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事件の翌日
オールマイトが私たちにってバーベキューを用意してくれた
結局A組が全員I・アイランドに来てたと知ってびっくりしたけれど
「んーっ!美味しいー!!」
めいいっぱい頬張る私の周りには空の皿の山
昨日限界まで個性を使った影響でいつもより更に大食いになっている
「ほんま雫ちゃんよう食べるね」
「あ、ごめんね…つい」
食べすぎたんじゃと思って慌てるけれどオールマイト曰くまだまだあるから遠慮しなくていいとのこと
それを聞いてほっとしてジュースを飲んでると唄ちゃんがやってきた
「雫ちゃん、体調はもう大丈夫?」
「うん平気、リカバリーガールも来てて本当によかった」
「…ごめんね、私いつも雫ちゃんに助けてもらってばかりで…今度は私が助けるからね!」
そう告げる唄ちゃんはキラキラしていて、やっぱり私はこの子が好きだと再確認する
「唄ちゃん」
「なに?」
「羽、動いてるよ」
「うわぁっ!?」
無意識のうちに動いているんだろうけれど、本人はそれを恥ずかしがっているのが面白くてついからかってしまう
クスクスと笑っていると唄ちゃんが三奈ちゃんに呼ばれそちらへと行ってしまう
食べるのを再開しようかと思っていると、空いた隣の席に焦凍くんが座った
みんなは各々会話しており気がついてはいないけれど
「お前、食いすぎだろ」
「反動でお腹すいちゃって…あと10皿はいける!」
「どこに入ってんだそれ」
呆れる焦凍くんがため息をついた
もぐもぐと頬張っている私は気がつかない、焦凍くんがチラチラ横目で何か言いたげな視線を送っていることに
「(え、これ美味しい)」
焦凍くんにもおすすめしようと彼の方を向いた時、そのオッドアイと目があった
「…昨日の服、似合ってた」
それだけ言って隣で同じように食べ始めた焦凍くん
私は自分が言いかけていた言葉を飲み込み、赤くなった頬を隠すように俯いた
「あ…ありがとう…っ」
小さな小さな声
周りではしゃいでいるメンバーの声でかき消されてしまうようなそれを焦凍くんは聞き漏らさなかったようで「おう」と告げる
さっきまで全然お腹が空いていたのに急に満たされたように感じるのは何でだろう
というか私いつも焦凍くんに振り回されてない?
そう思うと少し面白くなくて、考え込んだ後で立ち上がった
「ね、焦凍くん」
「?」
顔を上げた焦凍くんに悪戯気に微笑む
「今度は照れないで会ってすぐに褒めてね」
「…は」
「あ!梅雨ちゃん、私もジュース頂戴!」
驚いた表情の焦凍くんを放って梅雨ちゃんへ駆け寄る
気がついてないと思ったんでしょう?でも残念、私だってやられっぱなしじゃない
昨日ロビーで会った時に目を逸らしたのは珍しい格好をしていたことに目のやり場に困ってたからだ
「(焦凍くんも可愛いところあるなあ)」
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言いたいことだけ言ってどっかに行きやがった雫
似合ってると思ったのは本心
昨日合流した時に思わず目を逸らしちまったが、あの後すぐにそんな場合じゃなくなっていう機会を逃してたから今伝えた
最近は曝け出すようになってきた子供っぽさ
それなのに昨日ドレスを着ている時の雫はいつもよりずっと大人びて見えて、正直困惑した
「(女子ってすげェな)」
先ほどの雫の表情を思い出してなんとも言えない感情が広がる
もやっと…いやじわっとか?
そんな風に広がるこの感情は何なんだろうか
楽しそうに笑う雫を見てまあいいかと思い直す
帰ったら雫を家に連れて行こう、姉さんに紹介したい
そしていずれ母さんにも
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