北欧と主
  



支配とは難しいものだともしかしたら誰かが言ったかもしれない、しれないと言うのは私がそう思っただけで実際にその台詞を言った者を見たことがないからだ。

端から見れば哲学者の様な台詞を頭に留め、ゆらゆらと蛇の様に天井に昇る湯気を虚ろげに映した。

その湯気を生み出したココアを啜れば口内に広がるのは歯が融けそうな程の甘みと温もり。


ココアのお陰で内側から暖まった体と目の前に佇む暖炉が外側から私を熱気で包む事によって私の体は芯からポカポカだ。

それとは逆に窓ガラス越しに広がる景色は猛吹雪であり、誰が見ても外は極寒の地である事は明解だ。


それはさておき、小腹が空いたのでお菓子が余っていたかどうかを頭の隅で思い浮かべた次の瞬間、僅かであったが何かが割れる音が聞こえた。


嗚呼、また彼は癇癪をおこしているんだね、面倒な。

そんな事をしていれば、またお前から独立する国(もの)は増えていくだけだと言うのに、学習能力のない懲りない奴だね。

アイツに付き合わされてるアイスとノルも可哀想だね、さっさと切り捨ててしまえば良いものを。


彼の前で言ったら怒声以上の者を浴びさせられそうな言葉を脳内で並べながら、私はチョコやクッキー等の定番なお菓子達と今は此処にいない彼らの所のお菓子などをコートのポケットに詰め込んだ。

それはまるでおもちゃ箱の様にカラフルで煌めいていて、私のポケットは夢が詰まった素晴らしいポケットなのかもしれない、とまた変な事を思い浮かべた。


夢で一杯になったポケットから一粒飴を取りだし、可愛らしいパステル調の包み紙を破くと顔を出すのは彼の髪と似た色を持つ飴玉だった。

それを口に含むとミルクが混ざったココアとはまた違う優しい甘みが広がり、彼もこの飴の様に優しく寛大であったらこんな事にはならなかったのかもしれない、と思いながら私は外の世界に足を踏み入れた。



(此処に私は独立を宣言する)




2012/02/03 00:16

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