2010/06/05 豆腐そのA
名前はいつも通りアキで



久々知先輩は大の豆腐好きで有名だ。それはこの学園の誰もが知っている。
そして私はその久々知先輩と付き合っている。
豆腐は好きでも嫌いでもないけど…久々知先輩はどう思ってるんだろう。やっぱり、私も豆腐、好きになった方が、いいのかな。どうなのかな。


「くくちせんぱい」
「ん、何?」
「くくちせんぱいは、私が豆腐を嫌いだと言ったらどうしますか?」
「嫌いなの?」
「違います。でも、別段好きという訳でもありません」
「そうか」
「くくちせんぱい、くくちせんぱいは私が豆腐を好きだと言ったら嬉しいですか?好きになって欲しいですか」
「どっちでもいいよ」
「どうしてですか?」
「俺は豆腐の好き嫌いでアキを好きになった訳じゃないから。そりゃ、好きな物が同じなら嬉しいけど、それは豆腐以外でも言えることだし」


久々知先輩はそう言って、ふわりと私の頭を撫でた。私よりも少しおっきな手。柔らかであたたかい。
凄く安心する。


「くくちせんぱい、いいんですか?」
「何が?」
「私、この先も豆腐を好きにならないかもしれません」
「構わないよ。それよりもっと別の物で好きな気持ちを共有しよう」
「親友のちーちゃんの実家は、豆腐屋なんですけど」
「それは素晴らしいことだね。ちーちゃんを大事にしてあげて」
「はい。でも、あの、私は……」


言葉に詰まって困った表情で久々知先輩を見上げると、久々知先輩はふっと口元を緩めて、穏やかに笑った。
あぁ、全部見透かされているなって、わかった。


「心配しなくていいよ。俺が好きなのはアキなんだから」
「………」
「豆腐が好きじゃなくても、いつか好きになってくれても、アキを好きな気持ちは変わらない。アキが俺を嫌いにならない限りは」
「くくちせんぱいって…」
「うん?」

「一途なんですね」


私が真面目な顔をしてそう言ったら、久々知先輩はキョトンとして、すぐにまた笑った。


「何せ、豆腐だけでもう10年は好きだからね」



※※※※※※※
偽久々知め…豆腐嫌いなんて言ったら絶対容赦しないくせに←
これもmixiから転載
これで最後です!(^O^)


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