ヒロアカaqua


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『I・アイランド管理システムよりお知らせします
警備システムによりI・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しております
I・アイランドは現時刻をもって厳重警戒モードへ移行します』

その警報音とアナウンスに驚く
タワーの外壁部分の窓は全てシャッターが下され、封鎖されてしまった

「携帯が圏外だ、情報関係は全て遮断されちまったらしい」

「エレベーターも反応ないよ」

「爆発物が設置されただけで警備システムが厳戒モードになるなんて…」

不安そうなメリッサさんに唄ちゃんと顔を見合わせる
先ほどまではパーティ気分だったけれど今は緊張感すら流れている
ヒーロー殺しと相対した時以上のものはないけどそれに近い何か嫌な感じだ

「飯田くん、パーティ会場に行こう」

「何故だい?」

「会場にはオールマイトが来てるんだ」

緑谷くんのその言葉に一同がホッとする
平和の象徴、No.1ヒーローであるオールマイトが来ているなら何も怖いものはない

「メリッサさん、どうにかパーティ会場まで行けませんか?」

「非常階段を使えばパーティ会場の近くにいけるとおもうけど」

「案内お願いします」

その後一同で付近まで行ったものの、何やら異変を感じて索敵が出来る響香ちゃんと緑谷くんが様子を見に行った
帰ってきた2人から聞いた話はこうだ

"ヴィランがタワーを占拠、警備システムを掌握
この島の人々が全員人質にとられた、ヒーロー達も全員囚われている
危険だ、すぐにここから逃げなさい"

そうオールマイトは言ったとのこと
肝心の彼も拘束され動けない状況らしい
その言葉に絶望が走る

「俺は雄英校教師であるオールマイトの言葉に従いここから脱出することを提案する」

「飯田さんの意見に賛同しますわ、私たちはまだ学生
ヒーロー免許もないのにヴィランと戦うわけには…」

飯田くんと百ちゃんの意見は尤もだろう
私も最善はそれだと思っている、けれど最善じゃだめだ

「なら脱出して外にいるヒーローに」

「脱出は困難だと思う、ここはヴィラン犯罪者を収容するタルタロスと同じ防塞設計で建てられているから」

「じゃあ助けがくるまで大人しく待つしか」

そう告げた上鳴くん
しばらく経ってから唄ちゃんが顔を上げた

「…私、助けに行きたい」

ぽつりと呟いた唄ちゃんにギョッとする一同
峰田くんの抗議の声も上がるが、焦凍くんは「俺らはヒーローを目指してる」と唄ちゃんの意見に賛同した

「ですから、私たちはまだヒーロー活動を」

「だからって、何もしないでいいのか?」

「そ、それは…」

百ちゃんと飯田くんが考え込む
委員長としての判断もヒーローとしての判断も正しい
私の答えは助ける一択で決まっているのでみんながどうするのか様子を見守る

「助けに行きたい」

緑谷くんの言葉に唄ちゃんは嬉しそうな表情を見せる
やっぱり幼馴染、考えることは一緒らしい

「ヴィランと戦う気か!?USJで懲りてねーのかよ緑谷!!」

「違うよ峰田くん、僕は考えてるんだ…ヴィランと戦わずにオールマイトを、みんなを助ける方法を!」

そう告げた緑谷くんに上鳴くんが眉を下げる

「気持ちはわかるけど、そんな都合のいいこと」

「それでも探したいんだ!今の僕たちに出来る最善の方法を探してみんなを助けに行きたい!」

緑谷くんは不思議な子だ
諦めが悪くてしぶとくて、誰よりも真っ直ぐで、ヒーローの素質を兼揃えている
その思いはメリッサさんに届いたらしい

「I・アイランドの警備システムはこのタワーの最上階にあるわ
ヴィランがシステムを掌握しているなら、認証プロテクトやパスワードは解除されているはず
私たちにもシステムの再変更が出来る、ヴィランの監視を逃れ最上階まで行くことができればみんなを助けられるかもしれない!」

今この場でできるヒーローとしての最善策
そのことに希望が差し込む

「監視を逃れるってどうやって?」

「現時点で私たちに実害はないわ、ヴィランたちは警備システムの扱いに慣れてないと思う」

「戦いを回避してシステムを元に戻すか…なるほど」

「うん、できると思う」

私の言葉に唄ちゃんは大きく頷いた
背中の羽がぴょこぴょこと動いているのできっと嬉しいんだろう

「しかし最上階にはヴィランが待ち構えてますわ」

「戦う必要はないんだよ
システムを元に戻せば人質やオールマイトたちが解放される」

「そうなれば状況は一気に逆転するはず!」

唄ちゃんと緑谷くんの思いにお茶子ちゃんが立ち上がった

「デクくん!唄ちゃん!行こう!!
私たちにできることがあるのに何もしないでいるのは嫌だ
そんなのヒーローになるならない以前の問題だと思う!」

「うん!」

「困っている人たちを助けよう、人として当たり前のことをしよう!」

「「おー!」」

お茶子ちゃんと唄ちゃんがそう言ったのを聞いた焦凍くんが一歩前に出る
その隣で私も挙手した

「緑谷、俺も行くぜ」

「私も!」

「轟くん!」

「雫ちゃん!」

「これ以上無理だと判断したら引き返す、その条件が飲めるなら俺も行こう」

飯田くんの賛同に他の面々も賛同していく

「メリッサさんはここで待っていてください」

「私も行くわ」

「でも…メリッサさんには個性が」

「この中に警備システムの設定変更ができる人いる?」

そう問われて一同の目が百ちゃん、飯田くん、私に向けられる
残念ながらそれはできないので首を横に振った

「私はアカデミーの学生、役に立てると思う!
最上階に行くまでは足手まといにしかならないけど、私にもみんなを守らせて!お願い!」

ヒーローでなくても誰かを守りたいという気持ちがあれば立派なヒーローだ
それを知っている雄英生だからこそメリッサさんのこの気持ちは無駄にはできない

「わかりました、行きましょう!みんなを助けに!」

緑谷くんのその言葉にメリッサさんは力強く頷いた










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