ヒロアカaqua


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襲いかかってくるヴィラン
巨大なタコになったその姿に唄ちゃんが顔を歪めた

「うわキモ…」

こちらへ向かってくる触手を全て水の壁で弾き、その壁越しに唄ちゃんが羽を撃つ
けれどタコの表皮がぬめっているせいで羽はつるんと弾かれてしまった

「えっ!」

「俺の個性は粘性、体中を粘着質な液体で覆うことで攻撃を無効化する!」

ということは氷結も無効なんだろうと分析する
タコが触手を振ればその粘着質な液体がこちらに向かってくるので慌てて全て迎撃
あんなのに当たったらドレスが台無しになる!

「唄ちゃん、あいつに物理ダメージは効かない!」

「わかった!じゃあ私の音波で…」

と、その時2人してハッとする
タコに聴覚器官はないということに気がついたのだ

人間のフォルムの時ならまだしも、完全にタコのフォルムの今は音波の個性は効かない可能性大で冷や汗が伝った

「どどど、どうしよう!?」

「一旦立て直そう!」

サッと物影に隠れ様子を伺う
物理攻撃も効かない、音波の内部攻撃も効かないとなれば絶望的すぎる

「(何か考えは…)」

「うえ…あんなねばねばついたらドレス台無しだよ」

青ざめる唄ちゃんがため息をついた

「いっそあの粘液ごと吹き飛ばしてみる?」

「…それだ!」

何気なく呟いたことに食いついた私に目を丸くした唄ちゃんがびくっとする

「あの粘液も吹き飛ばすような爆破を起こすってこと?」

「ううん、爆破じゃなくて超音波洗浄だよ!」

「それってあのメガネとか洗うやつ?」

まだぴんときていない唄ちゃんに頷く

「私の水とそれを伝う唄ちゃんの音波のコンビネーション技、それであの粘液さえ洗い流せば物理ダメージも通るようになる」

「っ!そうすれば勝てる!」

ぱああっと顔を明るくさせた唄ちゃんはやる気満々のようでいつもの不敵な笑みを浮かべていた
窮地に陥った時に笑えるのは凄いことだって知ってるんだろうか

「絶対ドレスは死守しようね!」

「うん!」

「「(まだ感想言ってもらってないもん!!!)」」

2人して同じことを考えているなんて知らず、タコの前に出て構える

唄ちゃんと呼吸を合わせるなんて自分の個性を使うくらい簡単にできる
お互いがどう動くのか、相談しないでもできるそれに口角が上がる
不思議と気分も高揚してくるのは何故か

タコを囲むように巨大なシャボン玉を作り出す
その中の水分全てを使いボール内部を水で満たした

タコだから効かない
そう思って油断しているヴィランに唄ちゃんの音波が炸裂する
超音波による振動で粘液が綺麗に落とされていく
落ちた粘液全てを取りこぼさないようにボールから外に出せば生身のタコの出来上がりだ

「なっ…?!」

この状況に慌てたヴィランに向かって唄ちゃんの羽と私の氷柱が襲いかかる
衝撃で吹き飛んだタコはみるみる内に姿を変え元の男へと戻った

「唄ちゃん大丈夫?」

「うん、ちょっとずつだけど音波の個性を使っても反動を受けないように特訓中だからまだ動けるよ」

「そっか」

強くなっている唄ちゃんに微笑んでからコツンと拳を合わせる
相変わらずいいコンビネーションだと2人して笑った後で屋上を目指し再び駆け上がる

通ったルートが異なったのか先を進んでいるはずのみんなに合わないままたどり着いたのは風力発電のようなものが並んでいる場所
外に造られているので風が凄い

と、金属音のようなものが聞こえてそちらへ目を向ける
すると少し離れた場所でお茶子ちゃんに迫る警備ロボ達が見えて全身が冷えた

「お茶子ちゃん!!!」

瞬時に動いたのは唄ちゃんだった
羽の個性で瞬く間にお茶子ちゃんの前まで行った彼女はロボに向かって音波の個性を撃った
けれどいくつかのロボは飛び上がっておりその攻撃を逃れる

絶対絶命に見えたその場面、ロボを吹き飛ばしたのは爆豪くんだった

「勝己!!」

それを見て私も遠距離からロボを凍らせ駆ける
ちょうど焦凍くんと切島くんも到着したらしい

「今デクくんとメリッサさんが最上階に向かってる!」

「ああ見えてた、ここでこいつらを足止めするぞ!」

無限に湧き出るロボ
爆破していく爆豪くんが眉を釣り上げた

「俺に命令すんじゃねェ!!」

「でもコンビネーションはいいんだな!」

「誰が!!!!」

いつもの掛け合いに笑いそうになるけど気は抜けない
大波を起こしてお茶子ちゃんを守るように唄ちゃんと立つ

「唄ちゃん、雫ちゃん!」

と、その時
お茶子ちゃんの個性で上へ向かっていた2人が強風に煽られ軌道を変えた
それを見た焦凍くんが上着を捨てて駆け出す

「爆豪!プロペラを緑谷に向けろ!!」

「だから命令すんじゃねェ!!!!」

爆豪くんの爆破で傾いたプロペラ
それに向かって焦凍くんの炎の個性が炸裂する
生み出された熱風で2人は上に押し上げられた
そしてタワーに入ったのを確認する

「(あとは任せたよ…緑谷くん!!!)」









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