2012/10/29 17:44

(最遊記 三蔵)

見守らせて、行く末を。
力無いわたしは、そんな事くらいしか出来ないけれど。
貴方達の事を思って流した涙は本物だから。


「金禅...」


貴方を好いた気持ちは、本物だから。
もう、貴方は覚えてないでしょうけれど。



(魂は覚えているって)
2012/07/11 21:57
(銀魂 銀時)

毎回毎回、大きな怪我をして帰ってくる。職業柄、手当ては慣れたものだけど、いつも息を呑んでしまう。危ない事ばかり首を突っ込んで、でもかっこつけてそれは誰にも言わないで一人で済ませようとして、一人悪者を背負い込んで。いつもいつも、後からそれを聞く私の心臓は嫌な音を立てるの。

「馬鹿ねぇ...」

白い包帯に滲む血の色も

「言わなきゃ、わからないじゃない」

頬に残る擦り傷も
跳ね回る銀色の髪も
見つめる赤い瞳も

「ほんと、馬鹿ね」

あぁ、愛しい。



−−−−−−−−−−
本誌の銀さん男前すぎる

2012/06/17 18:56

(鳴門 スレナルト)

「あ、起きた」

「...なんでいるんだ?」

「片付け」

「あぁ」


そう言って(多分)洗濯カゴに散らばっている服を入れる。その洗濯カゴも恐らく持ってきたのだろうが、今さらなので突っ込む事もしないでテーブルを見ると、綺麗に盛り付けられた飯がラップに覆われている。


「あ、ご飯もあるからあっためてねー」


洗濯機の回る音と一緒に聞こえてきた声に口元が緩んだ。
いつもそうだ。何日かおきに顔を出して家事をこなしていく。いつからかなんて、もうすぐに出てこないくらい日常になったそれだが未だに時折なんだかむず痒いような気分にさせる。


「お前は食ったのか?」

「あー...。まだかなぁ」

「じゃ、一緒に食うか」


そう言えば嬉しそうに笑った。何がそんなに嬉しいのか。俺もいつもありがとうなんて素直に言えるような性格じゃないから、そんな気持ちを込めてぽんぽんと頭を撫でて踵を返すと、後ろからくすくす笑う声が聞こえた。


(こんな日がずっと続けば良い)

2012/06/14 11:35

(鳴門 ミナトとクシナ)

最初に目に付いたのは、その金色。
次は鮮やかな青。
柔らかな物腰は女の私よりも様になっていて、優しい笑みはどうしようもなく私を掻き乱した。

幼い頃に移り住んだ里。
目的もまだ、理解し切れてなかった頃に、住み慣れた里を離れるのは、子供心に寂しかったのは覚えてる。

それが、今日。


「綺麗な、赤い髪だ」


穏やかな微笑みが私に向けられていて、


「とても、似合ってるね」


もう、これ以上ないくらいに、心臓が早鐘を打つ。


「波風、ミナト...」




(きっかけは些細な事)
(でもそれは確実に、)

2012/04/21 22:01

(銀魂 銀時)

最近うちのスナックの上に住人が出来た。お登勢さんが何処からともなく連れて来たのだ。

まだちゃんと見た事は無いけれど、月の出た夜、お登勢さんに連れられて来た彼は空に浮かぶ月のような銀色が印象的な、どこか暗い表情の人だった。

そして今、私はその彼の家の前に居る。お登勢さんに旦那さんの昔の着物を渡してくるように言われたからだ。一つ息を吸って、戸を叩く。ごめんください。思ったよりも声が出なかった。


「はいはいー」


たっぷりの静けさが当たりを包んだあと、気だるそうな声が中から聞こえて戸が横に開いた。


「...あ、あの、お登勢さんから貴方にって」

「あー、わざわざ悪ぃな」


手元を見て納得したのか、彼は頭を掻いたあとに私の手からそれを取った。
お暇しますとお辞儀をした時に部屋の中が少し見えた。
昼間にしてはやけに暗くて明かりの届いてない部屋には音一つ無かった。少し見上げると、彼はそれがここに来てから普通なのかなんともないような表情で私を見下ろしていた。


「あ、の」

「ん?」

「私、下のスナックで働いてるんです。開いてれば夜でも明るいし、お客さんの話し声も聞こえます。だから...、あの、」


俯いて声が小さくなった。ただ、なんとなく彼が一人この静かで暗い家で何かを考え続けているとしたら、それはなんだかとても寂しく思いてきて、でもそこまで考えて出過ぎたことだったかもしれないと思ったら段々と居た堪れなくなってしまった。


「いつ居る?」

「えっと...あ、明日!明日居ます!」


じゃあ、明日にでも行くわ。薄く笑って頭を撫でてくれた。嬉しくて大きく頷き、子供のようにまた明日なんて言って戸を閉めた。

今日、初めて上の住人さんと話をした。
月のような銀色と、赤い瞳が印象的な男の人は、少し寂しそうな所に今は居た。でも、多分それは寂しい事とわかっているから、誰かの温かさを知ってるから少し手を伸ばしたら応えてくれる人。
仲良くなれたら良い。そう思うと自然と頬が緩んだ。


「あ、うさぎだ」


上の住人は多分うさぎみたいな人だ。外見も。内面も。だから嫌ってほど構ってやろう。拒絶は恐らくしないし、無視もしない。



(その数年後、うさぎは実は狼だったと知ることになる)

ーーーーーーーーーー
最初は必要以上喋らない気がした。だけ。


2011/09/24 12:23

(モノノ怪 薬売り)

鮮やかな朱色の本殿。揺れてからからと音を鳴らす絵馬。吹き抜けた風と一緒に、髪が流れ、葉の擦れる音が耳に届く。強い風に目を瞑り、乱暴に撫でられた髪を押さえて、風が収まった頃、目を開ければ、



「おや、」



視界に入ったのは、朱色に反発するような浅葱色の着物。色素の薄い髪に、整った顔立ちを更に際だ出せるような隈取りの化粧。



その異質な雰囲気に、思わず、息を飲んだ。




2011/09/18 07:57

(モノノ怪 薬売り)

下がり眉に不安に揺れる瞳。正座した膝の上で固く握られた手。何処と無く、小さく揺れる体。ふむ。と薬売りは目の前に座る少女を見つめる。見られた事により、明らかに肩を震わせる少女の頭に手を伸ばせば、怯えた様に目を閉じる。


「そんなに、怯えなくとも」

「!」

「取って食ったりは、しません よ」


頭を撫でて、髪をすいてやれば、明らかに息を吐いて、力の籠った肩が下がる。
よし、よし。手触りの良いその髪を撫でた。




(トリップ直後、とか…?)


2011/08/16 08:40
(最遊記 外伝最後あたり)

人からあいつらは非情だから、と云われようと、お前は浅はかだ、と罵られようと、彼等の在り方が堪らなく好きで、前を見据える瞳が愛しかった。物事に動じず、他人に流されず、自分の決めた道を進む彼等に、憧れた。
私は今、そんな彼等に恥じない姿でいるだろうか。背筋を伸ばし、迷い無い気持ちで前を見ているだろうか。この状況だって良くするのも、悪くするのも、切り開くのだって、自分の力だ。


だから、もし次に出会えればまた、他愛の無い話に花を咲かせて酒を酌み交わそう。


2011/07/02 21:48
(最遊記 三蔵)


「なんだこれは」

「灰皿」

「見りゃわかる」

「他に何が?」

「こんな灰皿いらん」

「だって三蔵、ヘビースモーカーだから大きめの灰皿じゃないとすぐに一杯になっちゃうじゃん」

「捨てりゃいいだろ」

「三蔵がそうするならいいけど?」

「チッ」

「(勝った…!)」


後日談


「おや?」

「かっわいーの使ってんじゃないの、三蔵サマ」

「うるせぇ。勝手に置いてったんだ」

「あ、酷い。ちゃんと断りは入れたじゃない」

「許可した覚えはねぇ」

「大人気ないですねぇ、灰皿くらいで。それに僕は良いと思いますよ、



カエルの灰皿」



2011/05/17 20:56
(薄桜鬼 沖田)

この人といつまでも共に在れたのなら、それほどまでに幸福な事は無い。それが出来ないなら、共に歩み、共に老い、そして共に朽ちる。そんな事が出来れば、幸せなのに、と。



目の前で、敷かれた布団に青白い顔で眠る彼を見て、そんな、途方も無いような事を想った。


「沖田さん…」


冷えた頬、浅い呼吸、生気の感じられない顔色は隠していた不安を増長させる。今私が、この部屋を出たら、もう二度と彼の瞳が開く事は無いんじゃないか。いいや、それよりもこの浅い呼吸が、段々と、ゆっくりと、けれど確実に少なくなり、やがて僅かに上下している胸元が動かなくなるのではないか。

きりの無い考えばかりが頭の中を延々と回る。まるでそれ以外の物事が考えられなくなったかのように。


「沖田さん、」


彼を呼ぶ声は、震えていた。

どうか、どうか。どうか、彼が一刻でも長く、新撰組と、彼等と心が共に在れるように、祈るよ。





(この守られるだけの命を分け与えられるのなら、今すぐにでも渡すのに)
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