近くのコンビニに晩飯を買いに行く。昨日は丼物にしたから今日は麺類、パスタか蕎麦かうどんか。日本のコンビニには色々なものが揃っているし、しかも年中無休で24時間営業のところが多い。俺が常連になっているこの店も24時間営業だ。

「らっしゃーせー」

店員のやる気のない挨拶を聞き流しつつ目当てのコーナーへ慣れた足取りで向かうとそこには見慣れない姿が。

「名前?」
「あれ、獄寺だ。やほ」
「おめーなんでここに?」
「なんでって、夜ご飯を買いにだけど」
「実家暮らしだったよな?」
「今日はお母さん緊急出動なの。ご飯用意していく暇もなく出て行っちゃって。だから自分で用意しなきゃってなったんだけど…いざ作ろうと思ったらあんまり材料なくてさ」

名前を呼ぶと名前は白いワンピースの裾をひらりと揺らしながら振り返った。向日葵柄のその服は、この前行った向日葵畑を彷彿とさせる。少し長めの丈が名前らしい。今が昼間だったならこの前買っていた麦わら帽子でも似合うんじゃないだろうか。
この時間にあまり、いやほぼ見かけることの無い名前。夕食を買いに来たらしいが、名前の持っているカゴの中にはサラダとおにぎりがひとつ。いや少なすぎる、こんな少食じゃないだろこいつ。

「お前、そんなに少食か…?」
「もっと大食いに見えるみたいな言い方しないでよ!失礼だな!」
「うるせ、でも実際少なすぎだろ」
「大丈夫、家に昨日の残りの肉じゃががあるから。あ、そうだ。獄寺も食べてく?今日もどーせ自炊しないんだろうし」
「は?俺だって料理くらい…出来ないこともねえし」
「まあまあいいじゃん、残り結構沢山あるし。ここで会ったのも何かの縁〜、サラダとおにぎりだけ買って行こ!」

会計にほぼ強制的に連れていかれる。終わったと同時に手を引かれ、店員のやる気のなさそうな挨拶を背に受けながらコンビニの外へ。どうやらこのまま名前の家に行くことは決定らしい。

「今日両親ともいねーのか?」
「いないよー、お父さんは昨日から出張中だから」
「あっそ、じゃあくつろいでいってやるよ」
「お、じゃあお菓子でも開けちゃいますか!」
「太るぞ」
「うるせーやい、獄寺も食べたら同罪だから」
「俺は普段10代目について沢山動いてるからいいんだよ」
「私も動いてるじゃんそれ」
「俺の方が動いてるっつーの」

きっと、普段両親があまり家にいないこいつは、誰かと食事をとることが好きなのだろうと思う。10代目や山本の家に世話になる時には大抵こいつもいるし、たまに俺もこうやって晩飯に誘われるから。だから俺は、寂しがり屋なこいつの傍に、時々一緒にいてやるのだ。

「コーラも付けろよ」
「あいあいさー!」
「あとあんまこの時間に出かけんな。夏は日が長ぇけど21時頃にはもう暗くなる」
「なに、心配してくれてるの?」
「…おめえも一応女だからな」
「あはは、ありがとね」
「もし出かけんなら一応声かけろ。コンビニくらいなら付き合ってやっから」
「やさし!どうしたの獄寺、熱でもある?」
「ねえよ!」

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