背中合わせの二人;BBB | ナノ
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「すまない、俺のミスだ……ほんとうに、ほんとうにすまない」

病室のベッドに頭をこすりつけて、スティーブンはひたすらに謝罪を続けていた。

「……アイスマン、私を凍りづけにするつもり?」

寒いのよ、と幽かな声に言われてスティーブンは跳ねるように顔をあげた。ベッドを中心に薄い氷の檻ができあがっていることに気づいて、尚のこと顔を蒼ざめさせた。ベッドに横たわるハルよりも余程死にそうな顔をして、「すまない」とそれしか言えなくなったように繰り返す。

「目が覚めたら、」

傷口が傷むのか、かすれぎみの声だ。

「病院のはずが、アニメーションに出てきてた氷の城に拉致されたのかと思ったわ」
「すまない」
「さっきからそれしか言ってないけど、……正直気色悪い」

すまない、とまた言いかけてスティーブンはぐっと言葉を飲み込んだ。その様子を呆れたようにハルは見ていた。気障な伊達男が世にも情けない顔をしている。何をそんなに気にしているのかハルにはさっぱりわからないから尚更だ。

「……傷が、」

スティーブンの手が、おそるおそる伸びた。額の、髪の生え際あたりに触れる。

「傷が残る、そうだ」

沈痛な面持ちで、告げられたそれに「へえ、それで?」とハルは続けた。
だから、何故そんな顔をする必要があるのか。そもそも今回の事件だって、別にいつもと変わらない。ハルたちHLPDが手に負えないものを、始末したのはライブラであり彼らが謝罪する必要なんてないのだ。まぁ、派手にすぎる技の数々で後始末が大変といえば大変だが、それだって命あってのものだねである。

「女性の顔に、傷を、残してしまった」
「傷で損なわれるほどの価値はこの顔についてないのだけど」

それに、と意地悪げに、からかうように、ハルは笑った。

「おそろいじゃない“スカーフェイス”」」

スティーブンの顔に残る傷跡を、力のないハルの指先がなだめるように撫でた。この顔をキレイだとハルは思っている。調子に乗るから決して口には出さないが。甘いマスクで微笑めば、大抵の女性達は傷跡なんて気にもしないだろう。

「にしても、位置が最悪ね。これじゃ“生き残った男の子”とおんなじよ?絶対からかう奴がいるわね」

某有名魔法使いの少年と同じ位置にある傷がせめて稲妻の形をしていなければいいのだけれど。また反射的に謝罪しようとしたスティーブンを制して、口元を歪めてハルが続けた。

「それに、私見えないところはもっと凄いのよ?“キミの傷の全てを数えさせてくれ”って奇特な輩はこの街にはわんさといるし、今更そこに新しいのが加わったからって大したことじゃないわ」
「剛毅な話だ」
「大体、命をひろってくれただけでこっちは感謝しているのに先に謝罪されたんじゃ立つ背がないわ。いいのよ、傷付こうが、どうなろうが。この街の平和のために命かけるのがお仕事なんだもの」
「……キミに惚れ直しそうだ、ハリー」
「まず惚れてないでしょ寝ぼけたこと言わないで」









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