03

「もしかしてお客さん!? ちょっと待ってえ!」

 驚いたような叫び声とパタパタと走る足音でぱちりと目が覚めた。どうやらウトウトと微睡んでいたらしく、書きかけのノートにはミミズの這うような字が量産されていた。恐らく栞であろう先程の声や様子も気になるし、切り替えるためにも少し休憩でもしようか。立ち上がり自室からでると、どうやら誰かが来たようで知らない声がいくつか聞こえてくる。

「あ、迅さんおかえりなさい。誰か来たの?」
「ただいま、前に言ってた後輩たちだよ」

 後輩、という言葉を聞くとにんまりと頬が緩んだ。どうやらお客様ではなく、迅さん曰く仲間になるであろう子たちだったようだ。話の聞こえる方へ迅さんと向かうと、栞が玉狛支部のことやA級の話をしている最中の様子。ノックをして「失礼しまーす」と中に入ると、3対のまあるい瞳が此方を見つめた。

「あ、名前。勉強はいいの?」
「とりあえず小休憩中、あと珍しくお客さんが来たって言うから見に来ちゃった」
「なるほどね。あ、三人共、このちょっとぽやぽやしてるかわいこちゃんは苗字名前。玉狛支部に所属してる子だよ」
「どうも、ぽやぽやしてるかわいこちゃんです」
「ぽや……?」

 いや誰も突っ込まないんかい! という眼鏡の男の子からの視線をやんわりとスルーしながら、それぞれに名前を聞いて軽く頭を下げる。三雲修くん、空閑遊真くん、雨取千佳ちゃん。みんな中学生らしい、若いなあ。今日は泊まっていくらしく、部屋の案内にぞろぞろと居住スペースに行くと迅さんの部屋の積み上がった段ボールにドン引きしていた。そりゃそうだよね。

「どうだ名前、将来有望そうだろ」
「うん、とっても。さすが迅さんのお墨付き、いい子たちだね」
「だろ? ……メガネくんたちのこと、宜しくな」

 ちゃんと鍛え上げてくれよー、と間延びした声でまたぐしゃりと頭を撫でられる。迅さんの視た未来では、彼らはどんなふうに映っているのか。そしてどう成長していくのか。近い将来に楽しみを抱くと同時に、また迅さん暗躍するつもりだなと察して、すぐ近くの横腹を少しだけつねってやった。換装体の空のような青色が鮮やかに舞う姿は好きだけれど、少しだけ、恨めしい。

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