ヒロアカaqua


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戦いを終え動ける者は地元ヒーロー達と合流し被害の確認にあたっていた
ギルティルージュと私も共にその場に留まっていたが、被害はどうやらまだましらしい

「治崎の分解による家屋倒壊4棟、しかし軽傷者3名いずれもかすり傷程度…平日朝の住宅街ってのもあるが奇跡的だな」

そう告げた地元ヒーローに降りてきた波動先輩が声をかけた

「ねえねえあのね半分はデクくんと海色さんのシャボンちゃんのおかげだよ、ヘロヘロで倒れながら見てたの」

突然出された名前にギョッとしていると波動先輩は続ける

「でっかい治崎を空中にブッ飛ばして、またこの大穴近くに叩きつけてたの被害広がらないように戦ってたんだ
それにシャボンちゃんも落ちてきた衝撃や瓦礫から近隣の住宅を守ってた」

ね?と微笑んだ波動先輩になんだか少し恥ずかしくなったけれどこくりと頷く

「(そっか、私も役に立てたんだ…)」

そう思って安堵した




戦いで傷ついた者たちは最寄りの大学病院へ搬送された
緑谷くんはエリちゃんの個性の影響で怪我はないらしい
切島くんは全身打撲に裂傷がひどいけれど命に別状はないとのこと
天喰先輩も顔面にヒビが入ったものの後に遺るようなモノではないとのころ
ファットガムは骨折が何か所か、ロックロックも内臓を避ける形で刃が刺さっていたので大事には至らないそうだ
唄ちゃんも以前天喰先輩が撃ち込まれたものと同じ弾により一時的に個性を消失しているだけらしい

エリちゃんは熱も引かず眠ったまま、今は隔離されているらしい
人を巻き戻す個性をコントロールできない以上相澤先生以外誰にも止められないのだから仕方がない
何もしていないのに利用されていただけなのにどうしてエリちゃんが苦しまないといけないのかとは思うけれど、今できる最善策がこれなら私は早く彼女が元気になることを祈ることしかできない

そして…サー・ナイトアイは亡くなった
あの時の怪我は致命傷だったらしい、リカバリーガールでも治せなかったほどの怪我を負いながらも彼は最後まで戦った




一夜明けニュースを見ていると、そこに映し出されたのは護送中の治崎をヴィラン連合が襲撃したとのこと
その場にあった重要証拠品…おそらく完全に個性を消滅させるクスリも持ち去られたらしい

学校へ戻った私たちは色々調査や手続きが立て続けで寮へ帰ってこられたのは夜だった

「帰ってきたァアアア!!!!奴らが帰ってきたァ!!!」

大声を出した峰田くん
それにクラスのみんなが私たちを出迎えてくれた

「大丈夫だったかよォ!!?」

「ニュース見たぞおい!!」

「大変だったな!」

「皆心配してましたのよ」

まさかみんなが集まっているとは思わなかったので6人で顔を見合わせてしまう

「おまえら毎度凄えことになって帰ってくる!怖いよいいかげん!!!」

上鳴くんは緑谷くん、切島くん、唄ちゃんにそう叫んだ
神野の件も踏まえての発言だろう

「大丈夫?怪我してない?」

心配そうに駆け寄ってきた三奈ちゃんに大丈夫だよと返す
唄ちゃんももう個性は復活しているし、いつも通りだ

「皆心配だったのはわかるが!落ち着こう!!
報道で見たろう、あれだけの事があったんだ
級友であるなら彼らの心を労り静かに休ませてあげるべきだ
身体だけでなく…心も擦り減ってしまっただろうから…」

そう告げた飯田くんに食堂で緑谷くんが涙を流していた時のことを思い出す

「飯田くん、飯田くん」

「ム」

「ありがとう…でも…大丈夫」

緑谷くんは顔を上げる
その表情はまだ迷いはあるけれども確かに前を向いていた

「じゃあいいかい、とっっっっっっても心配だったんだぞもう!!!俺はもう!君たちがもう!!!!」

「おめーがいっちゃん激しい」

「ラベンダーのハーブティーをお淹れしますわ!心が安らぎますの!」

みんなが励まそうとしてくれる
そんな中お茶子ちゃんは静かに告げた

「私、救けたい」

そうだ、今回は全て良かったわけじゃない
ナイトアイの死、尊い命を代償に掴んだ勝利

もっとできることがあったんじゃないか
それは6人全員が感じていることだ

「雫、平気か?」

声をかけてきた焦凍くんに頷く
初めてのプロとしての現場、強大すぎる敵、人の死
たった数日で経験するにはどれも重すぎた
けれど1人じゃない、唄ちゃんも緑谷くんも…この6人で背負ったその重みだから前を向ける

「おーいかっちゃん何をフテクされてんだ!心配だったからここいんだろ!?なァ!?素直になれよ!」

ソファに座って様子を見守っていた爆豪くんに絡みに行った上鳴くん
けれど爆豪くんは立ち上がり、上鳴くんをソファに投げ飛ばした

「寝る」

「えー早くね!?老人かよ!!」

その様子に一言くらいかけたら?と尾白くんが告げるが爆豪くんは部屋に戻りながら「てめーらと違ってヒマじゃねンだ!」と叫んだ

「雫、舞羽、緑谷、麗日、切島、蛙吹…わりィが俺も」

「えー早くね!?老人かよ!!」

時刻はまだ20時半
寝るには早すぎるけれど部屋に戻っていった爆豪くんと焦凍くんに唄ちゃんと首を傾げる

「あいつら明日仮免の講習なんだ」

響香ちゃんに言われてなるほどと納得する
2人もみんなに追いつこうと頑張っている

「(私も足を止めてられない)」









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