ヒロアカaqua


▼ 38



再び始まった交戦
焦凍くんの炎熱が繰り出される

「私も否定はしない」

「っ!?海色さんまで!」

「みんなを守れるようなヒーロー、確かに私がなりたいものだけどそれはあくまで建前
私にとって1番大事なのは家族だから選べと言われたらそっちを優先する、それが本音」

左腕を振り下ろし、大気中の水分を氷柱に変えた
それを一気にヒーロー殺しへ降り注がせる

「私は私の大切な人達を絶対に守る!!!」

「雫…」

私の発言に焦凍くんは驚いたような顔でこちら見つめる
今までずっとこんな風に本音を出したことはない、焦凍と2人の時以外はいつだってみんなが憧れる海色雫でいた

「(けど本当の私は良い子じゃないから)」

大切な家族、友達、それに焦凍くんを最優先にする
そんな私にヒーロー殺しも飯田くんと私、プロヒーローの人を殺そうと躍起になっている

「轟くん温度の調整は可能なのか!?」

「炎熱はまだ慣れねぇ、何でだ!?」

「俺の脚を凍らせてくれ!排気筒は塞がずにな!」

ヒーロー殺しは何かしようとしている焦凍くんへ狙いを定めナイフを投げた

「させない!」

それを弾くと、今度は私目掛けてナイフを投げてくる
大波を起こして防ぐものの、同じタイミングで投げられたナイフが飯田くんの腕に刺さってしまっていた

「飯…」

「いいから早く!!!!」

何かしようとしている緑谷くんと飯田くん
それなら私は時間を稼ぐ役割だろう

ヒーロー殺しに向かって再び氷の槍を降らせる

「何度やっても同じこと!」

その氷を掻い潜り私の懐に入ってきたヒーロー殺し

「雫ッ!!!」

焦凍くんの声が聞こえ、フッと口角が上がる

「死ね」

「やだね」

掌に用意した分厚い氷でその刀を防げば、力負けし氷に刺さった刀ごと壁に跳ね飛ばされた
即座に刀を持っていかれたことに気がついたヒーロー殺しはナイフを投げてくる
脇腹に鋭い痛みが走って目線を下ろせば数本刺さっているのが見えた

「くっ…!」

腹部に刺さったナイフを引き抜いて、飯田くんへ向かうヒーロー殺しに向かって最後の力を振り絞りそれを投げた

一瞬

ヒーロー殺しが一瞬だけ私の投げたナイフに視線をやった
その隙に緑谷くんと飯田くんがヒーロー殺しに迫る

「「行け!」」

私と焦凍くんの叫びと共に
2人の同時攻撃が炸裂した

勝った…そう思ったのも束の間、ヒーロー殺しは再び飯田くんに刀を振るう
もはやここまで来ると賞賛したくなる

「お前を倒そう!今度は犯罪者として」

「たたみかけろ!」

「ヒーローとして!!」

レシプロと焦凍くんの炎熱によりヒーロー殺しに攻撃が決まる
すかさず、氷結により飯田くんと緑谷くんが焦凍くんの背後へ戻された

「立て!まだ奴は…」

油断すると殺される、誰一人気を抜いていなかった
しかし予想とは違い、ヒーロー殺しは氷結の上でぐったりと動かなくなっていた

「…流石に気絶してる…っぽい?」

「っ、やったの?」

ふらつく足取りで3人に近づけば焦凍くんが支えてくれた

「ごめんね、ありがとう」

「いや、俺こそ助かった」

ヒーロー殺しを拘束して通りに出る
やけに長い時間戦ってた気がする

「轟くんやはり俺が引く」

「おまえ腕グチャグチャだろう」

「そうだよ、無理しないで」

壁伝いに歩いている私も人のこと言えないけど、これくらいならまだ大丈夫だ
というか上がらない右肩が心配で仕方ない

「悪かった、プロの俺が完全に足でまといだった」

「いえ…1体1でヒーロー殺しの個性だともう仕方ないと思います…強すぎる」

「4対1の上にこいつ自身のミスがあってギリギリ勝てた
多分焦って緑谷の復活時間が頭から抜けてたんじゃねえかな
ラスト飯田のレシプロはともかく緑谷の動きに対応がなかった
それに飯田から反応を逸らすため、ナイフを投げた雫の動きに気を取られた…あの一瞬が勝敗を左右した」

通りに出るとプロヒーローたちが続々と集まってきたため気が抜けていたのだろう、私はその場に座り込んだ
プロヒーローのお姉さんが手を差し伸べてくれる、お礼を言ってその手に捕まろうとした


その時だった

「伏せろ!!!」

グラントリノの叫び声にハッとしたとき、既に私の身体は宙に浮いていた

「え」

「緑谷くん!」

「雫!」

手には私、足で緑谷くんを掴む脳無
待って、なんでここに脳無が

「(考えろ、どうすればいい、今すぐこいつに攻撃を)」

その瞬間、脳無が落下した
緑谷くんは依然掴まれたままだが、私は宙に放り出される
地上を見ると脳無に切りかかるヒーロー殺しの姿があった

「偽物が蔓延るこの社会も、徒に力を振りまく犯罪者も粛清対象だ…全ては正しき社会の為に」

落下していた私は受け身を取ろうと個性を使おうとする、その時

「雫、何をしている」

暖かい感覚、聞こえた声にひどく安心した
片手で抱えられるように掴まれた私
その手はエンデヴァーのものだった

「座っていろ」

ドサッと地面に降ろされ、エンデヴァーはヒーロー殺しに向かっていく

「待ってエンデ」

「偽物…正さねば…誰かが血に染まらねば…!」

止めようとした時、ヒーロー殺しのその空気に圧倒された
その空気にうまく呼吸ができなくなる

「ヒーローを取り戻さねば!来い、来てみろ偽物ども!俺を殺していいのはオールマイトだけだ!」

凄まじい気迫の後、ヒーロー殺しは気を失った
あの一瞬、誰も血を舐められていないのに
ヒーロー殺しだけが戦っていた

信念、執着、誇り

それらを曲げなかった故の行動

その圧にあてられたのか今度こそ私は意識を失った








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