I’m sober, get me a beer!!
(酔ってないからビールをくれ!)
「クラウスさん好きぃいいいい!クラウスさんの胸筋はわたしのものだ(どや)」
だれだこいつに酒飲ませた奴は。
「アリスっ、」
あわあわとクラウスが目を回す。我らがリーダーが困っている。ものすごく困っている。誰か助けろよっていうか副官何やってんだこのライブラの堕落王の管理はあんただろうが。
「おいおいクラァウス、浮気か?俺のことは遊びだったんだな…ははっ」
「ああっ、クラウスさんの髪もしゃもしゃする!わたしもする!」
「ぎ、ぎるべると!水!水だ早く二人に水を!」
坊ちゃまの命令に速やかに執事はきびすをかえす。ライブラの堕落王とご機嫌に酔っ払った副官はライブラのリーダーを好き好き大好きとホールドしている。なんだこれ。レオナルドはとりあえずその珍しい光景にシャッターをきった。ぱしゃり。隣にいたK.Kが動画にしたらよかったのにと口を尖らせた。
「君には胸筋があるだろ」
「髪も好き手も目も声もみーんなすきなんですぅ」
「僕のほうが好きだ」
「わたしのほうがすきです」
クラウスをはさんでにらみ合う。
「わたしなんてこないだクラウスさんの花にわたしのなまえをつけてもらったんですよ!」
「僕はこないだクラウスとデートした」
後者については仕事です。
「むう」
長い腕がクラウスの後ろから伸びて、クラウスごとアリスの腰をつかまえる。負けてなるかとアリスも腕を伸ばすがいかんせんリーチの差がありすぎた。届かないアリスの手にけたけたとスティーブンが笑う。
「クラウスさん好きいいぃぃ」
「ははっ俺なんて死ぬほど愛してるね」
「すてぃーぶんさん、そうゆうのおっもいですよ」
「君とは重ねてきた年月が違うからな」
「うぐ、こ、恋に年数なんてかんけーないですぅ」
この間髪をふいてもらった、ドライブデートした、一緒にお昼ねした、お茶した、ご飯を食べた、実はこっそりソニックにお菓子上げるの楽しみにしてるのを知ってる、ちいさいものが好きだ、朝にちょっと弱い、どーなつがすき
僕の、私の、クラウスさん自慢大会がクラウスをはさんで突発的に開催されている。当の本人は顔が真っ赤である。なんだこれはずかしい!
クラウス・V・ラインヘルツのHPはもうぎりぎり限界である。何せ二人は彼にとってとても大切な友である。ライブラ結成まもなくからこの街で共に過ごしてきた盟友とも呼べる。だがしかし、この二人をべろべろに酔わせると大変になることをうっかり失念していたことを今盛大に悔やんでいる。
許した給え…なんて口走りだしているから結構やばい。
「蛮行やめたげてくださいよスティーブンさん」
「君のことだろアリス」
「くらうすさん、くらうすさん、アップルパイたべにいきましょう」
さんにんで、いっしょに。そうアリスが言う。
「僕も連れてってくれるとは寛大だな」
「スティーブンさんも好きですよー」
たしたし、とスティーブンをたたく。
「…あれ、ほっといていいんすかね。クラウスさん涙目っすけど」
「まぁあたしだって腹黒男の絡み酒なんてくそ喰らえと思うんだけどねぇ」
「いやー、あれにわって入る勇者はいねっすよ姐さん」
「クラっち困ってるけど、幸せそうなのよね」
「見ようによっちゃ両手に花っすからね」
「かたっぽ毒花よね」
酒を飲む。酔っ払いたちの狂騒劇はまだまだ続く。
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