ヒロアカaqua


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海色家


ソファに腰掛ける私
その両サイドには両親

「この度は誠に申し訳ございませんでした」

机を挟んでソファに腰掛けるは相澤先生とオールマイトは頭を下げた
オールマイトの姿は本当の姿で、怪我も酷く右腕は骨折しているのかギプスが巻かれている

「頭をあげてください」

そう告げたお母さん
しかしお父さんは違った

「一歩間違えば雫は死んでいました」

その言葉を先生達も真剣に耳を傾ける

数日前に送られてきたプリントによると雄英は全寮制になるとのこと
その確認と先日の一件の謝罪に訪ねて来たらしい

「そこについてどうお考えですか?」

事前に全寮制に関する話し合いは済んでいる
答えはNO

「あの瞬間、雫さんはヴィランの元の目的には含まれていませんでした
しかし私が戦闘許可を出した、そのせいで彼女の個性は目をつけられ攫われてしまいました
全ては私の責任です、謝って許されることではないと重々承知しております」

相澤先生は顔を上げないままそう告げる

「…雫は、私の大切な娘なんです」

「アナタ…」

隣にいたお父さんの肩が震える
その目に涙が滲んでいるのでグッと拳を握った

「ごめんなさい…」

「雫」

「私が、弱いせいで…迷惑をかけてごめんなさい」

お父さんとお母さんにこんな顔をさせたかったわけじゃない
あの時、会見で私を信じてくれた相澤先生に頭を下げて欲しくなんてない
私の窮地を救ってくれたオールマイトにこれ以上迷惑かけたくなんてない

「お父さん、私ねずっと自分は強いんだって何でもできるってそう思ってた
勉強も運動も個性だって、人より努力して出来ることはいっぱいあるって…けど違ったの」

思い出すのはこの数日間の自分の失態の数々
爆豪くんを守りきれなかったこと
友達をあんな危険な目に合わせてしまったこと
オールマイトを終わらせてしまったこと

「私は…ほんとは何もできなくて…ヴィランを前にして怖がって…爆豪くんみたく立ち向かえなかった」

「それは、仕方が」

「仕方なくない!私はヒーローを目指してる!!」

その言葉にお父さんの目が見開かれる

「もっと強くなりたい、守ってもらった何百倍も誰かを助けたい
私は今心の底からヒーローになりたいの…今までは両親のため、大切な人のためってそう思ってた…けど違う
私はオールマイトのような、そんなヒーローになりたい」

ヒーロー殺しの一件で自分がみんなを守りたいという気持ちが偽善と思い知った
大切な人たちだけでいいと、そう思ってきた
けれどそれすら違っていて、つくづく自分のことがわかってないんだと思い知る

オールマイトの方を向いて頭を下げた

「私のせいで…未来を奪ってごめんなさい」

「海色少女」

涙を堪え顔を上げる

「…今度は私がアナタみたいなヒーローになります
多くの人を助け、守り、笑顔にできるようなそんなヒーローに」

その言葉にオールマイトは頷く

「お父さん、お願いします
私はまだ雄英でたくさん学びたいことがある…ううん、学ばなきゃいけないことがある
どうか…寮に入って学ぶことを許してください」

立ち上がってお父さんに向かって下げた頭
今までこんなにわがままを言ったことがないため両親は驚いたように顔を見合わせる
そしてため息を吐いた

「相澤先生、雫をちゃんと見てやってくれてありがとうございます
雫がこんなに感情を剥き出しにするなんて…良い教育をされてるんですね
それにオールマイト、雫の父親として…1人の市民として娘を、平和を守ってくれてありがとうございます

お2人とも、この場で雫を引き留めれば良かった…
そんな風に思わせないよう彼女を正しいヒーローに導いてやってください」

「お父さん…っ」

「どうか娘をよろしくお願いします」

頭を下げたお父さん、そしてお母さん
我慢していた涙がこぼれ出した

まだこの後も回るところがあるからと家を後にする2人
玄関のところで私を振り返ったオールマイトは頭に手を乗せた

「海色少女、前にも言ったが君は立派なヒーローだ
決して私を終わらせてしまったなんて思わないでほしい」

「…はい」

「また学校でな」

2人を見送ってからしばらく考え込む

あの時、折れかけた心
けれど爆豪くんは折れてなかった
オールマイトを超えると言う彼は私よりずっと先を歩いている

それにオールマイトを彷彿とさせる緑谷くんもあの大怪我を負っているのに助けにくるなんて根っからのヒーローだ
唄ちゃんも焦凍くんも、切島くんも飯田くんも百ちゃんも…

「…頑張ろう」

私はここからだ、ここから必ず強くなる
そしてオールマイトのようなヒーローになってみせる










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