ヒロアカaqua


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8月上旬

照りつける日差しの下走るバスが2台

「1時間後に1回止まる、その後はしばらく…」

振り向いた相澤先生の目にはわいわいはしゃぐA組一同
先生の顔が引きつる

「雫ちゃんポッキーいる?」

「え、いる!」

甘いものが大好きなので唄ちゃんにそう返すと近くに座ってた緑谷くんもよかったらとグミをくれた
それを皮切りにクラス中のみんながあれよこれよとお菓子をくれる

「美味しい、幸せー!」

お菓子をもぐもぐと頬張りつつ水分補給も欠かさない
夏は例年水分の減りが著しい、すぐにバテてしまうのでこまめに水を飲むようにしている



そして1時間後
全員下ろされたそこは山の中腹にある高台のような場所

「つか何ここ、パーキングじゃなくね?」

「あれ?B組は?」

トイレも自販機もないその場所に不思議に思い持っていたお茶を飲む
確かにB組の姿もないので首を傾げた

「何に目的もなくでは意味が薄いからな」

「よーうイレイザー!!」

「ご無沙汰してます」

ぺこりと頭を下げた相澤先生

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

ビシッとポーズを決めた2人
猫をモチーフとしたそのコスチューム
傍らには特徴的な帽子の男の子もいる

「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」

「連盟事務所を構える4人1チームのヒーロー集団!
山岳救助等を得意とするベテランチームだよ!キャリアは今年でもう12年にもなる!」

「心は18!!」

緑谷くんがいつもの早口で説明したけれど見事に制されてた
女性に年齢のことは言わない方がいいと教えた方が良いかもしれない

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

「「「遠っ!!」」」

マンダレイが指さしたのは遥か先の場所
そのことに驚く一同が今までの経験からざわつく

「え…?じゃあ何でこんな半端なとこに…」

「いやいや…」

「バス…戻ろうか…な?早く…」

雄英に入ってからこういうことばかりなので私も持っていたペットボトルのお茶を飲み干して先生に預けた

「(しばらくゴミ箱なさそうだし)」

それにこんなこともあろうかと一応小型の水筒はポケットに忍ばせている

「今はAM9:30、早ければぁ…12時前後かしらん」

「ダメだ…おい…」

「戻ろう!」

「バスに戻れ!早く!!」

阿鼻叫喚
先ほどまでの楽しい合宿気分はどこへやら
逃げ惑うA組の面々にピクシーボブの個性が発動した

「12時半までに辿りつけなかったキティはお昼抜きね」

「わるいね諸君、合宿はもう始まってる」

私たちを飲み込む砂粒
それは高台から生徒のみを押し出し眼下に広がる森へと叩き落とした

「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!
この…魔獣の森を抜けて!!」

着地した私たちは暗く生い茂った森を見渡しため息をつく

「魔獣の森…!?」

「なんだそのドラクエめいた名称は」

「雄英こういうの多すぎだろ」

「文句言ってもしゃあねえよ、行くっきゃねえ」

と、そこで木の影から現れたクリーチャー
ゾンビ映画に出てきそうなそれに唄ちゃんが「ヒッ!」と声を上げた
どうやらホラー系はダメみたい

「「「マジュウだー!!!!?」」」

「"静まりなさい獣よ下がるのです"」

口田くんが個性で鎮めようとするけれど効かない

「ダメ!あれは土!」

生き物に必要な水分が全く感じられない
叫びながら飛び出した私と同時に飛び出したのは緑谷くん、爆豪くん、焦凍くん、飯田くん、唄ちゃん

「(やるしかない!)」









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