黒バス、火神
  


小学生の頃は高校生なんてものは屋上とかでお弁当をひらいて楽しく昼食をとるのだと思っていた。

しかしながら実際は高校生であっても屋上に生徒が入ることは許されず、現実は教室で昼休みを過ごしている。


まあ一つだけ学生の華やかさを上げるとしたら昼食をとる相手が女友達ではなく恋人であるという事だ。



「お前相変わらず食う量が少なくねぇか?」

『火神が多いんだよ』



その彼氏はまるで食料を頬ぶくろに溜め込むリスさながらであり、男相手に可愛いと思っている自分がいる。

彼の机に視線を移せば先程の可愛さもぶっ飛ぶくらいに高く積まれたパン達。

その量を基準としてしまえば私のお弁当が少なくも見えてしまうのも当然な訳で。


あくまで女子高生が使いそうな普通のサイズのお弁当に詰めこまれたおかずの一つ、玉子焼きをつつきながらぼんやりと火神を見る。



「んだよ」



頬にあった物を全て胃に押し込み、私を怪訝そうに見つめる彼はとても端整な顔立ちで。

これで帰国子女でバスケ部のエース的存在で男前な性分(めっちゃ怖いの駄目だけど、ホラーとか私の後ろに隠れるけど!)なのだから、こんな私と付き合ってしまって良いのだろうか。


もしかしたら学生の青春として誰でも良いから付き合っとこうと思ったから私の告白も承諾してくれたのかもしれない。

それを言ったら人が良い彼は悲しそうな目を宿しながら私を叱るだろう。

変に優しくするなら突き放してほしい、無理に私と付き合わないでほしいよ、何て言葉をぶつける事は私に出来るはずがない。



『ねぇ、火神』

「あ?

さっきから何だよ、ジロジロ見たりして」



当初発されようとした息は音になることを許されず呑み込まれた。

恐怖や不安に畏怖、様々な負の感情が混ざった息を呑み込んだ喉が痙攣をおこしたみたく震える。


その状態から持ち直すまでおよそ三秒。

大丈夫、大丈夫だ、不自然ではないはずだ、恐らく問題ない。



『今日一緒に帰ろう?』

「いっつも一緒に帰ってんだろうが」

『いや、一応ね』



苦笑しながら私の頭を撫でる大きくて武骨な手も、彼の同情によるものだと考えてしまうと喉に熱いものが広がっていく。


嗚呼、何を考えているんだ。

こんな私と一緒にご飯食べたり帰ったりしてくれているんだ、それだけで私は幸せ者なのだからこれ以上ワガママになってはいけない。

そう自分に言い聞かせながら形作った笑顔は、はたして自然であったのだろうか。



(私のこと好き?、)

(なんて聞いたら負けてしまう気がして)




近頃の黒バス旋風が怖すぎて隠れてたけど、やっぱし男前が多いっすね

主→→←←←←←火とかに悶える今日この頃
不器用同士の恋愛がウマイ



2012/08/29 16:23

|