ヒロアカaqua


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緑谷くん達がタワーに入ってからしばらくした頃、戦闘していた警備システムが動きを止めた

「止まった…?」

正直もう限界が近かったので上手くいったなら一安心だ
一息ついてから唄ちゃんと笑い合う
これでオールマイトも解放される

「おい唄!てめェなんだその服は!!!」

「勝己こそ似合ってるね、薔薇」

「これはクソ髪のだ!!!!」

いつもの騒がしいやりとりにほっとしたのも束の間
屋上で爆発音が聞こえた

ピクッと反応した唄ちゃんがタワーを見上げて黙り込む

「出久…?」

その呟きをした彼女が駆け出した
タワー内部に入っていくその後ろ姿を見て爆豪くんがすぐに追いかける

「ウチらも行こう!」

「おう!」

まだ戦いは終わってないということなんだろうか
ギリギリあと何回かは個性を使える、けれどそれを越えれば私は完全に足でまとい

焦る気持ちを抑え屋上へと辿り着くとそこには異形のものと化したヴィランとオールマイトが戦っていた
それも押されているように見えてゾッとする

「さっさと潰れちまえ!」

ヴィランが放った攻撃
それに向かって氷結を放った焦凍くん
ハッとしたヴィランに爆豪くんが飛びかかる

「くたばりやがれェ!!!!」

爆破を防いだヴィラン
爆豪くんの方ももう限界が近いのか汗が滲んでいる

「あんなクソダセェラスボスに何やられてんだよ!オールマイトォ!!」

宙にいる爆豪くんをキャッチした唄ちゃんが心配そうに彼を見つめた

「今の内にヴィランを!」

氷で敵の攻撃を足止めしていた焦凍くんがそう叫ぶ
すると後ろのエレベーターからA組のメンバーが現れた

「金属の塊は俺たちが引受けます!」

「八百万くんここを頼む!!」

「はい!」

そう告げ飛び出した切島くんと飯田くん
私も歯を食いしばって駆け出す

「(大丈夫、まだやれる)」

ここで動かなきゃヒーローになんて…大切な人を守れるヒーローになんてなれない!!!

向かってくる攻撃全てに氷柱を命中させる
私たちの加勢によりオールマイトは再び立ち上がった
ヴィランへ向かって行きながら攻撃を放ったそれ
しかしヴィランの罠にハマったオールマイトは拘束され、その首を締め上げられる

オールマイトの叫び声にハッと息を飲んだ
その油断した瞬間に攻撃が直撃し吹き飛ばされる

「あぐっ…!」

「雫!!」

焦凍くんの焦った声
頭上ではオールマイトがヴィランによって消えかけていた
この場で諦める者が多数いる中で、彼は諦めてなかった

走る緑の閃光

「デトロイト・スマァァアッシュ!!!!!」

オールマイトの窮地を救ったのは緑谷くん
2人とも吹き飛ばされたけれど彼らは立ち上がる
そしてヴィランへ向かって駆け出した

「往生際が悪ィんだよ!!!!」

2人に攻撃を仕掛けるヴィラン
それを見て私も立ち上がる

せっかくおしゃれしたのにドレスもボロボロ
結った髪も解けている
傷だらけでひどい有様

本当に情けない、けれど
好きな人の前でこれ以上情けない姿は見せたくない

「私は…私の大切な人を!!守る!!!!!」

2人の行く手を阻むヴィランの攻撃
それに向かって大波を生み出し妨害する

「いけーーーー!!!」

「「オールマイトォオ!!!」」

「「「緑谷ーーー!!!!」」」

「「ぶちかませェ!!!!」」

みんなが口々に叫ぶ
私と唄ちゃんも必死に声を出した

「「勝ってぇええ!!!!」」

強烈な一撃が決まりヴィランは消し飛ぶ
それを見て足の力が抜けた
手足の指先が痺れている、脱水症状だ

「雫ちゃん!?」

倒れた私に駆け寄ってきた唄ちゃん
心配そうに覗き込む彼女に抱きついた

「やった…やった!!」

もうダメだと思った
オールマイトをもってしても敵わないなんてどうすることもできないと
けれどそんな状況でも緑谷くんは諦めなかった

「(私も…いつか彼みたいな…)」

輝けるヒーローに










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