▼ 74
夏休みも残すところ十数日
雄英敷地内、校舎から徒歩5分の築3日"ハイツアライアンス"
今日からここが私たち雄英生の家となる
「でけー!」
「恵まれし子らのー!」
寮には1-Aと書かれており、どうやら3学年全学科、全クラス分の寮が用意されているらしい
雄英の行動力とスケールの大きさはいつも驚かされるがこれはダントツかもしれない
寮の前に集結した生徒達の前には相澤先生
「とりあえず1年A組、無事に集まれて何よりだ」
「皆、許可降りたんだな」
「私は苦戦したよ」
「フツーそうだよね」
ガスで被害の遭った透ちゃんと響香ちゃんがそう告げる
あんな事件があった後なんだからもめた家庭も多いだろう、私のところだけじゃない
「無事集まれたのは先生もよ、会見を見た時はいなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
梅雨ちゃんの言う通りだ
相澤先生もブラドキング先生も引き続き担任のようでホッとする
「さて、これから寮について軽く説明するが…その前に1つ
当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」
「そういやあったなそんな話!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ…」
「大事な話だいいか、舞羽、轟、切島、緑谷、八百万、飯田
この6人はあの晩あの場所へ爆豪、海色救出に赴いた」
相澤先生の言葉にみんなの視線が唄ちゃんたちに向けられて
どうしてという視線に何も言えないでいると、相澤先生が続きを話す
「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ、色々棚上げした上で言わせて貰うよ
オールマイトの引退がなけりゃ俺は爆豪、海色、耳郎、葉隠以外全員除籍処分にしてる
彼の引退によってしばらくは混乱が続く…ヴィラン連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ
行った6人はもちろん、把握しながら止められなかった12人も理由はどうであれ俺たちの信頼を裏切った事には変わりない
正規の手続きを踏み正規の活躍をして信頼を取り戻してくれるとありがたい」
相澤先生の言うこともわかる、けれど私はあの時唄ちゃんたちが来てくれなかったら今頃ここにいないかもしれない
「以上!さっ!中に入るぞ、元気に行こう」
「「「「(いや待って、行けないです…)」」」」
相澤先生と異なり動けないでいる面々
すると爆豪くんが上鳴くんを引っ張って茂みに連れてった
と思ったら出てきたのはウェイモードの上鳴くん
「うェーーい…」
それを見て吹き出す一同
そのまま爆豪くんは切島くんへ近づいていく
その手にはお札が数枚…お札!!!?
「え、怖っ!何、カツアゲ!?」
「違ぇ、俺が下ろした金だ
いつまでもシミったれられっとこっちも気分悪ィんだ」
「あ…え!?おめーどこで聞い…」
「いつもみてーに馬鹿晒せや」
そのお金が何のお金なのかハッとする
あの後唄ちゃんに色々聞いたけれど暗視鏡を切島くんは自腹で買ったらしい
5万はする代物を私たちの救出のために
「ば、爆豪くん!私も半分出すよ」
「うるせェ!馴れ馴れしく話しかけてくんじゃねェ!!!!」
「(えぇー…)」
会話すらまともに取り合ってもらえず遠い目をする私を他所に、ウェイモードの上鳴くんを見て徐々に笑顔を取り戻すA組
「皆!すまねえ!詫びにもなんねえけど…今夜はこの金で焼肉だ!!」
「買い出し一緒に行くよ」
「おう」
捕まった私が悪いのにみんなが申し訳なさを感じているこの状況は居心地が悪い
それでも私がこの場から離れるのは違う
「(ちゃんと受け止めよう)」
私が強かったら防げたはずの事態
今後二度とこんなことがないように今は目を逸らさず…
先生に続いて中に入ればそこはかなり広い空間
「1棟1クラス、右が女子棟、左が男子棟と分かれてる
ただし1階は共同スペースだ、食堂や風呂、洗濯などはここで」
大きなテレビ、ゆったり座れるソファ
キッチンも併設されておりみんなで集まっても問題ない広さにみんなが感動する
エレベーターで上がれば、そこは部屋が並んでいる
「部屋は2階から、1フロアに男女各4部屋の5階建て
1人1部屋エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ」
普通の1人部屋と変わらない広さのそこはベランダまでついている
やっぱり雄英ってお金持ってるんだなと感心した
「部屋割りはこちらで決めた通り、各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるからとりあえず今日は部屋作ってろ
明日また今後の動きを説明する、以上解散!」
私の部屋は2階の端
女子は人数が少ないから並んだ4部屋の端を使っているようだ
同じフロアには唄ちゃんもいるようでとても嬉しい
部屋にはダンボールがいくつか並んでおり、それを荷ほどきしていく
ホワイトインテリアで統一した部屋に仕上がるようにさくさくと進めていったけれど終わった時には外は真っ暗だった
お風呂に向かおうと部屋から出ると、ちょうど出て来た唄ちゃんと出くわした
「荷ほどき終わった?」
「うん、時間かかっちゃった」
眉を下げて笑うと唄ちゃんも「私も」と笑った
唄ちゃんとお風呂へ向かうと、そこには他の女子の面々
「あ、雫ちゃんたちも終わったん?」
「うん、ようやく」
「もうくたくただよ」
「お疲れ様」
お風呂も広く、疲れを癒してから体操服に着替える
共同スペースへと行けばそこには男子のみんながいた
「男子部屋できたー?」
「うん、今くつろぎ中」
「あのね!今話しててね!提案なんだけど、お部屋披露大会しませんか!?」
そう言った三奈ちゃんの提案は通り、男子の2階の部屋へと向かう
まず最初は緑谷くんのところのようでオールマイトだらけの部屋だった
次に常闇くん、真っ黒な部屋に何やら黒魔術的なものがたくさんおいてある
そして青山くん、ミラーボールやらなんやら輝くものが散りばめられいる部屋に常闇くんとの差を感じてしまった
「楽しくなってきたね!」
「うん、あと2階の人は…」
一番端、残っていたそこは峰田くんらしい
「入れよ…すげえの見せてやんよ」
はあはあ言ってる峰田くんを見たみんなは何も見てないかのようにゾロゾロと3階へ移動する
尾白くんの部屋はザ・普通の部屋
飯田くんの部屋は難しそうな本とメガネが並んでいた
上鳴くんの部屋は見るからにチャラそうで、口田くんの部屋にはなんとウサギがいる
わいわいと盛り上がっていると、男子メンバーがこちらを見て不満げだ
「男子だけが言われっ放しってのはぁ変だよなァ?大会っつったよな?
なら当然女子の部屋も見て決めるべきじゃねえのか?誰がクラス一のインテリアセンスか全員で決めるべきなんじゃねえのかあ!?」
そう告げた峰田くんに呆れていると、三奈ちゃんが賛同してしまったのでギョッとする
こうして第1回A組ベストセンス決定戦が幕を開けた
prev / next