ヒロアカaqua


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ギルティルージュは雄英の広報を担当する関係者の人間でもありプロとしても女優としても活動しているまさに多忙の人
そんな彼女は今、今年の入試へ向けたポスターを作っているらしい

「いや、今の時期に作るって遅いんじゃ」

「黙りなさい!」

唄ちゃんの言う通り9月中旬に作るようなものではないと思う
大人しくメイクされ言われた通りのポーズで撮影をしている私たち
インターンと言ってもあくまで雄英の仕事、学校の公務の一貫
撮影をしてお終い、そう思っていたのにギルティルージュは私たちに「パトロールに行きましょうか」と告げた

「あの、インターンって名前の補習授業って聞いてるんですけど」

「あれ、誰がそんなことを?」

「相澤先生です」

「ああ、イレイザーね…ほんっとあのガキンチョは…」

ギルティルージュは今年36歳、相澤先生の方が年下だけれどガキンチョ呼びをされてるなんて少し先生に同情する

「いい?私は雄英の関係者ではあるけど委託されて業務をしているだけの所謂外部の人間よ
つまりこのインターンは正式なインターン、勿論平日にこっちに来るなら公欠扱いにもできるし必要であればヴィランとの交戦もあるわ」

その言葉にギョッとした私たちを見てギルティルージュは笑う

「PR活動はあくまでその一環、基本は私がしているヒーロー活動を実際に行ってもらうわ」

ギルティルージュと共にパトロールに出ればすぐに市民に囲まれる

「ギルティルージュ!この前のコスメ買いました!今つけてます!」

「あら、とっても似合ってるわね」

「この前の雑誌見ましたー!サインください!!」

「勿論よ、買ってくれてありがとう」

にこにことファンサービスをするその様子はヒーローというより女優感の方が強くて呆気にとられた
唄ちゃんは職場体験もあったおかげか慣れたようにその様子を見守っていた

と、その時
何本か向こうの通りから聞こえた爆発音

驚いている私たちを他所にギルティルージュは飛び出した

「事件よ!急行します!!」

「「っ、はい!」」

一瞬でも気を抜いてた私たちとギルティルージュの距離の差
急いで追いかけ辿り着いたそこには暴れてるヴィランたち

全員大したことはない悪党
けれど気は抜かない

「フリューゲル、シャボン、サポートを頼んだわよ」

ギルティルージュが先陣を切っていく
唄ちゃんが負傷者の手当てをする中、爆発により燃えている炎を消火した
すると1人のヴィランがギルティルージュから逃れるためにこちらへやって来た

「(逃さない!)」

唄ちゃんの羽により地面に縫い付けられたヴィランの手足を氷の枷で拘束する
一瞬だったが唄ちゃんも私も油断していなかったからこそ取れた連携

事件終息後、様子を見ていた市民の方々が集まって来た

「お嬢ちゃんたち助かったよ!」

「怪我人も治療してくれてありがとう!」

「ギルティルージュのサイドキックかい?」

「えっと、私たちは…」

「その…」

囲まれておろおろしているとギルティルージュがやって来た

「インターンの子よ、フリューゲルとシャボンって言うのよろしくね」

さらっと名前まで告げたギルティルージュは流石だ
ヒーローは知名度や人気度が重要となる
そのためにもヒーロー名があるのだ、それを公表することは認知されるということ
所謂私たちのデビュー戦になったというわけである

「お姉ちゃんたち、ありがとう!」

小さな女の子にそう言われて私と唄ちゃんは顔を見合わせて笑った

事務所に帰ってきてからは特訓
相変わらず容赦のないギルティルージュにぼこぼこにされ地面に倒れていると彼女はアイスを食べながらこちらを見下ろしている

「弱い弱い、やる気あるのかしら?」

「「(絶対期末試験のこと根に持ってる…)」」

まさか負けると思ってなかったんだろう、それなのに打ち破った私たちにすこーし苛立ってたに違いない
その恨みが篭ったパンチをお見舞いされた気がする

「お2人もどうぞ」

にこりと微笑んでアイスを差し出してくれたのは皆川さん
ギルティルージュの専属マネージャーらしい、とってもイケメンで目の保養になる

「ありがとうございます」

スプーンですくって口に含めばひんやりとした冷たさが気持ちいい
それに今まで食べたどのアイスよりも美味しくてびっくりしてしまう
ギルティルージュはアイス好きのようで、毎日これを食べているらしい

「あなた達、今日出遅れたこと覚えてる?」

ヴィランが現れ即座に反応したギルティルージュと出遅れた私たち
そのことを思い出し頷く

「あの遅れは気の緩みや初めてって言うのもあるんでしょうけど、これだけは言っておくわ
あの数秒の遅れで救えた人が救えなくなることもある…インターン中は常にプロ意識を持ちなさい」

その通りだ
通形先輩も言っていたように人の死に遭遇することもあるほどの危険が起こりうるかもしれない、それがインターン活動
まだどこかお客様気分だった私と唄ちゃんの顔つきが変わる

それを見たギルティルージュは面白そうに口角をあげていた










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