りんかんにさけをあたためて
「エアリス!」
教会に響く高い声に、エアリスは振り向く。今日もせっせと花の手入れをする彼女は、イリスの声が先日よりも明るくなっていることに笑みをこぼす。きっと、彼に何を贈るのか決まったのだろう。
「エアリス! 見て見て!」
そう言って背負っていたリュックサックをおろし、中からあるものを取り出す。
「わあ、イリス、すごい! これ、どうしたの?」
「これはね、作ったの」
照れくさそうに、しかし自信ありげに笑う彼女の頭を、エアリスは一度そっと撫でた。
「イリスの手作りなの? ますますすごい!」
「うん、だいぶ時間かかっちゃったんだけどね……。昨日やっと出来たんだよ!」
手に持っているものを見ながら、嬉しそうに語るイリスは、それを日の光にかざして、色々な角度から眺めている。
「それでね、エアリスにもお願いがあるんだけど……」
「うん、なあに?」
「よし、これで本当に完成した!」
「おめでとう! よく、頑張ったね」
完成したそれを、イリスは大事そうにリュックサックにしまった。あとは、これを彼の誕生日に渡すだけだ。
「ヴィンセント、きっと喜んでくれるよ」
「うん、そうだといいな……」
イリスは少し不安げに言うと、リュックサックを眺めた。
「なんか、ここへきて結局、私の自己満足なんじゃないかな、って気がしてきちゃって」
悲しげに笑うと、そのまま床に視線を落とした。彼に渡すことを考えると、途端に不安に駆られてしまう。
「絶対、大丈夫! イリス、頑張ったんだもん」
「うん、そうだよね!」
少し無理に笑ったイリスに、エアリスは更に続ける。
「もう、自信持って! ヴィンセントが喜ばない訳ないでしょ! もしそんなことになったら、ティファとユフィ連れて、怒鳴り込んでやるんだから!」
シュッシュッ、と言いながらユフィの真似をするエアリスに、イリスは思わず笑みをこぼした。それにつられて、エアリスも笑い出す。
「だから、ね、大丈夫」
「ありがとう」
そうは言ったが、まだ若干の不安は残っていた。何しろ初めての誕生日なのだ。彼の喜んだ顔が見たいのは勿論だが、気を遣って無理に喜んでもらいたくはない。これも自己満足と言われたらそれまでなのだろうが、やはり、彼の純粋に喜んだ顔が見たい。
「頑張ってくる!」
「うん!」
こうして、完成したそれを持ったイリスは、再びニブルヘイムへと帰って行った。
[ 201/340 ]
[prev] [next]
list bkm