≫ 東 春秋
東春秋は今回の出張組の中で最も若い。ゆえに、雑用その他は必然的に東に回ってくる。
唯我の御曹司の誘拐事件の解決によって、恩を売ろう作戦!という何とも雑なプランニング。迅からの情報を元にいくつかのホテル、建物を絞り込んだ三人はそれぞれが手分けをして捜索を続けている。
念のためにとトリガーも持ってはいるが、使用するのはあくまでも最悪の事態の時だけだ。三門市の外部でのトリガー使用が不可能、ということになっているのだ。未知との世界と遭遇したことにより三門市近隣には特殊なエネルギーが満ちており、うんぬん。
勿論、外務営業部長並びに広報室長によって流されたデマである。兵器転用を防ぐための措置だ。
『こちら東、エッジオブオーシャンのカジノタワーが見える建物の一つを確認してきます』
本来なら個別で動くのは愚の骨頂だ。だが迅の未来視によって想定される地域は広すぎた。
『やれやれ、こういうのは私の仕事じゃないんですが』と唐沢はぼやいていた。
『目標を確認次第、連絡を。各自単独で突入は避けるよう』
『このための東君だったんですかね』
『ならもっと人数を寄越しとくように言って欲しかったですよ。こういうのは、それこそ迅の範疇でしょう』
『海沿い、カジノタワーが見える、花火が見えたから夜、人気のない場所、東さんが誰かに会って助けてもらう――でしたか。鍵は東君でしょうね』
生身で走り回りながら、遠くから避難誘導のアナウンスが聞こえている。なるべくそこから離れた場所へと向かう。人気のない、場所。だがそこで誰に会うというのか。具体的な特徴はぼんやりしてて視えないごめんね、と迅は軽く言った。
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