ペンギンさんは私の顔を見て一言

「寝起きとはまた違った意味で酷い顔になってるぞ」

その言葉を聞きとんでもない顔を見られたと羞恥心が生まれ、それと同時にイライラは少し収まる。ペンギンさんから顔を逸らし「お見苦しいものを見させてしまい失礼しました」と言う。

「何があったかはおおよそ想像できるが、ここまでだったとはな」

ペンギンさんがそう言うが予想ができたのならあの場に一緒にいてほしかった。と思ったのは言うまでもない

その後、ペンギンさんに連れられ一緒に船の掃除等をする。お昼になる前ぐらいだろうか掃除をしているとシャチさんが表れた。


「ペンギン、そろそろ出かけるみたいだぞ」

「もうそんな時間か」

「出かけるって何処に行くんですか?」

私がシャチさんに尋ねるとシャチさんは「街に行くみたいだ」と答えた。その言葉に、ファー帽子の男が出かけるならその間を見てあの部屋に行って私の荷物を取り戻し、此処から逃げられるのでは?なんて考えが頭の中を過った。
もしも船内に人がいてバレたら能力で気を失わせて…私、ヒーローなのに何でこんな強盗みたいな考えしているんだろう。いくら此処から逃げたいからってこんなこと考えるなんて…自己嫌悪が私を襲う。

逃げたい。けど人として…なんてことを頭の中でもんもんと考える。
…とりあえずファー帽子が出て行ってから色々と様子を見て考え直すとしよう

「出かけるんですね。ではいってらっしゃい」

シャチさんとペンギンさんに向かってそう言うと

「何言ってんだ。お前も行くんだよ」

「ですよねー」

人生そんなに上手くはいかない。



ファー帽子の男は私とシャチさんとペンギンさんと他にも数人の船員を連れて街へと出た。
しかし、正直に言いますと私街に出かけたくなんてなかったんです。だってこの街あまり良い思い出ないのだから。下手したらまた天竜人に出くわすかもしれないし、変ないざこざに巻き込まれて襲われるかもしれないし

現に今…

「怪僧が暴れている!!」


街の中で普通に戦いなんかしちゃってるし
そして今私の前で戦いを繰り広げている二人、普通ではないのだ
一人は顔全体を覆う仮面を被っている。視野が狭くなるような仮面を被っているのに、そんなこと気にしないかのように素早い身のこなしで攻撃をしている。
そしてもう一人、身長が2m以上あると思われる巨漢の男が、男と同じいやそれ以上かもしれない巨大な棍棒を振り回す。色々と突っ込みどころが満載なのだが、私が特に目を引くのは巨漢の男の背中なのだ。
何故背中かと言うと普通の人間にはあり得ないものが、そして巨漢の男に似合わないものが背中についているのだ。

白い羽が


何あれ、飾り?飾りだとしてもそれを背中に着ける意味が分からない。むさ苦しさの中に可愛らしいものを取り込もうなんていうお茶目な意味で着けていとか?だとしたら逆効果だよ!
それともまさか本物の羽?そうだとしたら何あの人、天使なの?
あの人が天使だったら子供が泣くわ。そして天使への夢が壊れる。むしろ夢に出てうなされるレベルだ。
巨漢の男の白い羽が視界に入る度に何とも言えない気持ちになる。この場から去りたいのだがファー帽子が二人の戦いを見ているものだから立ち去ることができない。


「暴れたきゃ“新世界”へ!!」

この戦いの決着がどうなるのか黙って見ていると第三者が二人の間に入る。
その第三者の男の言葉と行動で二人は戦うのをやめる。
ナイス!素肌にジャケットを羽織っている人。格好は個性的だけど
そう思っていたら素肌ジャケットの人はこっちに来て通り過ぎようとする。

「今いいところだったのに…
ドレーク屋……!!お前何人殺してきた?」

せっかく戦いが収まったのに何喧嘩をふっかけてる。皆も好戦的な笑みを浮かべるのをやめなさい。何こっち全員であちらに喧嘩売ってんの

ファー帽子の男と皆の行動に再び戦いが起こるのではと内心ハラハラしたが、喧嘩をふかっけられた素肌ジャケットの人は「そんなことお前に関係ない」と言い去って行った。


…大人だ
あの人大人だ!そして絶対まともな人だ。理由はないのだが今のあの人の行動を見ていてそう思う。出会うなら私あの人と出会いたかった。そしたら今の状況より絶対まともなものになっていたはず
そんなもしものことを考えながら素肌ジャケットの人が去って行った方向を見つめる。
そしたら、

「サヤ、ボケーっとしてっと置いてくぞー」

シャチさん達が移動をしていた。私は急いで彼等の後を追った。


昼食をとるということで私達は落ち着いた雰囲気のあるレストランへと入った。
皆お酒は飲んでいるが昼だからか少し控えている様に見える。私はファー帽子の男から離れた席で食事をとる。隣りにはシャチさんが座っている。

「街に入ったと思った途端3人の億越えに遭遇するとは思わなかったぜ」

「船長を入れたら4人だけどな」

「ははっ!ちげーねぇ!でもよ、殺戮武人がいたもんだからてっきりユースタスも近くにいると思ったんだがいなかったな」

「ユースタスがいたら億越えが5人!考えただけでもすっげえことになりそうだな!」

シャチさんは他の船員の人達とそんな会話をしている。私は気になる単語があったのでおずおずと彼等の会話の中に入り聞いてみる

「すみません、あの“億越え”って何ですか?」

「億越えってのはなー懸賞金の金額が億を超えているのを言うんだぜ!」

シャチさんが私に教えてくれるが、言葉通りの意味なのか。そういえば昨日、ファー帽子の男を襲おうとしていた内の一人が「懸賞金2億ベリー」と言っていたな

「億越えって凄いことなんですか?」

「当ったり前だろー!此処の時点で億越えなんてそうそういねぇよ!…だから俺達の船長はすげーってことなんだよ!」

シャチさんが後半の言葉を力強く言う。その言葉に続くかのように「船長最高!」「オレ達一生ついていきます」と船員の皆さんが言う。お酒あんまり飲んでいないと思ったがこの人達酔ってるだろ。
大騒ぎする前にファー帽子の男が「バカみてェに騒がな」と言うとシャチさん達は「すみませんでした!」と謝った。
そんな彼等のことはおいといて成る程、だから私達以外のお客と店員達がこちらの方をちらちらと見て様子を伺っていたのか。

「しかしよー、この島に億越えの海賊が集結してるってのは本当だったんだな」

「歩いてる途中話が聞こえたんだが、ついさっき麦わらも島に上陸したらしいぞ」

シャチさんが気を取り直して話を再開する。シャチさんの言葉に船員の一人がそう言うと周りが驚きだした。

「マジかよ!」

「麦わらがいるってことはロロノアもいるってことだろ。だったらこの島には11人も億越えがいるってことじゃねーか!」


懸賞金が1億以上の海賊が11人もいるとかただでさえ危険な島なのに更に危険度が上がったってことじゃないか。そんなことを私が思っている間もシャチさん達は会話を続ける。

「麦わらのルフィがどんな奴なのか俺一目でいいから見てみてーな」

「そりゃお前、あんなことする奴なんだからとんでもない男だろ」

シャチさん達の会話はその麦わらという人についてだった。“あんなこと”って一体その人は何をしたと言うのだろう。そんなことを思っていたらそれが顔に出ていたのかシャチさんに「何だサヤ、麦藁のことが気になるのか?」言われた。
教えてくれるのなら聞きたいものである。

「はい。どんなことをしたんですかその人は?」

「何だ麦わらのことを知らないのか!」

「サヤちゃん、ちゃんと新聞読んどいた方が良いぞー」

私がそう言うと周りの人は私が驚く。「新聞読め」と言われても私は昨日この世界に来たばかりなのだから見れるわけがないのに。この人達、私が違う世界から来たってこと忘れているか本当に信じていないんだな


「麦わらは海軍に喧嘩売ってて騒がれてはいたんだが、最近世界政府にまで喧嘩を売ってエニエスロビーをメチャクチャにしたもんだから今じゃ世界のお尋ね者だ」

「なるほどー」

シャチさんの説明はよく分からないのもだったが、分からない単語を今一つ一つ説明してもらうのは悪いのでとりあえず頷く。まあ、その麦わらのルフィって人がとんでもなく悪い人だというのはなんとなく分かった。だって政府に喧嘩売るなんて正気の沙汰じゃない。

「その麦わらのルフィって人も億越えなんですよね?いくらの懸賞金がかけられているんですか?」

「3億ベリーだよ」

「………えっ?」

何気なく聞いた質問なのだがとんでもない答えが返ってきた。3億って…ファー帽子の男より1億も高いじゃないか。えっ本当に?

それってファー帽子の男よりも危険ってことだよね?それに考えたファー帽子の男よりも懸賞金が上の人もまだいるかもしれない
やっぱりこの島、危険じゃないか。外に出ないであのまま船内の部屋に閉じこもっている方が安全なように思えてきた。



「おれ達は行くところがあるからお前らは好きにしろ。ただしバカなことはするなよ」

店から出るとファー帽子の男はそう言った。おれ達と言うのはファー帽子の男の傍にいるペンギンさんとシャチさん、そしてベポさんのことだろう。
他の皆は「それくらいおれ達でも分かってますよー」なんてことを口々にしている。
さて、私は船に戻るとしよう。戻る途中で変なことに出くわしたりしないよう注意しよう。そんなことを思いながら歩こうとしたらペンギンさんに肩を掴まれた。

「何処に行こうとしてる」

「えっ?好きにしろと言われたので…」

船に戻ることを言うか迷っていたらペンギンさんが一言

「お前も一緒に行くんだよ」


やはり人生そう上手くいかないものだ。


どうにも逆らえない

お題,揺らぎ

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