上司サンド:BBB | ナノ
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Love is doing small things with great love.


面白くないといえば、面白くない。
しかし、微笑ましいと思う自分も確かにいる。

レオナルドの『勘弁してください』というオーラを素知らぬ顔で無視して書類仕事を続ける。
アリスがHLにやってきて数年。
色々連れまわしたが、確かにあれは『いまどきの若者デート』とは呼べないのも事実だ。
仕方ない。
どれだけ取り繕っても、埋めようがない。
同年代の初めての『友人』に浮かれているのを邪魔するのは、さすがに大人気ないとわかっていても、それを自分が与えてやれない、わかちあえないもどかしさは消えてくれない。
ささいな苛立ちからうっかり術式が発動しないように最大限自重している。
事務所のソファで平和に転寝している顔をコーヒーを飲みつつこっそり眺めて、小さくスティーブンは息をついた。



短期バイト先だったケーキ店で、大量の売れ残りを押し付けられ、途方にくれていたレオナルドはその甘ったるいケーキたちを食べきるべくライブラの事務所へ持ち込んだ。

「うわ!おいしそう!」

想定通りの人物の大喜びをみて、レオナルドはほっと胸をなでおろした。
これで毎日ケーキ生活はしなくてもすみそうである。

「そういえば、前に話してた映画きてましたよ」
「そうなの?行こう行こう」
「アリスさん、髪の毛寝癖すごいっすよ」
「うそっ?!さっき変な恰好で転寝してたせいかも・・・・」

レオの手がアリスの髪に伸び、手癖で髪を撫でつける。
む、とかすかに口をへの字に曲げた。

「なにレオ?」
「綺麗な髪だよなーって。ミシェーラもさらっさらで、おれの髪と雲泥の差なのはなんでだよっていう」
「き、きれい!わたしの、かかか髪が?!?!」
「何きょどってんすか」
「だって!きれいって!!ばか!おせじはいいよレオくん!・・・・・ほんとぜんぜん、わたしなんか、もう、」

舞い上がっていたのに、すぐさま何故かアリスは地面に叩きつけられた小鳥のようだった。ぐんと声音が小さく細くなる。

「だめだめだよ、こんなまっくろで」
「いや、俺も真っ黒じゃん」
「・・・・・・・・レオくんのはきれいだよ。もふもふだし」
「いやいやいやいや、さらっさらのストレートのがいいって」
「いや、でも、」

視線がそわそわとあちこちにうろついている。なんでだよ、とスティーブンは思った。自分が褒めたときだってそんな顔しなかったじゃないかと内心で突っ込む。だが、一方で仕方ないか、とも思った。スティーブンが褒め言葉を垂れ流していたのは、お嬢様の懐柔のために手っ取り早いと思っていた時期なのだ。心無い言葉だった、という自覚がある。翻って、レオナルドの言葉は単純なる打算なき賞賛だ。なんのしがらみもない人間であるがゆえに、その言葉はアリスの心にまっすぐに届くのだろう。

「シャンプーとリンスとか、よく買い間違えてミシェーラに叱られたっけなぁ。アリスさんそういうのやっぱこだわってんです?」
「へ?いや、うん、あるものを使ってるよ」
「いい匂いのやつですよね〜。ミシェーラもこういうの好きだろうな」

そう言われると、アリスとしては日ごろ無意識で使っていたものが急に気になりだしたらしい。即座に姿を消したと思うと、どうやらバスルームに行ってきたらしい。手にはシャンプーとリンスを持っていた。きゃっきゃと、銘柄を確認している。是非ミシェーラちゃんにも贈ろう!と拳を握っている。
いい匂いにきまっている。なんといってもそれはスティーブンが選んで買っているのだ。あのサラサラの黒髪が維持されるようにと、あれこれ研究に研究を重ねた。一度はK.Kとショップで鉢合わせた。あの時はこいつマジで引くわ・・・・という顔をされたのちに、どのブランドがよりアリスにあうかという話で珍しくも盛り上がった。
当の本人は、まったくこだわりがないのだから不毛といえば不毛な話だ。だが、別に感謝されたいわけではないからいいのだ。スティーブンの自己満足なのだから。
問題があるとすれば、これをミシェーラ嬢に送りたいと意識した結果、自分で買おうとしたアリスが使っているものがとびきりお高い、予約がないと買えないような代物であるということに気が付いてしまうことだ。お嬢様の割に、質素でつつましい子である。豪華な花束よりも、道端のスミレくらいの方が喜ぶ。じくり、と胸が痛んだ。
今でも彼女の荷物はいつだって最低限だ。必要なものをボストンバッグひとつに詰め込んで、兄の一声でどこへだって行くのだろう。
結局スティーブンはアリスが自分で調べだしてしまう前に二人の会話に割って入った。それ、事務所の備品で申請している奴だから少し多めに次は用意しておくから妹さんにおくってあげるといい、とできた上司の顔をして。これでアリスが自分で動くことはとりあえずないはずだ。



***



みにくいあひるの子、という話がある。
あひるの群れにいた醜い雛。
けれど、実際は白鳥の子であり、長じて後に美しい姿になっていく。

自分はその逆なのだとアリスは一度だけスティーブンにこぼしたことがあった。
美しい白鳥の群れに迷い込んだ、アヒルの子。
白鳥たちは優しいから、アリスのことも白鳥として大事にしてくれる。それがどうしようもなく申し訳ないのだと。
スティーブンに言わせれば、彼女は歴とした《白鳥》だった。大事に大事に囲われている籠の鳥。それを何故このHLで離す気になったのかは未だに思惑がつかみ切れていない部分だ。単純に『クラウスを誘惑しろ』などというアリスに与えられている表向きの用件をスティーブンは全く信じていなかった。それだけならもっとうまくやるすべはいくらでもあるのだ。そういう表向きの理由と一緒に、何か裏向きの理由がある。そしておそらくは本来の目的はそちらであるに違いないとにらんでいる。

じぶんはあひるだ、とアリスは言う。
だが明確に違うのだ。
彼女やクラウスが席を用意されるパーティーでも、スティーブンには席がないことだって腐るほどあった。その身に流れる血が、後ろに控える家が。確かにある。そこに差別はなくとも、明確な区別は存在する。スティーブン自身は、それに引け目を感じたことは無い。面倒なしがらみはどこにだってある。難儀な世界だろうなと客観視できた。だが、時折、はがゆいことはある。
それは、ごまかしようのないことだからだ。彼女は己の家名をかざせば、行けない場所はおよそないのだ。そんな真似をけっして彼女はしないけれど。

あひるだと思い込んでいる彼女を、綺麗に綺麗にして。ぴかぴかに磨き上げてやるのがスティーブンは好きだった。ほらみろ、やっぱり君は《白鳥》だと。そのたびに彼女は「スティーブンさんは目が悪いんですか?!」と困惑して、少しも真に受けてくれない。

自分には分不相応だと、いつだって地味な襟付きのワンピースを着ている彼女のワードローブにある山のようになりつつある服は、いつだってワードローブのこやしになったままだ。スティーブンが望めばきてくれる。けれど、自分で服を選ぶ時、彼女はいつだってお決まりの服を選ぶのだ。まるで自分はみすぼらしい《あひる》だと自分自身に刷り込んでいくような行動に、スティーブンはいつだって地団太を踏みたくなる。

この子はもっと可愛い。
この子にはもっと、魅力がある。
もっと輝ける。

まるでプロデューサーみたいですね、とレオナルドが苦笑された。覚えありますけど、と彼は続けてくれたのでスティーブンは少しだけほっとした。若者に「そういうのやめた方がいいっすよ」などと言われたらやめはしないがかなり凹む。

「だって可愛いだろ。なんであんな地味なのを着るんだよ」

むっとする。あの服が選ばれているのを見る朝は、いつだって不愉快だった。

「そっすねー」

クラウスには言えなかったので、盛大に少年に愚痴った。妹を持つ彼にはこの話題は非常にふりやすかった。
クラウスは『確かに他の服も素敵だと思う』と言った後に『だがどんな服でもアリスは可愛らしいと思う』と続けるに違いない。確かに。それは一理ある。万里ある。だがしかし。
それをいってしまったら終わりじゃないか?とスティーブンは思うのだ。あんなに可愛いのに。もっと可愛くなるのに。もったいない。

「それ本人に言ってあげたいいじゃないっすか」

「信じない」

接待だと思われているのだ。
スポンサーの娘に気を使うのも大変だなぁ、という顔をいつだってしている。申し訳なさそうに。最初期の頃にしていた心にもない接待を彼女はちゃんと覚えている。

「身から出た錆っすね」

「ぐうのねも出ないよ」

しがらみのない外部からやってきた《義眼》こそ特別仕様ではあるけれど、生まれ育ちは限りなく《ふつう》であるレオナルドの存在は彼女にとっては青天の霹靂であるらしく「レオ!レオ!」とまわりをちょこまかととりまいている。

「だからって僕を睨みつけられても困るんですけど」

「睨んでない」

いやにらんでいるだろ、という少年のジト目はスルーした。スティーブンはずるい大人なのである。

「君はいいよな・・・・彼女と歳も近くて、警戒されないし」

明日は二人で映画に行くらしい。デートか。
よくいくダイナーに出た新作ランチを食べて、映画見て、公園でやっている大道芸を見に行く計画を二人で計画していた。デートじゃないか。

「・・・・・ふつうにともだちですけど」

レオナルドが普段から細い目をさらに細めている。

「僕が設定して警戒されずに喜んでついてきてもらえるのはサブウェイくらいだ」

それはデートではなく買い出しだ。

「君がうらやましいよレオ」

零れ落ちた言葉にレオがきょとんとしていた。思っても見ないことだったようだ。同じことをスティーブンはクラウスにだって思う。彼のようにあれたら。けれどそちらに関してはとても口には出せない。ひとりっこのスティーブンは、これがレオナルドの《おにいちゃん力》だろうかと、思わずこぼれてしまう本音に自分でもかすかに驚いた。

「・・・・・・・はあ」

一方、レオにしてみればこの目の前にいる美丈夫に「きみがうらやましい」なんて言われても「そりゃこっちの台詞ですけど」という気分であった。恋は盲目?それとも父性愛?なんとも判別しがたい。この手の話の専門は自分ではなく妹であるので、レオナルドはとりあえずかんがえることをやめた。
仕事の出来る頼れる大人の男であり、あらゆる面でサポートをしてくれる人を密かに尊敬しているレオナルドは、不思議な感慨にふけっていた。なんでもそつなくこなしそうな彼の泣き所が《アリス》なのだ。彼女がからむとこんなちんけな自分にすら嫉妬する。

「じゃあ、明日はスティーブンさんが代わりに行きますか?」

「僕が行ったら彼女は間違いなく予定の半分はキャンセルする」

時折突拍子もないことを言い出しはするが、基本的にはあまり我儘を言わない子なのだ。特に、ライブラに迷惑をかけまいとする。
こんなことにスティーブンの時間をとらせてはいけない、と。

ふと、レオナルドはひらめいた。

「じゃあ、スティーブンさんが僕になったらいいんですよ!」

何故そんなことを思いついたのか。レオナルドとしては、割といつでもしっかりとした指示をくれ、妹のことでもこまやかな気遣いをしてくれる上司への恩返しの気持ちがあった。

「はぁ?」

スティーブンは怪訝な顔でレオナルドを凝視した。ふっふっふ、とレオは少しばかり鼻高々になって計画の詳細を話し出した。





***




「レオ―、もう出れる?」

レオナルドはびくり、と少しだけ肩をゆらした。
ソファに座っていた彼は後ろからかけられた声に、ゆっくりと振り返る。ソファの背もたれに両手をついたアリスが《レオナルド》を覗き込んだ。

「レオ?映画の時間遅れちゃうよ?って、どうしたのそのマスク?」

自分を見下ろす視線が新鮮だった。《レオナルド》は思わずしげしげアリスを眺めていると、背もたれに置かれていた手が伸びてくる。髪をかき分けるように額に手があてられた。

「風邪?今日やめとく?無理しないでいいよ?」

「けほ・・・あー、ちょっと、風邪気味だけど酷くないから」

「ほんとに?」

探るようにアリスが《レオナルド》もといスティーブンを見た。彼女の目には《レオナルド》が映っている。だが実際には。

「問題ないよ」

ぽん、とアリスの頭に手を置いて頭を撫でた。するとアリスは一瞬だけきょとんとした顔になる。なに?と問えば「今のはなんていうか、レオっぽくなくて驚いた」と目を瞬かせた。
スティーブンさんみたいだった、と言われて盛大にむせた。初っ端からこれだ。
慌てて立ち上がり、アリスの手をひっぱった。レオっ?と慌てた声がしているが、時間に間に合わないだろ!と黙らせた。

(少年っぽく!少年っぽく!!少年ぽいってどんなだ?!)

遥か昔に少年時代を置いてきたスティーブンは割と混乱していた。イヤカフからスティーブンさん落ち着いて!と共犯者であるレオナルドが警告した。OK落ち着こう。エレベーターの中でボタンを押してから一度大きく息を吸い込んだ。
現在、彼女の目をジャックしてくれているレオナルドが「あとは適当に!」なんていって連絡をたったから、早速恨みたくなっている。普通のことをするのがうらやましくはあったけれど、これじゃ邪魔をしているようではないだろうか?一抹の罪悪感がよぎった。
それでも横で楽しそうに鼻唄をうたっているアリスをみると、まぁいいかなとも思える。視野のジャックは今夜零時ジャストで解けるようにしてくれているらしい。なんともファンタジックな話である。そんな遅くなるような予定ではないから問題ないはずだ。こんなことに義眼を使わせるのは気が引けたが「訓練にもなるんで」という言葉に甘えた。

途中途中でレオナルドに助けを求めたりしながらも、おおよそ若者デート(レオは友人ですと主張する)は楽しくなごやかに過ごせた。無邪気に楽しそうなアリスを見るのは、スティーブンとてやぶさかではない。惜しむらくは彼女が「レオ!」とスティーブンに向かって呼びかけることくらいである。

けれど、ようやくデートもお開きというところで問題が起きた。緊急招集である。BBの出現に、全構成員への出動要請がかかった。スティーブンは即座にアリスを小脇にかかえて走り出した。混乱しているのはアリスだ。なにせ彼女の眼にはスティーブンはレオナルドに視えているのだ。小柄なレオが自分を軽々と抱え上げたことに驚いている。が、彼女の賢いところはこういう突拍子もない事態でもわめきちらして邪魔をしないところである。はてなマークをめいいっぱいとばしつつも、おとなしく抱えられてくれている。普段、こうするのはスティーブンの役目だ。気づくかな?と思った。彼女は何にも言わなかったけれど。

現地に到着すると安全なところへ彼女を置いてから、戦闘に参加した。物陰にいる彼女には血凍道をつかっているところは見えないはずだ。苦戦したものの、なんとか普段よりは迅速に事態はおさまった。時計を見ると針は23時半をしめしている。まだもう少し。彼女の目にはスティーブンがレオに視える魔法がかかっている。
事務所まで送り届けて、ふつうのデートをとにかく完璧にスティーブンはやり遂げたかった。

「アリス!!」

名前を呼ぶと、物陰から安心したような顔でアリスがやってくる。

「無事でよかった!」と両手をひろげた彼女がハグをしてくれる。

(これはレオに対してだ)

そう思うと何だか胸がもやりとした。勝手な話だ。

「だいじょうぶ?もう帰れる?クラウスさんたちは?後始末とか、」

「警察の方がやってくれるって」

アリスの手をとって事務所に向かう。もう少ししかないのだ。

「そっかぁ」

「ほっといてごめんな」

「全然。私なんにもできなくていつも申し訳ない」

何もしてないわけじゃない。彼女の血はHLのライブラ本部における結界の鍵のひとつだ。彼女が滞在しているだけで、結界の守護が増すという魔術的仕組みに、おおいに助けられている。が、それを知るのは幹部だけなのでここでは口にできない。

「いつもそう言ってくれるもんなぁ、スティーブンさんは」

「は?」

スティーブンは思わず足を止めた。今、この子なんて言った?

「え?スティーブンさんいつもそう言いますよねって。結界の件もなぁ、ほんとは一族の血晶石おいとけばいいんだろうけど、けち臭いしきたりで持ち出し厳禁なんですよ」

「・・・・・・・・・・アリス、えっと、あー、」

「スティーブンさん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

スティーブンは時計をもう一度見た。まだ零時にはなってないはずだ。なのに。

「そういえば、そんなに今日、映画見たかったんですか?」

「・・・・・・・・・・・・・いつから気づいてたんだ」

懸命にレオのふりをしていた自分が馬鹿のようじゃないか。恥ずかしい。
スティーブンはしゃがみこんで頭をかかえた。

「えっと、途中でなんとなく?」

「なんでだ・・・・結構少年トレースしてたろ」

「えぇ?なんでって、それは・・・・スティーブンさんっぽかったから?」

「どこが」

唸るように言った。アリスを騙すくらいわけないと高をくくっていた部分もあった自分を反省した。
アリスは指折り数え上げていく。

「レオは私の頭撫でないし、ポップコーンさりげなく買ってくれたりもないし、何より歩幅合わせてさりげなく一緒のペースで歩いてくれるのスティーブンさんじゃないですか。さっとハンカチもレオだと出ないな!」

レオっぽくないな、と最初は思った。それからじゃあ誰っぽいかと考えるとスティーブンの顔しか出てこなかったのだ、と悪戯が成功して種明かしをするように無邪気にアリスが笑った。
かなり最初から怪しまれていたことになる。

「どういう魔法だったんですか?これ」

「・・・・・・僕がレオに視える視野混交」

「視えてました視えてました!すごいなぁ義眼って」

「零時まで持つって話だったんだけどね」

時計を見せると、アリスが「もう零時過ぎてますよ」と自分の時計を見せた。
戦闘の途中で壊れて止まっていたらしい。零時を少しまわっている。

「こっちに歩いてくるの、最初レオくんだったんですけど途中でスティーブンさんになったから『なるほど!』って思いました」

「君、あんまりリアクションしないよな・・・・」

「兄の横で鍛えられてましたからねー」

ふふふ、と笑ってしゃがみこんだスティーブンにアリスは手を差し出した。

「明日、時計買いに行かなきゃですね」

「付き合ってくれるかい?」

「え、わたしがですか?クラウスさんとかのがセンスは安心のような」

「行きつけのカフェでランチして、時計見て、君が行きたがってたジェラートの店に行こう」

スティーブンの言わんとすることに気が付いて、アリスはなんだか照れくさそうに視線をすこしだけ彷徨わせてから、ちいさくこくんと頷いた。

(ああ、くそ!かわいい!!)

スティーブンは心の中の叫びは仕舞い込んで、アリスの手をにぎった。今度はちゃんと《スティーブン》として。
明日のデートコースに思いをはせながら、二人は夜のHLをゆっくりと歩いていった。



が、翌朝。
堕落王の悪戯によって無情にもすべての計画がご破算になったスティーブンは普段の百倍の八つ当たりを敵にぶちまけた。








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