「私ね、告白されたの」 夜空が美しい日であった。 己の命を対価に輝き続ける星たちを背景に、友人はその星たちにも負けないほどの綺麗な笑顔を浮かべる。 おそらく私がどんなに着飾ろうとも今の(長き想いが叶った)彼女には足下にも及ばないのだろう。 『良かったじゃんか、ずっと不破のことが好きだったんでしょ?』 へらり、 いつもの気の抜けた笑顔を造って彼女の肩を軽く叩く。 飴玉のようにぽろぽろ溢れ落ちる言葉たちはどれも彼女の幸せを喜ぶもので。 なんだ私って女優の素質あるんじゃない?誰かお偉いさんの目に留まって映画デビューも夢じゃないかもよ。 そうしたらきらびやかな芸能界で、彼よりも素敵な人が見つかるかもしれないのに。 『2人ならお似合いのカップルだと思うよ、私は』 「ふふっ、ありがとう」 頬を熟れた林檎のように染め、目を細めて愛らしく笑う彼女は世界で一番幸せな女性なのだろう。 羨まして、疎ましくて、憎らしい。 だけれど彼女を完全に恨むことができないのは私が彼女も大切に思っているからだ。 大切な友人と大好きな彼、そんな2人が互いを愛しい存在と認識したなら私はそれを喜ぶべきだろうに。 好きなもの+好きなもの=嬉しい、という単純な式に当てはまらないのが人間の面倒な部分であり神秘的な部分なのかもしれない。 今の私からしてみたら間違いなく面倒な部分なのだが。 『返事はしたの?』 「ううん、 さっき電話でされて返事はすぐ近くの公園でしてほしいって」 『あはは!さすがは中在家先輩の後輩だね、やることがロマンチック』 「そうゆう所も好きなんだけどね」 『はいはい、のろける前に返事をしてきなさい』 彼女の気持ちを後押しするように背中を数回たたけば彼女は「せかさないでよっ」と困ったように笑った。 ああ敵わないなあ、と心の隅で思いながら私も口元を上げろという脳の命令のもと笑みを浮かべる。 夜空に吸い込まれていく星のような彼女に、私は音にすらならなかった嗚咽と共に別れを告げた。 (おめでとうベガ) (さようならアルタイル) 追記 2013/01/08 22:10 |