ヒロアカaqua


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慌ててシャボン玉を作って彼女が地面に激突しないようクッション代わりにしたけれど、落ちてきた唄ちゃんは個性が消されていた

「唄ちゃん!!!」

「大、丈夫…多分天喰先輩が撃たれたのとおなじやつ…時間が経てば復活する」

「でも」

ここは死穢八斎會の邸宅
こんなところで個性なしの唄ちゃんを放っておけない
それにギルティルージュも依然苦戦中

「シャボン!リューキュウ事務所に動きがある!そっちに加勢しなさい!!」

「な…」

2人を置いてなんて行けない
そう思って反論しようとするが、ギルティルージュは続けた

「迷えば人が死ぬわよ!!!」

そうだ、インターン初日も同じことを言われた
私はいつも考えてから動く
だから肝心な時に立ち止まってしまう

「っ…はい!!!」

唄ちゃんは個性がなくてもパルクールや合気道を応用し警察の人と共に大勢の悪党を相手にしていた
そうだ、できることを精一杯やる…そう決めたんだ

駆け抜けた先には地面を破壊したリューキュウと波動先輩、お茶子ちゃん、梅雨ちゃん
破壊した先には地下のようなものがあり、そこには緑谷くん、そして血みどろになって倒れているナイトアイ

「治崎!!!」

緑谷くんの叫びが聞こえた瞬間、治崎が穴から出ようと急上昇してくる
その手にはエリちゃんと思わしき少女

「させるかァ!!!」

追ってくる緑谷くんを見て私も飛び出した
治崎はまだこちらに気がついていない
一瞬でも意識をこちらに向けさせれば保護できるかもしれない

「"スワロウストライク"!!!!」

治崎に向かって放たれた水鳥
その目がこちらに向いた瞬間、治崎の体が分裂した
いや、正式には治崎と別の人物へと分かれた

「もう…いいのに…!死んで欲しくないのに…!!」

エリちゃんの個性の影響だろうか、分裂した治崎の腕を離れ落下するエリちゃんを緑谷くんがキャッチする

「返せ!!!!」

治崎が手を伸ばす
個性の影響で地面が棘のように鋭くなって緑谷くんへ向かうが、それを全て凍らせ相殺した

「させない!!!」

「(このガキっ…!!!)」

その瞬間、緑谷くんが大きく跳び上がる
あまりにも強い勢いで跳び上がった彼は地上の、それも空中の高いところにいた

「緑谷くん…!」

エリちゃんをしっかりと掴んだまま治崎と距離を取った緑谷くんにホッとしたのも束の間
残された治崎がユラリと立ち上がった

「だから…触りたくないんだ…使い方も能力も…教えてないのに…壊理!ダメだおまえは…俺のモノだ
オヤジの宿願を果たす為におまえがいるんだ壊理」

そう告げた治崎は味方を殺し、それを修復…姿を変えていく
それを見てゾッとしていると、ナイトアイが言葉を発した

「君たちは…大丈夫…だ…少なくとも…奴が今…君らを標的にする…ことはない…
奴は…エリちゃんを追って地上へ…出る…そして…緑谷を…殺す」

お茶子ちゃんが走ろうとするが個性の反動で動けない様子
この場にいるリューキュウもみんなも満身創痍
私だけが動ける

「(やらなきゃ)」

緑谷くんが死んでしまう

「私行きます!」

「待て…君では…君たちでは…奴に向かっても…勝てない」

ぐっと拳を握って叫んだ

「だからって何もしないのは違う!!!」

「未来なんて何かせな変わらんやろ!!」

お茶子ちゃんも同じ気持ちのようで個性を使おうとする
敵う敵わないじゃない、正しいか間違ってるかでもない

「友達を救ける!泣いている子を救ける!それが私のやるべきことです!!!」

もう決めたんだ、だから絶対守り抜く
その叫びを聞いたナイトアイは少し考えた後に再び話し始めた

「壁の穴の先…ミリオがいるはずだ…フロッピー頼む
ウラビティ、リューキュウ、シャボン…私を…私と上へ向かってくれ」

お茶子ちゃんがナイトアイを連れて地上へ上がる
それを補助するように私も個性で押し上げた

「シャボン、ナイトアイはウラビティに任せて!あなたはあなたのやれることを!」

「はい!」

地上へ上がってまず見えたのは治崎と交戦中の緑谷くんの姿
そして次に見えたのは治崎を殴り飛ばすヒーローの姿

吹き飛んできた治崎から周りの家を守る為即座に氷結を展開したものの、先に治崎の個性でいろんな家が被害を受けてしまっている様子に口をつぐむ

ストンっと降りてきた緑谷くん
けれどエリちゃんの個性が暴走したのか彼は崩れ落ちる

「緑谷くん!!!」

そしてその隙に治崎はなけなしの力で彼へ腕を伸ばした
先ほど取り込んだ味方の個性

けれどそれはエリちゃんの個性によって打ち消され再び治崎と味方は分断される
その間に治崎を取り押さえた、手足も拘束しこれ以上動かせないようキツく縛り上げた

「状況は!?」

「ナイトアイは後方にいます、周辺住民には避難を呼びかけました!」

穴から顔を出したリューキュウの問いかけにこちらに向かって駆けてきたお茶子ちゃんが答えた

「治崎は緑谷くんが倒し、拘束…けれど…様子がおかしいです!!」

エリちゃんの個性が強まるほど緑谷くんが苦しむ
近づくこともできないその光景に打つ手なしでいたが、フッとエリちゃんの個性が消えた

「(相澤先生の…抹消…)」

ようやく鎮静化した事態
ハッとした警察が声を出す

「被害者がいないか確認を!」

「救急車ありったけ呼んで!」

「ヴィラン連合メンバーが近くにいるかもしれない、捜索を!」

疲労困憊
みんな各々のやれることを最大限やった
救急車が到着して運ばれていく重症者達

AM9:15 エリちゃんの保護が完了した










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