ヒロアカaqua


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10月上旬


「見て見てー!見ててー!」

そう告げブレイキングダンスを始めた三奈ちゃんにおおっと感心する

「芦戸さんは身体の使い方がダンス由来なんだよね、なんというか…全ての挙動に全身を使う感じだ」

緑谷くんがいつものようにノートを見ながらそう告げるので唄ちゃんが隣で頷いている
確かに三奈ちゃんの動きはいつものびのびしているし彼女らしい

「あれ、僕もやってみようかな…」

「教えてもらえば?」

「オーケーボォオイレッツダンスィ!!」

「あっええとお願いします!」

三奈ちゃんにダンスの動きを習う緑谷くんと青山くん
2人ともぎこちないけど三奈ちゃんが楽しそうなのでよかった

「砂糖のスイーツとかもそうだけどさ、ヒーロー活動にそのまま活きる趣味は良いよな!強い!」

「そういえば舞羽もカラオケが趣味って聞いたけど、やっぱ音波の個性のため?」

「あー…昔お母さんにボイトレとか仕込まれてて…」

ボイトレという単語にギョッとするけれど、唄ちゃんのお母さんは唄ちゃんを芸能界に入れたかったという話は聞いていたので納得してしまう

「趣味といえば耳郎のも凄えよな」

「ちょっ!やめてよ!」

響香ちゃんへ話しかけたのは上鳴くん

「あの部屋楽器屋みてーだったもんなァ、ありゃ趣味の域超えてる」

「もぉやめてってば!部屋王忘れてくんない!?」

「いやありゃプロの部屋だね!何つーか正直かっ…!?」

上鳴くんの眼前に突き出された響香ちゃんのイヤホンジャック

「マジで!」

どうやら本気で嫌がっていたらしい
いそいそと席に戻った響香ちゃんに首を傾げた

予鈴が鳴ってHR
教壇に立った相澤先生はまた寝袋に入っている
芋虫っぽいので本当に勘弁して欲しい

「文化祭があります」

「「「「ガッポオオォイ!!!!」」」」

学校っぽいの略、ガッポイ

「文化祭!!」

「ガッポイの来ました!!」

「何するか決めよー!!」

わいわいと盛り上がる面々
けれど切島くんは立ち上がった

「いいんですか!?この時世にお気楽じゃ!?」

「切島…変わっちまったな」

「でもそーだろ!ヴィラン隆盛のこの時期に!!」

先日のインターンも含めこれまでに数々のヴィランと相対してきたからこその意見
相澤先生も頷く

「もっともな意見だ、しかし雄英もヒーロー科だけで回ってるワケじゃない
体育祭がヒーロー科の晴れ舞台だとしたら文化祭は他科が主役
注目度は比にならんが彼らにとって楽しみな催しなんだ
そして現状寮生をはじめとしたヒーロー科主体の動きにストレスを感じている者も少なからずいる」

「そう考えると…申し訳たたねェな…」

思えば他科から向けられる目はいいものではない
最初は妬みかなと思っていたけれど、そうではないと気がついたのは最近のことだ

「ああ、だからそう簡単に自粛とするワケにもいかないんだ
今年は例年と異なりごく一部の関係者を除き学内だけでの文化祭になる
主役じゃないとは言ったが決まりとして1クラス1つ出し物をせにゃならん、今日はそれを決めてもらう」

そう言った相澤先生は委員長と副委員長の飯田くんと百ちゃんにバトンタッチした

「ここからはA組委員長飯田天哉が進行をつとめさせて頂きます!
スムーズにまとめられるよう頑張ります!!まず候補を挙げていこう!希望のある者は挙手を!」

その声に勢いよく挙手するA組一同
相変わらず主張の激しいクラスだ

「上鳴くん!」

「メイド喫茶にしようぜ!」

「メイド…奉仕か!悪くない!!」

それは絶対女子のメイド服が見たいだけだと思う

「ぬるいわ上鳴!!」

「峰田くん!」

「オッパb」

全てを言い切る前に唄ちゃんが羽を撃ち込んだ
加えて梅雨ちゃんが吊るし上げる

「麗日くん!」

「おもち屋さん!」

みんなが色々挙げていく中、相澤先生は寝袋で寝ている
こんな騒がしい中よく寝れるな…と呆れている内に出尽くした出し物案

黒板に映し出されたみんなの意見
私は無難に喫茶店を提案してみた

「一通り皆からの提案は出揃ったかな」

「不適切・実現不可・よくわからないものは消去させていただきますわ」

百ちゃんに消されたものたちに発案者が悲鳴を上げている

「郷土史研究発表もなー…地味よねえ」

「確かに」

「うん」

「総意には逆らうまい!」

飯田くんの意見も却下

「勉強会はいつもやってるし」

「お役に立てればと…つい」

百ちゃんの意見も却下

「喰いもん系は1つにまとめられるくね?」

「そばとクレープはガチャガチャしねェか?」

わいのわいのと盛り上がる一同
そこからヒートアップしてしまいまとまるどころか余計もめてしまう結果に
しかもチャイムも鳴ってしまったという展開

「実に非合理的な会だったな、明日朝までに決めておけ
決まらなかった場合…公開座学にする」

「「「「(公開座学!!!)」」」」

それは絶対嫌だとA組一同の意見がまとまった
続きは寮で話し合うことになったけれど私たちインターン組は補習があるので不参加
決定に従うということで理解してもらった









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