意味のない選択を迫られた私の答えは一つしかなかった。



この場で話をするのかと思ったが男達は私を連れて歩きだす。

「大人しくついてこいよ。でなきゃ、分かるな?」

歩き始めるときにそんな素晴らしい脅しを頂きました。逃げてもどうせ捕まってしまうのが落ちだ。大人しく私はただ、歩く。この場で話さないのなら飲食店で話をするのかと思ったが街とは反対の道を歩いているからそれも違うようだ。歩いている途中、先程のような武器を所持した男達が何人も襲ってきた。そのたびに白クマとつなぎの二人が撃退しているが。
そんないらないスリルを体感しながら歩いていたら海が見えた。島の端に来てしまったみたいだ。
目の前には広大な海。と言いたいところだが広大な海にあるものが浮かんでいる。

船だ。いや船と言うよりは潜水船と言った方がいいのだろうか。まあ船が海に浮かんでいる。そしてこの潜水船、ドクロのマークが大きく描かれている。よく見るとこのドクロ、彼等が着てる服に描かれてるドクロと同じだ。


船のドクロ、そう言えばつなぎの男達はファー帽子の男を“船長”って呼んでいる。おまけに懸賞金……ある単語が頭を過る。しかし過っただけで深く考えるのをやめる。もう色々と考えるのが疲れてしまった。と言うのが正直な理由だけど。

「突っ立ってないでさっさと歩け」

「あっ、はい…」

ファー帽子の男にそう言われ私は船へと足を進めた。
甲板を歩くと二人の男に遭遇した。こちらもつなぎを着て帽子をかぶっている。

「あれ船長、早いお戻りですね?」

「夜まで戻って来ないと思ってましたよー」

なんて会話をしていると船で見張りをしていたと思われる男達が私の存在に気付いた。
私を見ると二人は驚き、何故か納得したように頷く。

「船長まだ明るいのに早すぎっすよー」

「こんな早くから連れ込むなんて珍しいですね。しかも今までとは系統が違うし」



変な勘違いをするんじゃない。


男達の言葉に大声でそう言いたかったがここで私が余計なことを言って面倒なことになってしまう。それは避けたいので私は声には出さず眉間に皺を寄せて表情で訴える。
近くから笑い声が聞こえた。

笑うな


「馬鹿なこと言ってねェでお前らはちゃんと見張ってろ」

ファー帽子の男がそう言う。見張り番の男達は「はいっ、船長!」と大きな声で返事をする。そんな男達の声を聞きながら再び歩き出す。




「入れ」

船内を歩いていたら扉の前で立ち止まりファー帽子の男は一言、そう言った。言われた通り中に入るとそこは談話室と思われる部屋だった。

「お前等は廊下で待ってろ」

ファー帽子の男が二人と一匹に向かってそう言う。
えっ、一対一で話すの?私と、ファー帽子の男が?まさかの事態に不安が押し寄せる。

「キャプテン気をつけてね」

白クマがファー帽子の男にそう言うがどちらかというと私に言うべき言葉なのではないだろうか。

「あの状態なら何もしてこないだろ」

キャスケット帽子をかぶった男が白クマに向かって言う。キャスケット帽子の男の言う通りなのだが舐めれたような言い方に少しムッとした。
そうしている内に二人と一匹は部屋から出て行ってしまった。此処にいるのは私とファー帽子の男の二人っきり。凄くドキドキする。言っておくが恋ではない


「おれの問いに答えろ。それ以外のことは口にするな。分かったな」

気付けば男はソファーに座っていた。因みに言いますとこの部屋、談話室と思われるのでソファーとか椅子がある訳ですよ。男は今の言葉以外何も言ってこない。

私には立ったまま喋れというわけですね。分かります

ちくしょーなんて心の中で呟きながら「分かりました」と男に向かって返事をした。
そして男は私に問いかけを始めた。

「NEXTについて詳しく話せ」

「NEXTは45年前に世界で確認された、簡単に言えば超能力者です。でも全員がNEXTになれるわけではありません。限られた人にNEXTの能力は目覚めます。NEXTの能力者のことを“新人類”と呼ぶ人もいます」

「お前の能力は植物を生みだし操る能力か」

「はい」

「他にはどんな能力がある」

「私が植物を操るように氷や風、自然を操る能力者がいれば身体能力を上昇させる能力者もいます。他にも姿を変えることができる能力…個人個人で能力は違います。戦闘に特化された能力もあれば、戦闘に不向きな能力もある。NEXTの能力は千差万別です」

説明を一通り言い終える。

「世界に確認されたと言うがそんな話し聞いたことがねェ」

「NEXTを知らないと知り驚きました。…でも嘘は言っていません。本当に、世界に確認されているんです」

嘘なんて言っていない。そう思いを込めて男に言う。しかし男は何も言わない。
沈黙が部屋を覆う


「何処の海の出身だ」

私の言葉に対して何も言わず、次の問いかけしてきた。しかし男の問いに疑問を感じる。海の出身とは何だ。どう答えたらいいのだろう?

「えっと、日本は日本海と太平洋に囲まれた島です?」

しどろもどろになりながら、疑問形に言ってしまったが男の問いに何とか答える。しかしそんな私の答えに男は少し表情を険しくした。

「真面目に答えろ」

「えっ?」

「西の海(ウエストブルー)なのかGL(グランドライン)なのか新世界か、他の海か…どの海の出身なのか、答えろ」

男の言っている意味がますます分からない。そんな海の名称聞いたことがないのだから。

「そんな海、私知りません…私は日本という島国の出身です」

とまどいながらももう一度、正直に答える。

「ニホンなんて島聞いたことがねェ。それにお前が言った海の名前は存在しない」

男が言うその事実に頭が混乱しそうになる。私はその言葉を確かめようと男に近づく。

「本当に日本を知らないんですか!?じゃあアメリカは?中国は!?」

他の国なら知っているのでは、そんな思いで私は男に問いかける。

「言ったよな、“おれの問いかけ以外は口にするな”と」

男の声とトーンが低くなる。その声に私は恐怖を感じ身体を震わせる。そして「ごめんなさい」と反射的に男に謝罪の言葉を口にした。
でも今の男の様子から見るとアメリカも中国も知らないということが感じ取ることができた。


「次の問いかけだ。何故お前はシャボンディ諸島にいる」

「…この能力を使って犯罪者を捕まえる仕事を私はしています。今日も犯罪者を捕まえようとしていました。相手は恐らく瞬間移動の能力を持っていました。その能力者に返り討ちにあい、気付いたら此処にいたんです」

男にそう伝えている間、ある考えが私を過る。それは此処に来た時にふっと思ったこと


‐もしかして私、別の世界に飛ばされていしまったとか?-

あの時はそんな訳ないでしょー。なんて笑っていたが、今の、この状況じゃ笑い話ではなくなってきている。
本当に別の世界、異世界に来てしまったというのなら帰るすべなんてないじゃないか。
「おい」

男が私に呼び掛ける。又何か問いかけでもするのだろうか。と思い男の言葉を待ってみる。

「今考えていたことを言ってみろ」

その言葉に言うか、言わないか躊躇する。だってこんなこと言ったって信じるわけないじゃない。
そんな私の姿を見て男はもう一度、言う。

「言ったよな、おれの問いには答えろと」

こうなったら言うしかない。深く深呼吸をし、口を開く

「これは私の推測なのですが、私は…別の世界から此処に飛ばされてしまったのでは、ないかと」

私の言葉を聞いた男は再び眉間に皺を寄せる。そして一言


「ふざけるな」


この瞬間、此処に来てから溜まっていた私の“何か”がプツンと切れた。


「ふざけるな、ですか。まあ確かにそうですよね。“異世界から来ましたー”なんて普通は信じませんよね。私だってそんなこと言われたら何言ってんだって思いますもん」

喋るのを止めなきゃ。そう思っても口を閉ざすことができない。私の今までの思いが口から言葉となって口から溢れ出す。

「でも、此処に来てから私の常識とはかけ離れたことばかり。私の知らない言葉ばかり。
天竜人?西の海?GL?世界貴族?悪魔の実?そんな言葉、私の世界には存在しません。全く知りませんでしたよ。
日本やアメリカを知らない?こっちだってふざけるな状態ですよ。
貴方は先程から真面目に答えろなんて言いますが、今まで言って来た全てが私の真面目な答え何です。これでダメなら教えてください。貴方はどんなことを言ったら満足するんですか?貴方は私が何処から来たと答えたらいいんですか?

教えてください」


ここで私は喋るのを止める。というか早口で喋りすぎて呼吸が少し苦しいので息を整える。考えないで喋ったから支離滅裂なことを言ったと思う。今まで溜まりに溜まっていたことを言えたからすっきりしたが、それと同時に後悔が生まれる。こんなこと言って私は男の怒りに触れてしまったであろう。
恐る恐る男の様子を伺うと、男はソファーから立ち上がる。

あっ、私殺されるかも

なんて思っていたら男は私に向かって一言


「外に出ろ」

「へっ?」

訳が分からない。どうしてそうなる。男の意図が理解できずにいたら男は部屋から出て行こうとする。とりあえず私は男の後を追うことにした。
男は部屋から出ると部屋の前で待機していた白クマに向かって「ベポついて来い」と言う。白クマは返事をして男の後ろ、私の隣りを歩く。

「今から何するの?」

白クマが私に尋ねてきた。むしろこっちが何をするのか聞きたい。私は分からないという意味を込めて首を横に振った。





甲板に出ると白クマと男は私から離れた場所に行き何か話している。


「えっ、そんなことしていいの!?」

白クマが何が驚いている声が聞こえてきた。何かあったのかと思い白クマ達の方を見ると、白クマが私の方へと向かって歩いてきた。その表情は戸惑いの色が見える。
白クマが私の前で立ち止まる。そして私に向かって


「ごめんね」


謝罪の言葉を口にしたと思ったら、私が手に持っていたバックを取り上げ男の方へと投げた。

「えっ!?ちょっと何してんの!?」

バックを取り返そうと男の方へ走ろうとする。しかし今度は白クマが私の体を持ち上げ、走ることができない。

「ねえっ!どういうつもりなの!」

一体何がしたいんだ。白クマに聞いてみても「ごめんね」としか言わない。暴れて白クマから離れようとするが動物と人間の力の差なぞ歴然としている。私が暴れても白クマはピクリともせず歩いている。
こうなったらNEXTを使うか。そんなことを思い始めた時、白クマの手が私から離れた。
いや離れたというより、私を放り投げた。

「……えっ?」

落下している感覚が私を襲う。そして次にきたのは水に体がぶつかる痛み。飛び込み台からプールに飛び込む感覚であった。
目が思うように開けられない。口と鼻の中に海水が入り呼吸ができない。苦しさと溺れることへの恐怖が私を襲う。必死になって手と足を動かしやっとの思いで海面から顔を出すことができ空気を吸い込むことができた。
海水が目に入ったせいで視界がはっきりしないが、すぐ近くに陸地が見えた。すぐに能力を発動し陸地から木を生成する。その木を私のとこをまで移動させ私は木に捕まる。そして再び陸地の方へと木を移動させた。

溺死という最悪の事態は逃れることができた。

「ゴホッ…ゴホッ!」

地面に座り込み、咳き込んでいると。気付きと私の近くに立っている人がいる。顔を見上げるとファー帽子の男であった。「どういうつもりなの!?」

白クマに私を海に向かって投げ込むように命令したのは間違いなくこの男の仕業だ。怒りを感じながら男に向かってできる限りの大声で男を問い詰めようとするが、そんな私なんてどこ吹く風とでもいうかのような態度だ。その男の態度がますます私の怒りを強める。

「答えてよ!」

「本当に悪魔の実の能力者じゃないか念の為確かめただけだ。能力に関して嘘は言ってなかったようだな」

「…はっ?」

何ということだ。あれだけ私が必死になって伝えたのに男は嘘をついているかもと思っていたらしい。しかしそれが海へ放り込むのとどういう関係があるのだというんだ。

「それと、お前の持ち物を見させてもらった。見たことがない通貨に文字に機械、まあ少しはその“異世界から来た”って話し信じてやる」

「……」

こんな状況で信じたと言われても嬉しいわけあるか。男への怒りはおさまるどころか男が喋るたびに上昇する。しかし次の男の言葉は私の怒りは止まる。というより私の思考を止めるようなことを言ってきた。

「お前を俺の船員(クルー)にしてやる」

「…………えっ?」

「お前の能力、おれが活かしてやる。ありがたく思え」

「………えっ?」


思考が停止している私のことなんて目もくれずに「悪魔の実の能力者と同等の能力、海にも影響されない。そんな存在見過ごすわけないだろ」なんいてことを男は言っている。
やっと男の言っている意味を理解したのと同時に血の気が引くのを感じた。

私の勘が正しければこの男は海賊だ。ヒーローの私に海賊になれと?

絶対嫌だ。

というか私はこの男から一刻も早く離れたいのに、男の部下になれと?

絶対に嫌だ。


「いっ!」

嫌です!と男に向かって拒否の言葉を言おうとしたが、男が私の目の前に座り込み私の顎を掴んだため言うことができなくなった。



「嫌だと言ってお前はどうするつもりだ」

「お前に帰る場所はない。戻る場所もない。そうだろ」

「お前みたいな女が此処で上手く生きられると思っているのか」

「捕まって奴隷にされるのが落ちだ」


男の言葉が私の胸に深く突き刺さる。

「言っておくがお前に拒否権はない。それでも嫌だと言うのなら逃げられない様にしてやる」


その言葉が、罰を与える言い方のように感じられた。


さあ終焉の始まりです

お題,コランダム

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